中道改革連合は小川淳也代表の就任から1カ月を迎え、衆院選での歴史的大敗から党再建への歩みを進めている。

選挙前に立憲民主党と公明党の衆院議員が合流した今回の新党結成に対し、かつて支援団体のトップとして新党合流、そしてその後もたらされた混乱を経験した連合前会長への単独取材を通じて、当時と今回の違い、そして中道改革連合の今後の課題や可能性などについて迫った。

新党結成「聞いた時は落ち込んだ」

「負けに不思議の負けなし。色々な要因が重なった。奇襲戦法にまんまとやられてしまった」

FNNの取材に対し、衆院選での中道改革連合の大敗について、こう語るのは労働組合の中央組織「連合」前会長の神津里季生氏だ。

神津氏は連合会長を2015年10月から3期6年間にわたって務めた。2017年には民進党(旧民主党)が希望の党との合流騒動を経て、立憲民主党と国民民主党への分裂に至る過程も支援組織のトップとして経験している。

連合会長時代の神津氏
連合会長時代の神津氏
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今回の選挙結果について、神津氏は「選挙制度も1つの要因だ」として、次のように続けた。

「中道改革連合と自民党の比例票は1千万対2千万だったが、議席数にすると1対6以上になった。これだけの議席差になってしまったことは大きかった」

そして、新党を結成する動きを聞いた時の心境について尋ねると、当時の複雑な思いを吐露した。

「最初、新党だと聞いた時は、これはちょっとえらいことになってしまったと落ち込んだ。結果は厳しいと思った。いきなり政党合流ということについては、ちょっといかがなものかと思っていた」

その懸念通り、中道改革連合は選挙前の172議席が49議席と3割以下に減らす大敗を喫した。
神津氏はその敗因について、「あまりにも準備不足だった」として次のように指摘した。

「普通だったら、1月の通常国会での国会論戦を経て、統一会派を立憲民主党と公明党、あるいはプラスアルファで組む。その取り組みの上に立って、選挙を共に戦おうというものであれば、世の中の理解度はだいぶ違ったと思う。バタバタッと1週間そこらで選挙になると、どう考えても無理があった。逆にそれにしては比例票でよく1千万集まったと考えるべきだ」

「中道でなくてもかなり厳しい結果に」

一方で、新党を結成せず、立憲民主党のままで戦った方がよかったのではないかとの見方に対し、見解を尋ねると次のような認識を示した。

「選挙協力にとどめておけばここまでの大敗にはなってなかったとは思う。ただ、選挙協力をどこまでしっかりできたかにもよるし、高市首相は勝てる確信があったので解散に踏み切った。中道でなかったとしてもかなり厳しい結果にはなっていたと思う」

中道改革連合が衆院選で苦戦した背景には、連合が同じく支援する国民民主党との競合も指摘される。

連合前会長の神津里季生氏 2025年
連合前会長の神津里季生氏 2025年

連合の地方組織「地方連合会」が候補者一本化を模索してきたにも関わらず、国民民主党は公示日直前に中道改革連合の候補者がいる選挙区に候補者を擁立した。これに関し、神津氏は「間違いなく与党を利した」として不快感を隠さない。

「地方連合会は、与党に漁夫の利を見させないように一生懸命、汗をかいていた。それを無視し、自らの党のエゴだけで候補者を立てるのは言語道断だ」

党再建へ「いかに浸透を図っていくか」

中道改革連合は2月28日、衆院選の総括に向けて落選者から意見を聞く会議を「時間無制限」として開催した。オンライン形式で行われた会議には全国から約170人が参加。小川氏や階猛幹事長ら執行部のほか、新党結成を決めた野田・斉藤両前共同代表も出席した。

衆院選落選者ヒアリング 2月
衆院選落選者ヒアリング 2月

この中では、立憲民主党が最長2年間限定としていた「食料品の消費税率ゼロ」が、中道改革連合の公約では突然「恒久的」となったなどとして、党の意思決定のあり方に疑問を呈す声が相次いだ。

また、野田氏ら旧執行部に対し、公明党出身者が上位に掲載された比例代表の名簿順位をめぐる不満の声も上がった。

衆院選落選者ヒアリングでの野田氏
衆院選落選者ヒアリングでの野田氏

これに対し、神津氏は「恒久的な食料品の消費税率ゼロ」について、「連合の政策とは全く違う」として、「連合の政策をもっとリスペクトしてほしい」と強調した。

一方で、落選者に対して、「候補者自身も追認だったかもしれないが、飲み込んで戦った。1回はそういう話はしてよいが、そればかり言っていても仕方がない」と自重を求めた。

それでは、中道改革連合は今後、党再建に向けてどのような道筋を進むべきか。

神津氏は「中道をやめたということになれば、危機感、理念はいったい何だったということになる」として、次のように強調した。

「いかに浸透を図っていくかを一生懸命やらないといけない。それをやらずにやめれば、二重、三重に有権者に対する冒涜になる」

そして、「当面、衆院選はない」との見方を示した上で、「国会活動を土台にして、もう一度、今の高市政権に対する危機感といったものを世の中にしっかりと見えるようにしていくことが大事だ」と訴えた。

筆者は神津氏が連合会長時代に担当記者を務め、会長退任後も折に触れて取材を重ねてきた。

 
 

1月中旬、立憲・公明両党が新党結成で合意した際、神津氏から一通のメールが寄せられた。この中では、「今回の動きは日本の政治に対する深刻な危機感の帰結として理解した」とする一方、次のような懸念も示されていた。

「最近の世論の動向を懸念するものとして、この新党の価値がしっかりと認識されるのか、心配が尽きないのも正直なところだ。あの騒ぎと外形的に似ている」

“希望の党騒動”との違い言及も「初心に戻れ」

神津氏が言及した「あの騒ぎ」とは何か。それは2017年の“希望の党騒動”を指している。

地域政党「都民ファーストの会」を率いる東京都の小池百合子知事が2017年9月、希望の党を結成した。現在は日本維新の会に所属する前原誠司衆院議員が代表として率いた旧民進党は希望の党への合流を決定した。しかし、小池氏の「リベラル派排除」発言もあり、一部の議員が合流を見送り、立憲民主党が結成された。

「希望の党」結党 2017年9月
「希望の党」結党 2017年9月

神津氏からのメールでは、今回の中道改革連合の結成について、「あの時とは明白に異なる。民進党の大義がぶち壊されたが、今回は共有する大義のもとでの結集だ。排除の論理だったが、今回は包摂だ」と評価。今回の取材で改めてその点を尋ねると、神津氏は次のように語った。

「当時の民進党はこのまま選挙に突っ込むと、ひどいことになるという危機感のもとに、出来たてホヤホヤの希望の党に合流した。しかし、それは政党合流というよりも、民進党の党籍を捨てて入った形だ。結果、何が起きたか。民進党の幻のマニフェストと言われたオール・フォー・オール、あそこから始まっている。私は2017年9月の時点にもう一度、時計を巻き戻し、その初心に戻れと言いたい」

「みんながみんなのために」という意味を持つ「オール・フォー・オール(All for All)」。

社会の分断を解消し、全ての人々が尊厳を持って生きられる社会を目指し、皆で受益と負担を分かち合うという政策理念だ。前原氏のブレーンだった慶應義塾大学教授の井手英策氏が提唱したが、2017年の“希望の党騒動”の中でフェードアウトしていった。

当時、取材した党幹部が「この日本という国を互いに支え合い、誰もが安心して過ごせる社会にしたい」と理想に燃えていた姿を今でも思い出す。

神津氏は「あの時のオール・フォー・オールの考え方をちゃんとやっていれば、世の中のいまだに抱えていて、むしろ矛盾が大きくなっている問題は少なからず解決されたと思う」と悔しさを漏らす。

そして、「幻のマニフェストの内容が持っている意味をもう一度、虚心坦懐に振り返ってみるべきだ」として、次のように続けた。

「社会保障や教育など、貧富の差に関わらず1人1人が生きていく上で、何かの形で必ずお世話になるものは社会がセーフティーネットとして構築し、そのために税金を使っていこうということで税制がある。消費税減税を叫ばないと、増税派というレッテルを貼るようなことを繰り返していると日本という国は立ち直れない。広く薄くみんなで負担するという考え方をもう一度取り戻さないといけない」

中道改革連合の代表就任から1カ月を迎えた13日、小川氏は記者会見で次のように語った。

「ぜひかねてから申し上げてきた将来にあるべき社会像、国家ビジョンをしっかりと議論をして打ち出していく。これまではどちらかというと、やらなければならないことを一生懸命やってきたが、やりたいことをやっていきたい。この1カ月の節目にそういう気持ちでいる」

小川氏の視線の先には何があるのか。

筆者は2007年、旧民主党の担当記者を務めて以降、小川氏に取材を続けてきた。当時から小川氏は日本の少子高齢化に危機意識を持ち、「政治家になったのは日本が抱える構造問題を改革するためだ」と語っていたのを記憶している。

その小川氏は4日、自身のSNSに次のように投稿している。

「日本最大の課題、少子高齢化。これに真正面から向き合う国家ビジョンは、日本で初めてと言っていいと思う。世代間不均衡を正す『社会保障のリフォーム』と、食料・エネルギーの国産化。 世界初の1億人サイズの競争力ある福祉国家へ。その全体像を、党内論議を経て近々必ず示す」

中道改革連合が今後、どのような国家像、社会像を示すのか、その内容に注目したい。
(フジテレビ政治部 野党担当キャップ 木村大久)

木村 大久
木村 大久

フジテレビ政治部(野党担当キャップ・防衛省担当)、元FNN北京支局