400年以上にわたり、福井・小浜市で受け継がれる伝統産業「若狭塗」。この奥深さに魅せられ、次の世代に伝えようと、異色の経歴を経て老舗問屋を引き継いだ男性がいる。
過去に陸上選手として国体で日本一に輝き、オリンピックも目指していたこの男性。伝統産業とスポーツで地域の発展を目指したいと意気込む。

幼少期から箸や産業に触れ…コミュニティスペースも手がける老舗若手社長

創業100年を迎えた箸の問屋「箸蔵マツ勘」。

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4代目として店を切り盛りするのは、松本啓典さんだ。2021年に父親から経営を引き継いだ、36歳の若手社長だ。

「子どもながらに箸や産業に対する憧れを持っていた」と振り返る松本さん。25歳の時、家業を継ぐためにこの問屋で仕事を始め、これまでに若狭塗箸の流通や、商品の企画開発などを手掛けてきた。

そして2021年、若狭塗箸のショップとカフェを備えたコミュニティースペース「GOSHOEN(ごしょうえん)」を開いた。

江戸時代、日本海の海運を担った「北前船」の船主が、小浜藩主をもてなすための迎賓館だった建物を改修。現代に蘇らせた。

若狭塗のミュージアムも計画 「子どもたちがワクワクする仕掛けに」

この日、松本さんは若狭塗の職人を尋ねた。依頼している新商品について、打ち合わせするためだ。

「霜を表現するときに卵の殻を使っていたという記録が残っていて、伝統的な柄の面白さを、新しい商品を通じて伝えることができるのではないか」と熱く提案した。

松本さんの会社には、祖父が集めた江戸時代の貴重な若狭塗の調度品が残っている。

若狭塗箸問屋4代目 松本啓典 社長:
古い若狭塗の調度品を小さい時から見ていた。そこで愛着が養われたというのがある。
若狭塗は完成まで1年ほどかかる。伝承していくことと、職人さんが継続して仕事ができる環境をつくっていくこと。この2つの要素を取り入れた商品開発をやっていくべき

また、松本さんは、江戸時代に建てられた蔵を、若狭塗の歴史を伝えるミュージアムに整備する作業も進めている。ここには祖父の調度品も展示する計画で、2022年12月のオープンを目指す。
主なターゲットは、子どもだ。「次の未来をつくりあげる子どもたちに来てほしい。子どもたちがワクワクする仕掛けを展開したい」と夢を語った。

800m国体優勝、自衛隊でオリンピック目指し…実は異色の経歴

仕事に打ち込む松本さんだが、もう一つ力を入れる活動がある。それは週1回、地元で開いているスポーツ教室だ。

松本さんは高校生の時、陸上部に所属。2004年に出場した埼玉国体では、800メートル走で日本一に輝いた。

大学では陸上部の主将を務め、卒業後は自衛隊に入隊。自衛隊体育学校でオリンピックを目指していたという、異色の経歴を持つ。

スポーツ教室には妻と2人の子どもも参加し、家族のリフレッシュの時間にもなっているという。

伝統工芸とスポーツを通して、地域とのつながりを大切に活動を続ける松本さん。今後の目標を聞いた。

若狭塗箸問屋4代目 松本啓典 社長:
会社や運営するコミュニティースペースがきっかけとなり、20年、30年後に若狭塗の産地がもっと質の高い場所になっている可能性がある。
次の世代を担う子どもたちにどれだけ関わり、どういう価値を残していくかが非常に大切だと思う

(福井テレビ)