日本では、生涯を通して5人に1人がこころの病気にかかるといわれている。「こころ」のエキスパートに、特に生きづらさを感じやすいという「発達障害」の子への接し方や、最新の研究について聞いた。

そもそも「発達障害」とは何か

教えてくれたのは、金沢大学附属病院・神経科精神科で2019年から教授を務める菊知充(きくち・みつる)さん。菊知さんは、多数の論文や著書を持つ「子供のこころ」の専門家だ。

「こころ」のエキスパート菊知教授
「こころ」のエキスパート菊知教授
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金沢大学附属病院・菊知充 教授:
最近「発達障害」という言葉が、ちまたでもよく聞かれるようになりました。
「発達障害」とは、生まれつきの脳の働きの違いによって、発達の進み方に「極端に早いところと遅いところ」があるため、特別得意なことがある一方、苦手なことや上手くできないことも多く、日常生活での困りごとが増える状態のことです

「発達障害」の代表的なものとして、自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)、学習障害(LD)などがある。

――日常生活での「困りごと」とは、具体的にはどんなものでしょうか?
金沢大学附属病院・菊知充 教授:
例えば、「発達障害」の子供たちには、相手の気持ちが分からない、落ち着きがない、読み書きが苦手、などの特徴が見られます。そのため、友達から仲間外れにされたり、勉強ができないことを努力不足と叱られたりします

発達障害の子供たちは、「こうした経験を積み重ねることで、“自分が変”だと感じて自信を失い、生きづらさを感じてしまう」と、菊知教授は説明する。

金沢大学附属病院・菊知充 教授:
日本では生涯を通して、5人に1人がこころの病気にかかるといわれていますが、発達障害の子供たちが思春期や成人になってから、うつや統合失調症など、こころの病気へ移行してしまうことが多いのです

世界的研究者が実践する「療育」とは

「発達障害」について解説する菊知教授(右)
「発達障害」について解説する菊知教授(右)

――では、どんな対処をしていけばよいのでしょうか?
金沢大学附属病院・菊知充 教授:

はい、幼児期から子供たちの特性を理解して、対人スキルの向上や社会への適応力を伸ばす「療育」が効果的です。私たち金沢大学には「子どものこころの発達研究センター」という施設があり、長年発達障害の子供達への「療育」を行っています

自閉スペクトラム症のかなちゃん(3)と楽しく遊んでいるのは、金沢大学学校教育系の吉村優子(よしむら・ゆうこ)准教授だ。小児発達学の世界的研究者でもある。

吉村優子(よしむら・ゆうこ)准教授:
よいしょー…ははは、崩れたね…

吉村優子准教授:
ここでは「一緒に遊ぶ」ということを、すごく大事にしています。一緒に遊ぶことで、子供たちが相手に興味を持ったり、やり取りを続けようって思って、言葉を使ったり、ジェスチャーを使ったり、いろいろ発信が増えていく。
子供が主体的に「自分が遊びたい」とか「この人と関わりたい」と思える環境の中で、発達を促すというのが、やり取りを通した「療育」の一番の目的です

「子どものこころの発達研究センター」では、このように早い段階からの「療育」で、子供たちが円滑な社会生活を送るためにスキルを習得できるよう、研究を行っている。

――子どもの発達障害は、どうやって見つけるのでしょうか?
金沢大学附属病院・菊知充 教授:

現在は3歳児健診で、心や言葉の発達に関するチェックが行われています。
また「子どものこころの発達研究センター」では、「脳磁計」という特殊な機械で子供の脳の活動を計測し、自閉スペクトラム症の早期発見に応用する研究も進んでいます。
発達障害によって生きづらさを抱える子供たちに、少しでも笑顔が増えるよう、今後も努力していきたいと思っています

(石川テレビ)