日本人の2人に1人がなる、とも言われている「顎(がく)関節症」。実はある要因が重なって、いま発症する人が急増しています。
その“要因”とは「コロナ禍のマスク生活」と「長時間のスマホ操作」にあるというのです。

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そもそも顎関節症とは、口を開けた時に「痛みがある」「あまり大きく開けられない」「耳の近くで音が鳴る」といった症状が現れる、顎の疾患。

全国に約1900万人の患者がいるとされ、命に別条はないものの、放置すると、人によっては骨を削る手術を行わなくてはならなくなるケースもあるといいます。

めざまし8が街で取材をすると、実際にテレワークになってから顎関節症を発症し、悩んでいる人もいました。

日本顎関節学会の指導医である宮本日出(みやもと・ひずる)医師によると、コロナ禍前に比べて、顎関節症の患者が急増しているといいます。
急増した大きな要因の1つは、「スマホの長時間利用」。さらにスマホだけではなく、2年半以上続くマスク生活も増加に拍車をかけているといいます。

なぜ、スマートフォンとマスクで、顎関節症が発症するのでしょうか。

スマホ操作で顎への負担が“20倍”?軽い負担がつもりつもって…

宮本医師の病院を訪れた顎関節症の患者は、3年前より2割ほど増えているといいます。中でも、長時間のスマホ使用による“スマホ顎関節症”は、3年前はそのうち1割程度だったのに対し、現在は約5割まで増加しているそうです。
なぜスマートフォンで顎関節症になってしまうのでしょうか?

原因① “スマホ猫背”

スマートフォンを操作しているうちに、自然と“猫背”になってしまい、頭がぐっと前に出て、必然的に人間の頭の骨格、顎の部分が前に突き出された状態になってしまいます。
正常な位置では、顎は後ろに引いていますが、猫背になるとこれが前に出てきてしまい、このずれた状態が長く続くと、負担になっていくのです。

原因② “無意識のかみしめ癖”

もうひとつの原因は、“無意識のかみしめ癖”です。
正常な状態の人間は、上の歯と下の歯が大体2mm程度の隙間があります。口は閉じているのだけれど、歯は接触していないのが正常で、上下の歯が接触している時間は、1日20分程度が正常だといいます。
しかし、スマホ操作時は長時間下を向いていることが多いため、上下の歯が接触してしまい、口周辺の筋肉が緊張した状態が続き、歯や顎に負担がかかります。

宮本医師は、この状態が長時間続くことへの危険性をこう話します。

日本顎関節学会・宮本日出 医師:
顎の関節の特徴は、短時間で強い負担より、弱い負担でも長時間の方が実はダメージが大きいんです。軽いかみしめの方が、総合的に顎への負担が20倍以上にもなります

コロナ禍で続くマスク生活 顎に影響が?

顎関節症急増のもうひとつの原因と言われている「長期間のマスク生活」。なぜマスクをすると、影響があるのでしょうか?

それは、マスクによる口周りの関節・筋肉への圧迫。これにより無意識的なかみしめ癖がついてしまい、コロナ禍の約2年半に及ぶ長期的な影響が出てきていると言います。

「サッカー通りみなみデンタルオフィス」の橋村威慶院長は、「スマホに加えて蓄積され続けてきたマスクによる負担が、耐えきれなくなったのでは」と指摘します。

顎関節症にならないために、気をつけるべき「マスクの使用方法」に関するポイントは、以下の通りです。

・小さすぎるマスクをつけない
マスクが小さいと、口元の筋肉を圧迫してしまいます。自分の顔のサイズにあったものを使用してください。

・左右のバランスよく、中心に
ゴム紐による、片側への負担が起きてしまうため、顔の中心にマスクを持ってきましょう。

・マスクを顎で動かす行為はNG
マスクがずれた際など、手を使わずに顎で動かしてしまう時がありますが、これは顎関節・筋肉への負担が増えてしまうので、注意が必要です。

患者の傾向にも変化が…

急増している顎関節症ですが、症状を訴える方にも変化があります。
これまでは、自身で顎に異変を感じて来院する傾向にあったのですが、最近は、歯が痛いなど別件で来院した際に、診察して初めて異変に気がつくケースが増えています。

日本顎関節学会・宮本日出医師はこれを「長期におよぶコロナ禍で、表情が乏しくなった人が増え、顔の筋肉や関節を動かす頻度が少なくなってしまった。結果、日常生活で気付きにくくなったのではないか」と指摘します。

顎関節症は治せる?注意すべきポイントと改善策

「顎関節症」を発症したら、どうすれば良いのでしょうか?宮本医師は…

日本顎関節学会・宮本日出 医師:
発症してもすぐに、2週間以内に治療を開始すれば治りが早いんです。ですから、症状が3日以上続いたら、歯科医院を受診してください

症状が出たら、すぐに病院に行くのが大切だと話します。
さらに、「どうすれば対策・改善できるのか」についても解説してくれました。

日本顎関節学会・宮本日出 医師:
スマホを30分目安で使用しましたら、一端置いて、肩甲骨を後ろに寄せて、上を向いて首を伸ばします

スマホを30分使用したら、肩甲骨を後ろに寄せ、上を向いて首を伸ばす
スマホを30分使用したら、肩甲骨を後ろに寄せ、上を向いて首を伸ばす

その後姿勢を直して、“3フィンガー”、指を三本縦にそろえて、口の中に入れます。
これを繰り返して、凝った関節・筋肉をほぐしてください。

誰でもできる「顎関節症」チェック

顎関節症になっているかどうか、簡単にチェックする方法があります。
先ほどの“3フィンガー”、指を三本縦にそろえて、自分の口に入るかどうか試してみてください。
余裕がある方は大丈夫、少し痛みを感じたら危険信号です。

(めざまし8 「わかるまで解説」より8月23日放送)