「餃子の王将」の社長が射殺された事件で逮捕された特定危険指定暴力団・工藤会系の幹部の男。過去に男を逮捕したこともある暴力団捜査一筋の元捜査員が、その素顔について語った。
雑談には応じるが…事件に関しては黙秘
2013年、「王将フードサービス」の当時の社長・大東隆行さん(当時72)が京都市内の本社で銃撃された事件で、ほかの事件で服役していた特定危険指定暴力団・工藤会石田組幹部の田中幸雄容疑者(56)が逮捕された。田中容疑者は、大東さんに向けて拳銃4発を発射し、殺害した疑いが持たれている。
犯行時間帯には、盗まれたバイクが現場近くを走行していて、九州ナンバーの車がバイクに並走していたことなどから、警察は、事件に複数の人物が関与しているとみている。
また、「王将フードサービス」と約260億円にのぼる「不適切な取引」があった福岡県内の企業の経営者だった男性に任意で事情聴取していて、警察は、この男性との「不適切な取引」が事件と関連していないか、慎重に捜査をしている状況だ。
一方、逮捕された田中容疑者は、雑談には応じるものの、事件に関することについては黙秘を続けているという。
暴力団に身を投じ…パチンコ店にトラックで突入
田中容疑者とは、一体どんな人物なのか―。
テレビ西日本の取材によると、田中容疑者は大学を中退。その後、サラリーマンだった時代もあったという。その田中容疑者が暴力団に身を投じたのは、30代のはじめだった。
田中容疑者を逮捕したことのある元捜査員のA氏は、「最初の犯歴は、俺が捕まえた事件やろうと思う。パチンコ屋に突っ込んだ事件、トラックで」と語る。
暴力団の世界に足を踏み入れて数年後の2003年、田中容疑者は、福岡市東区のパチンコ店にトラックで6回も突っ込んだとして逮捕された。その時の取り調べを近くで見ていた元捜査員のA氏は、田中容疑者の印象について、次のように話した。
元捜査員A氏（テレピック取材）：
割とハキハキした男で、印象はいい。自分でヤクザになった以上は、これはヤクザの通す道なんだというのを自分なりに持っとるような感じだった
暴力団捜査一筋の元捜査員にも強い印象を残した田中容疑者。これ以後、銃を使用した事件に関与していく。
【大林組襲撃事件】（2008年1月17日）
記者：
白昼オフィス街に響いた銃声。現場は一時騒然となりました
パチンコ店襲撃の5年後の2008年、田中容疑者は、福岡市博多区の路上で大手ゼネコン「大林組」の社員が乗った車に向かって拳銃を発砲し、バンパーを破壊するなどの事件を起こしていた。
また、田中容疑者には、こんな一面もあったという。
元捜査員A氏（テレピック取材）：
「お前、何で組織の中で重用されとる？」とかと聞いたら、「私はパソコンとかコンピューターが得意なんですよ」と。「いろんなこと、組織的な書類も全部、私が作ってる」と（言っていた）
事務処理もこなし、かつ組長の信頼も厚かったとされる田中容疑者から供述を得ることは、一筋縄ではいかないのではと元捜査員A氏は推測する。
ーー今回の事件で上層部の関与などはいかが？
元捜査員A氏（テレピック取材）：
それは、あいつの性格からしたら（捜査は）難しくなるやろうね
元捜査員A氏（テレピック取材）：
田中にすれば「そこが分からんで俺の口からだけ言わせようったって、それは無理よ」ということやないかね
工藤会の組織的な関与は…同時多発的な犯行も？
工藤会が関わったとされる様々な事件を知る元捜査員A氏は、「王将社長射殺事件」と相まって想起される事件があると話した。
元捜査員A氏（テレピック取材）：
（北九州市）若松でも大きな事件があったよね。次の日かな
【漁協組合長殺害事件】（2013年12月20日）
記者：
けさ、北九州若松区で70歳の男性が拳銃で撃たれて倒れているのが見つかり、その後、死亡しました
実は、王将の社長射殺事件の翌日、北九州市若松区で漁協の組合長・上野忠義さん(当時70)が何者かに胸などを拳銃で撃たれて死亡する事件が発生している。
しかし、いまだ事件解決には至っていない。港湾事業を巡る利権を狙った工藤会による犯行の可能性もあるとみられ、捜査が続いている。
元捜査員A氏（テレピック取材）：
2003年7月のパチンコ屋の時も、福岡市と大阪で、同時犯行で発砲事件起こすような組織やから。同時多発的に2カ所でそういう事件をするのは、工藤会としては考えられる
複数人が関わったと警察がみている王将の社長銃撃事件で、工藤会の組織的な関与はあったのか？ 京都・福岡の合同捜査本部の捜査が続いている。
（テレビ西日本）
