「オーライ、オーライ、オーライ オーライ」福岡県内の警察署に到着した1台の捜査車両。
中から運び出されたのは70代の高齢男性の遺体だ。 

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捜査一課検視官室・関竜也警部:
いまから検視を始めます

捜査一課検視官室・中島亮平警部補:
ご遺体に合掌

福岡県警捜査一課の検視官、関竜也警部。亡くなった人の声なき声を聞く。声なき声の代弁者。それが彼の仕事だ。 

捜査一課検視官室・関竜也警部:
身長。体格推定、普通。中ですね。時計は正時でいいんかな 

捜査一課検視官室・中島亮平警部補:
時計は現在時刻、10時54分です

事件を見逃さない 遺体の状況から事件性を見抜く検視官に密着

検視官は遺体の状況から事件性を判断。異変に気づかなければ「病死」などとして扱われ、事件が明るみになることはない

捜査一課検視官室・関竜也警部:
黒褐色に変色した皮膚が残る。瞳孔がなくなっていますね。左目ですね。右は眼球消失です。舌先は…舌はもう消失ですね

外傷、薬物痕、そして、首を絞めた際にできる圧迫痕。事件性を見極めるうえで重要なポイントとなる。 

強い腐敗臭が充満するなか、検視は1時間にも及んだ。 

捜査第一課検視官室・関竜也警部:
死後変化以外は、なかったですね。明らか生前の損傷はないので、何か事件に巻き込まれたような状況ではないと判断しました。DNA鑑定、親族間に矛盾がないと結果が出れば、遺族に返す流れになります

関警部が普段待機しているのは福岡県警本部捜査一課検視官室。今回、特別に密着取材が許された。 

検視官は、警部以上の階級で、警察大学校で法医学などの専科を修了。そして刑事として10年以上の経験がある警察官に資格が与えられる。関警部は配属されて5年になる。 

捜査第一課検視官室・関竜也警部:
事案が入れば、そっちに行きますけど、(普段は)参考書を見たりとか、勉強ですね。勉強しておかないと、どんな死因が考えられるのかなって、なかなか頭に浮かんでこないので

(Q.5年されても勉強?)

捜査第一課検視官室・関竜也警部:
そうですね。わからないことばかりです

そんな矢先、電話が鳴った。 

捜査第一課検視官室・中島亮平警部捕: 
はい、はい。異臭あり。居間で、どんな姿勢か入っていますか
 

動きが慌ただしくなる。 

捜査第一課検視官室・中島亮平警部補: 
区長さんが、しばらく姿を見ていないということで、中に入ったら居間で亡くなっていた状況です。担当が○○係長、強行班です

捜査第一課検視官室・関竜也警部:
了解。出ます。生前の損傷がどこまで確認できるかということですね
 

2人ペアになり遺体が出た場所に検視に向かう。変死体の臨場は、多いときで1日10件あるという。
現場ですぐ検視が行えるように聞き取りも欠かせない。移動中の1時間は、ほとんどが現場警察官とのやりとりだ。

署に運ばれた遺体は、1人暮らしの高齢女性だった。 

亡くなっても気づかれない…新型コロナによる外出自粛の影響

捜査第一課検視官室・関竜也警部:
高齢の女性で、近所の方が最近見ないということで、役所に通報されて、役所の職員の方が訪ねたら応答がなくて、玄関の鍵もかかっていると。ゴミが、だいぶ堆積しているみたいです。最初の通報から(遺体を)見つけるのに時間がかかったみたいです。やっぱりどうしても独居の方が、発見が遅いことが多いので

福岡県警によると、2021年に発見された65歳以上の独居高齢者の検視数は1831件で、記録が残る2006年以降、過去最多。新型コロナウイルスの影響で外出自粛が続き、亡くなっても気づかれにくい状況が生じている。 

捜査第一課検視官室・関竜也警部:
検視を始めます 

捜査第一課検視官室・中島亮平警部補:
ご遺体に合掌 

捜査第一課検視官室・関竜也警部: 
最後どんな風に亡くなったのだろうか、亡くなったんだろうなって考えながらご遺体を見たり、現場を見たり 

検視官にゆっくり休む暇はない。時間の合間を縫って、コンビニなどで昼食を買って済ませることもしばしば。 
夕方、再び現場に向かう関警部。 

捜査第一課検視官室・関竜也警部:
午後6時ぐらい、5件立て続けに通報が入ったので、病院に向かいます 
 

2021年の1年間で、福岡県警が検視した遺体は5730。そのうち事件の疑いがあると判断し、司法解剖を実施したのは1割を切る。その1割を見逃さないため検視官は遺体と向き合う。
最後の検視は、午後10時半を回っていた。 

捜査第一課検視官室・関竜也警部: 
夜になると眠くなったり頭がぼおっとしたり、判断が鈍ることもあるけど鈍ってはいけない。私が判断ミスをすれば、殺人事件を闇に葬るようになるので、その責任はありますね 

遺体は中年の男性。自宅の浴槽で発見された。 

捜査第一課検視官室・関竜也警部:
入浴習慣もわからないですよね。それで病変が来たのか、意識消失したのか。引き上げるとき、口の中から血清の液が出たとかはなかった。尿検査薬物は陰性でした
 

一つ一つ情報を集める関検視官。なぜ男性は亡くなったのか。男性の最後は何だったのか。事件を見逃さない。死因の見極めのため医師も駆けつけた。 

医師:
明らかな外傷はないですよね? 

捜査第一課検視官室・関竜也警部:
背面にしたとき赤褐色の液が出てたんですけど、腐敗の液と鑑別が難しいかなと。溺死とする根拠はないですね
 

まもなく午前0時。 

捜査第一課検視官室・関竜也警部:
病死なのか溺死なのか、判断するためにいろいろ考えた。結果的に病死の方ですね 

事件だけではなく、ある程度の死因を特定するまでが検視だ。 
そして午前1時。 

捜査第一課検視官室・関竜也警部:
これからは取り扱った事案の書類を警察署が作って一課の方に送ってくれるので、その内容をチェックする仕事ですね 
 

印象に残る太宰府主婦暴行死事件

これまで2,000体を検視した関警部。 

捜査第一課検視官室・関竜也警部:
印象に残っている遺体は…事件ものを入れれば、太宰府事件ですよね 

2019年、福岡・太宰府市で起きた主婦暴行死事件。遺体で発見された主婦の検視をしたのが関警部だった。当初、容疑者らは事件性を否定していた。 

捜査第一課検視官室・関竜也警部:
んー?って感じだった。明らかにもう下半身に損傷が集中していて、もう事件だなとすぐ思った。見逃していたら、また被害も拡大していたかもしれない。被害者も亡くなって、ご家族の方も寂しいでしょうけど 
 

午前6時。 

捜査第一課検視官室・関竜也警部:
夜以降、取り扱いはなかった。

(Q.ここで寝られた?)

捜査第一課検視官室・関竜也警部:
長椅子で寝たり、会議室で寝たり 
 

午前9時半過ぎ、ようやく長い一日が終わった。 

捜査第一課検視官室・関竜也警部:
ドラマでたまに検視官見るけど、あんなかっこいい感じではないですね、実際は。電車に乗ったりしたら、あれでよかったのかなって反省はしていると思う。その繰り返し 

事件を見逃さない。 
きょうも検視官は遺体と向き合い続ける。 

(テレビ西日本)