2022年7月だけで牛5頭が襲われ、4頭が死んだ。牛を襲っているのは、コードネームが付けられた巨大ヒグマ「OSO18」とみられている。
20日間で3度の被害に遭った町で、巨大グマの実態を追った。
放牧中の牛が襲われ…相次ぐクマ被害
7月18日、標茶町茶安別の牧場で乳牛1頭が死んでいるのが見つかった。
死んでいたのは5歳くらいのメスの乳牛。背中には爪痕のような傷が残され、腹部には一目で動物に襲われて死亡したとわかる大きな傷があり、内臓を食べられていた。
被害にあった牧場の経営者:
ちょっと信じられなかったですけど、近隣で被害があったのでついにきたかと。怖いより何より、牛が襲われるのが心配
標茶町の牧場では、放牧中の牛がクマに襲われる被害が相次いでいる。
ちょうど1週間前の7月11日、今回の牧場からわずか3キロの牧場で、1頭が襲われ死んでいるのが見つかった。さらに7月1日には阿歴内の牧場で3頭が襲われ、このうち2頭が死んだ。
いずれの現場でも幅18センチ近い、巨大なヒグマの足跡が見つかっている。
3年間で60頭以上 人前に姿を現さない”慎重さ”
牛を襲ったとみられているのは、推定で体重300キロから350キロ、体長3メートル、前足の横幅が18センチ近い、巨大なのオスのヒグマ。コードネーム「OSO18(オソ ジュウハチ)」と呼ばれるクマとみられている。
OSO18は、2019年に存在が確認されたヒグマで、標茶町周辺の牧場で繰り返し牛を襲っている。OSO18によるとみられる被害は、3年間で牛60頭以上に上っている。
これまでに巨大グマの姿をとらえた画像は1枚だけで、人前に姿を現さないよう、慎重に行動しているとみられている。
ハンターが離れた隙に死骸を持ち去ったか
しかし、ここ数年でOSO18の行動に変化が出てきているという。
猟友会標茶支部のハンター:
これまでは牛を襲った場所には現れなかったが、2021年からは再び現れたり、7月11日の被害では、牛を襲ってから一晩あけて死骸を移動させたりしている
11日に牛が死んだ牧場では、役場の指示で調査などのため現場に置いておいた牛の死骸が、翌日、近くの沢まで移動していた。
猟友会ではこれまで、何度もこのOSO18を駆除しようと試みてきた。
獲物に執着するクマの習性を基に、死んだ牛の周辺でハンターが警戒に当たったが、OSO18がハンターの前に姿を見せることはなかった。
しかし、ハンターが離れたあと、牛の死骸が現場からなくなっていたという。ハンターが離れた隙にOSO18が死骸を持ち去ったとみられている。
猟友会標茶支部のハンター:
OSO18は誰にも目撃されずに行動する「利口なクマ」。行動範囲も広く、捜索しようとしてもなかなか難しい
電気牧柵も気にしない?地面を掘って牧場に侵入
今回、被害にあった牧場は、牛が牧場の外に出ないように電気牧柵を設置していた。牧柵は触れると静電気が流れたような痛みを感じるということで、外から近付いてくる野生動物は触れると逃げてしまうというが、OSO18は違った。
牛の死骸に近い場所の電気牧柵の下には、土を掘り返した跡が残されていた。電気牧柵に触れながらも、ここから牧場内に侵入して牛を襲い、またここから出て行ったとみられている。
これまでにOSO18による人の被害は確認されていないが、標茶町役場では、町民に巨大なクマが相次いで牛を襲っていることに注意を呼び掛ける一方、通常より大きな足跡などの痕跡を見つけた場合、役場に連絡するよう呼びかけている。
役場では今回の現場に、動く物に反応するセンサー付きのカメラを設置し、監視を強化するなどOSO18の駆除に向け対策を進めている。
(北海道文化放送)