新型コロナの影響で、2020年から新卒採用が軒並み中止となった航空業界だが、JALグループは3年ぶりに採用を再開する。
採用試験を目前に控えた福岡市の航空専門学校には、ただならぬ緊張感が漂っていた。
「殻を破りなさい！」入室の段階で厳しい指導
福岡市天神のビル10階。旅客機内の客席が再現されている航空専門学校の教室だ。赤い制服を着て、後ろ髪をお団子にまとめた女性たちが次々と入って来る。
38年続くインターナショナルエアアカデミーは、これまで数多くの客室乗務員やグランドスタッフを輩出してきた実績ある学校だ。
教師：
はい、どうぞお入りください
生徒：
失礼いたします
この日、行われていたのは模擬面接の授業。
教師：
もっと笑顔、もっと自分の持っている表情をまだ出せますよ、まだ出せる。返事、負けているよ。殻を破りなさい！いいですか
入室の段階で教師から厳しい指導が入り、やり直すことに…。それもそのはず、2022年に新卒採用をめぐって大きな動きがあった。それは、大手航空会社の新卒採用再開。
日本航空や全日空など大手航空会社では、新型コロナの影響で2020年から新卒採用が見送りになっていた。一部の独立系の航空会社では新卒採用を行っていたものの、大手の採用中止で募集が激減した状態が2年間続いていたのだ。
そんな中、2022年にJALグループは3年ぶりに新卒採用を再開すると発表。今後の航空需要の回復が見込めることして、2023年度に入社する客室乗務員や総合職などを募集する。採用の担当者は…。
日本航空・採用担当 中山洋彦さん：
念願がかなったというのが、率直な感想ですね。エントリーが始まってからも、たくさんの皆さんに志望、希望を持っていただいて。非常にうれしく思っています
新卒採用再開に期待膨らませ…コロナ禍に入学した生徒たち
この専門学校では、語学力や航空知識、接遇マナーなどを教える。
この2年間、例年通り授業を行い、数少ない新卒採用にあきらめずチャレンジしてきた生徒たちは、採用の本格的な再開に期待を膨らませている。
インターナショナルエアアカデミー・嶋田嘉志子学院長：
さあ、その時が来たと。生徒は最高にモチベーションが高いと思います。私もうれしいです。こちらもモチベーションがさらに上がりますよ
かつて全日空の客室乗務員だった嶋田嘉志子学院長。自身も当時、倍率が高い中で諦めずに就職活動を乗り切っただけに、生徒の立場に理解を示す。
インターナショナルエアアカデミー・嶋田嘉志子学院長：
不合格通知をもらったこともありますし、だからあの子たちの気持ちがわかるんです
この日、模擬面接の授業を受けていたのは、就職活動真っ最中の2年生。2021年、コロナ禍で採用中止となり先が見通せない中、専門学校に入学した生徒たちだ。
面接本番は目前。授業とはいえ、ただならぬ緊張感が漂う。
インターナショナルエアアカデミー・嶋田嘉志子学院長：
では山路さん、最近感動したことは何かありますか？
生徒：
はい。私が最近感動したことは…
生徒が、少し言いよどむと…。
インターナショナルエアアカデミー・嶋田嘉志子学院長：
もうこの間はダメ。シンプルな質問のところで立ち止まっているのは、明らかに準備不足。自分がどこに行きたいのかを見失っているのかも。でしょ、だから先生は言っているの。山路のスピーチはそんなもんじゃない
容赦ない指導。そして次の生徒には…。
インターナショナルエアアカデミー・嶋田嘉志子学院長：
谷内未蘭がやるだけのことをやって、今ここにいますか？まだやれたね。先生もそう思う
「今のご時世に」と言われても 強い思いで夢に向かう
張りつめた雰囲気の中で人一倍、強い思いを持った生徒がいた。
盛山紫咲さん：
私の足をご覧下さい。この桜島大根のような強い脚は、15年間習い続けてきたクラシックバレエで身につけた、強い体力のある証です
個性あふれる自己紹介をした、鹿児島市出身の盛山紫咲さん。実は彼女、2022年の春に地元の短期大学を卒業している。
盛山紫咲さん：
コロナ禍でなかなか航空業界の採用がなく、また採用試験で失敗してしまったので。今年は採用が再開するだろうと、絶対に客室乗務員の内定をつかもうと思って、この学校に入学しました
2021年、新卒採用が少なく内定をつかむことができなかったことから、この学校に入学して再チャレンジ。幼稚園のころから憧れていた客室乗務員になるために、英語に加えて韓国語の勉強も積極的に進めているという。
盛山紫咲さん：
採用試験が始まるので、本当にワクワクした気持ちでいます。やっと面接官に会えるのか、今までの思いが伝えられるのかと思ったら、ワクワクでいっぱいです
徐々に始まっている大手航空会社の採用試験。コロナ禍を耐え抜いた生徒たちは、強い思いを持って面接に挑む。
池野愛菜さん：
「今のご時世に何で目指すのか」とか、母からも「何でわざわざ行くのか、大丈夫か」と、すごく言われましたけれど、コロナ禍であっても絶対に自分の夢を曲げないと思って。絶対に大丈夫と思いながら毎日がんばっていて、今やっと道が開けてきたので、信じてきてよかったなって思います
待ち望んでいた本格的な採用再開。生徒たちは今、夢に向かって飛び立とうとしている。
（テレビ西日本）
