2022年8月4日、石川県加賀地方では明け方から激しい雨が降り、住宅だけでも約1500棟が床上・床下浸水するなど被害を受けた。
なぜ、ここまで被害は拡大したのか?実は、この時期特有の気象条件と独特の地形に原因があった。

史上最速で梅雨明けしたはずが…梅雨末期の天気?

気象予報士 村田光広(むらた・みつひろ)さん:
日本列島の東の海上に低気圧があったんですが、この低気圧というのが、もともと「台風」だったんです。日本列島に熱帯の空気を運んできたというのが原因の一つです

解説する気象予報士の村田さん
解説する気象予報士の村田さん
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そう語るのは、気象予報士の村田光広(むらた・みつひろ)さん。4日午前6時の実況天気図で日本の東の海上にあるのが、元は台風6号だった熱帯低気圧。

当時、日本の西側に、この熱帯低気圧が残していった暖かく湿った空気があった。ここに、太平洋高気圧の縁を回り込む形で、別の暖かく湿った空気が入り込んだ。

気象予報士 村田光広さん:
さらに前線の北にあるオホーツク海高気圧から、冷たい空気も流れ込んでいて、大気の状態が非常に不安定に…。それで、梅雨の後半のような天気になったんです

梅雨末期のような気象状況となった結果、白山市河内で24時間に400ミリ近い雨を観測。加賀地方は、これまで経験したことのない豪雨となったのだ。

しかし、この豪雨を事前に予測することはできなかったのか?
検証のため、当日朝の雨雲レーダーの画像に注目した。すると、加賀地方から福井県の嶺南地方にかけ、激しい雨が観測されていた。
しかし、災害リスクの目安となる線状降水帯発生情報が発表されたのは、福井県だけだった。

線状降水帯とは、前線に向かって暖かく湿った空気が流れ込むことで、発達した雨雲や積乱雲が連なる状態だ。発生すると、同じ場所で激しい雨が数時間降り続き、災害のリスクが非常に高くなる。気象台は2022年6月から発生を予測し、発表する取り組みを始めている。
今回のレーダーでは、加賀地方も雨雲が連なり続けているが、線状降水帯発生情報は石川県に発表されなかった。

気象予報士 村田光広さん:
線状降水帯というのは「大雨の範囲が500平方キロメートル」など色んな定義があるので、発表されないこともあります

気象予報士 村田光広さん:
気象台の発表がなくても、「線状降水帯のような形になる」ことは頻繁にあります。そうなれば、大雨への備えは必要です

さらに村田予報士によると、これからの季節も引き続き、大雨への警戒が必要だという。

今回の大雨で石川県は多くの住宅が被害を受けた
今回の大雨で石川県は多くの住宅が被害を受けた

気象予報士 村田光広さん:
「秋雨前線」が停滞するようになるので、夏の後半から秋にかけても集中豪雨が起きやすいんです。2021年もお盆の時期、8月13日から14日に「西日本豪雨」がありました。これも秋雨前線によるものでした。大雨への警戒は、これからの時期も必要なんです

2021年のお盆の時期に西日本豪雨が発生
2021年のお盆の時期に西日本豪雨が発生

一方、地理学を専門とする金沢大学の青木賢人(あおき・たつと)准教授は、今回の浸水被害は予測できたと話す。

浸水被害は予測できた⁉地理学の専門家が解説

今回の豪雨で、石川・小松市を流れる梯川がはん濫、支流に当たる鍋谷川が決壊した。小松市だけでも住宅1000棟以上が床上、床下浸水している。青木准教授によると、原因はこの地域特有の地形にあるという。

取材に答える金沢大学の青木准教授(右)
取材に答える金沢大学の青木准教授(右)

金沢大学 青木賢人准教授:
梯川は「洪水が起きやすい川」だと思います。だからこそ、お住まいの皆さんが「暴れやすい、あふれやすい川の近くに住んでいる」のだという自覚、認識をしっかり持って頂くことが大切です

浸水しやすい小松市特有の地形について解説
浸水しやすい小松市特有の地形について解説

青木准教授は、梯川流域の土地の高低を表した地図を示し、そう語った。赤や黄で表されているのが標高の高い地域で、青は標高の低い地域だ。青は濃くなるほど、低くなる。

土地の高低差を表したい地図。青(低)←赤(高)
土地の高低差を表したい地図。青(低)←赤(高)

金沢大学 青木賢人准教授:
梯川は「河口が狭いのに加えて、河口付近の土地が周辺より高い」んです。河口の手前にある市街地が一番地面が低い。だから、広い範囲から集まってきた水が、なかなか海に出ていけないので、市街地に水がたまってしまう。これが梯川の特徴ですね

河口付近は薄い青や黄色、市街地(小松駅から安宅)が濃い青で低いことが分かる
河口付近は薄い青や黄色、市街地(小松駅から安宅)が濃い青で低いことが分かる

また、被害が大きかった中海地区について、青木准教授は…

金沢大学 青木賢人准教授:
山の中を勢いよく流れてきた川の水が、中海地区の軽海とか埴田辺りで急に流れが緩くなるんです

金沢大学 青木賢人准教授:
山の中を勢いよく流れてきた水が、急に中海地区辺りで流れが遅くなる。例えるなら、高速道路で渋滞するのと一緒で、急に流れが遅くなるので、後ろから来た水が全部そこで詰まっていく。水が大渋滞を起こして、越水を起こしやすいんです

川の勾配が原因で「水が大渋滞し氾濫した」と話す青木准教授
川の勾配が原因で「水が大渋滞し氾濫した」と話す青木准教授

加えて、梯川は中海地区で急に湾曲している。青木准教授によると、こうしたカーブが多い川の特徴などが重なり、被害につながったというのだ。

中海地区で川が急に湾曲している
中海地区で川が急に湾曲している

今回、小松市は市内全域の10万6575人を対象に最高レベルの避難情報「緊急安全確保」を出した。
ところが、避難所を利用したのは、最も多い時間で 1447人だった。市の避難指示は妥当だったのか?

金沢大学 青木賢人准教授:
私は妥当だと考えています。梯川は、いったん堤防が切れてしまうと、低い土地の全てが浸水する恐れがある河川です。今回、堤防がギリギリ切れずに済んだだけで、切れてしまえば大水害になる恐れがあったと思います

小松市内での救助作業
小松市内での救助作業

ただし、避難といっても、避難所へ向かうこと自体が危険な場合は、家の2階へ上がるなど「垂直避難」も有効な方法だ。果たして、どんな基準で避難方法を選べばよいのか。

金沢大学 青木賢人准教授:
それぞれのお住いの場所についてのハザードマップをチェックしてください

ハザードマップの確認を呼び掛ける青木准教授
ハザードマップの確認を呼び掛ける青木准教授

金沢大学 青木賢人准教授:
例えば、浸水想定が「50センチ以下」であれば、多少、水かさが増えても一階で水は収まります。だから、2階がある方は、2階へ避難すれば大丈夫ということになります

金沢大学 青木賢人准教授:
ところが、3メートル~5メートルという浸水想定になっていると、それはもう「2階でもアウト」なんですよね。

浸水想定が3~5mだと2階も浸水する恐れ
浸水想定が3~5mだと2階も浸水する恐れ

金沢大学 青木賢人准教授:
ご自身のお住いのハザードマップを確認頂いて、それに少し余裕を持たせた上で、自分の行動を考えておくこと。事前に備えて頂くことが必要だろうと思っています

被害を受けた小松市内
被害を受けた小松市内

検証で見えたのは「万が一への備え」の大切さだ。今回の豪雨被害を、今後の防災に生かしていきたい。

(石川テレビ)

記事 303 石川テレビ

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