夏休みシーズン真っ只中の海水浴場で、波音や風でスピーカーの音声が聞き取りにくくても津波の危険を知らせるのが「津波フラッグ」。鹿児島市内の海水浴場を取材すると、この存在を知らない海水浴客が多いという現実が浮き彫りになった.

海は楽しいが危険も潜む

2025年7月30日朝、ロシア・カムチャツカ半島付近を震源とする巨大地震が発生。鹿児島県内にも発表された津波注意報が全て解除されたのは、翌31日の午後4時30分だった。

さらに翌日の8月1日。鹿児島市・磯海水浴場は多くの人でにぎわっていた。近くの清水小学校の遠泳大会も行われ、夏休みの海水浴を楽しむ人々の姿が戻ってきた。

鹿児島市・磯海水浴場
鹿児島市・磯海水浴場
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「津波の日に来ようと思っていたが来られなかった。リベンジで来て、楽しめてよかった」と語る海水浴客の表情は晴れやかだ。

ところで津波注意報が発表された7月30日、この海水浴場では監視員による対応が取られていた。監視員によるとこの日の海水浴客は10人程度で、「海に入っている人はいなかったが退避するようにお願いした。スピーカーで放送も流した」と振り返る。

知っていますか?「津波フラッグ」

津波注意報は午前10時の遊泳開始時間より前に発表されたため、スピーカー放送や声かけで対応できた。では、もし遊泳時間中に発表された場合はどうするのか。

「分かりやすく笛を吹きながら旗を振って、危険があることを察知してもらう」と監視員は説明する。

津波フラッグを手に説明する監視員
津波フラッグを手に説明する監視員

その「旗」こそが「津波フラッグ」だ。赤と白の格子模様をした大きな旗で、波音や風で音が聞き取りにくい遊泳中の人や耳が聞こえにくい人たちに、津波の危険を知らせるサインとなる。

気象庁によれば、津波フラッグは全国では284の市区町村、鹿児島県内でも13の市町村で導入されている。鹿児島市では市が管理する3つの海水浴場に2025年から設置されている。

認知度の低さが浮き彫りに

実際、カムチャツカ地震の津波注意報が発表された30日、鹿児島・西之表市の能野海水浴場では津波フラッグが立てられていた。しかし、海水浴客への取材では認知度の低さが明らかになった。

「聞いたことない」「知らなかったです」

「知らないまま地震が来ると命が危ないので周りに知らせたい」

「テレビで見ました。(今回の地震までは)知らなかった」という声が多く聞かれたのだ。

命を守るために知っておきたい

気象庁では、命を守るために津波フラッグが立ったらすぐに海から離れ、高台などに避難するよう呼びかけている。

磯海水浴場の監視員は「危険が迫っているということを分かってもらえれば」と話す。浜辺近くには津波フラッグの役割を知らせる張り紙もされている。

海水浴の楽しさだけでなく、命を守るための知識として「津波フラッグ」の存在を多くの人に知ってもらいたい。赤と白の格子模様の旗を見かけたら、一刻も早く避難すべき危険信号であることを覚えておきたい。

(動画で見る:海水浴中の津波フラッグは避難の合図 鹿児島県内13の市町村で導入

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鹿児島テレビ
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