自民党の高市早苗政調会長は12日、フジテレビ系『日曜報道 THE PRIME』(日曜午前7時30分)に出演し、経済安全保障推進法が5月に成立したことに関し、スパイ防止法に近いものを推進法に組み込んでいくことに意欲を示した。

高市氏は、軍事転用の恐れがある技術の特許非公開などが盛り込まれた経済安保推進法の成立について「まずは第一弾ができた。残る課題はセキュリティクリアランス(秘密取扱適格性確認)だ。これをしっかりやらないと諸外国との民間共同研究もできない。日本が欧米のサプライチェーンから外される可能性もある」と述べた。

同時に、「経済安全保障推進法にスパイ防止法に近い物を入れ込んで行くことが大事だ」と強調した。

高市氏は、「中国の国家情報法や会社法、中国共産党規約などを見ると、中国人民は国家情報工作に協力する義務がある。不正競争防止法では対応できず、情報はだだ漏れだ」と指摘。「スクラムジェットエンジンや流体力学、耐熱素材技術などが中国で私たちを狙うかもしれない極超音速兵器開発に使われている」と技術の流出に危機感を示した。

また、高市氏は宇宙や電磁波、サイバーなどの領域での能力強化や法整備の必要性を主張。同席した立憲民主党の小川淳也政調会長もサイバー攻撃への対応について、国家的防御が必要だとの認識を示した。

ジャーナリストの木村太郎氏は、「ウクライナ紛争は21世紀型の戦争になった。20世紀の武器は一切通用しなくなった」と指摘。ドローンなどを挙げ、「何の武器がどのように使われ、何が効果的で、何が効果的でないのか。防衛省はウクライナに人員を派遣して見てくるべきだ。その上で日本の防衛を考えるべきだ」と強調した。

以下、番組での主なやりとり。

松山俊行キャスター(フジテレビ政治部長・解説委員):
岸田総理はバイデン大統領との日米首脳会談の後に防衛費の相当な増額を確保すると表明した。自民党の対GDP(国内総生産)比2%の考えが骨太方針にも反映された形。では、その財源をどうするのかという議論がある。安倍元首相は、防衛費6兆円台後半から7兆円に近いところということを言って、国債で賄ったらどうかと提案した。

高市早苗氏(自民党政調会長):
社会保障費、教育費、研究開発費などは今年度かなり額を積んだ。絶対的に日本に必要な経費は削るべきではない。そうすると短期的には国債発行になる。何かを削って防衛費を増やすというよりは、基本的には日本の経済をしっかりと拡大していく、パイ全体を大きくして国防費をしっかり確保できる形を作っていくような積極的な経済政策が必要だ。防衛費対GDP比2%というのはあくまでも対外的に日本の強い意思を示すという意味で、それを念頭においているが、基本的には積み上げだ。必要なものを積み上げていったら、どちらにしても10兆円規模にはなっていく。防衛費の当初予算では、4割以上が人件費と糧食費だ。そして2割以上が燃料費や維持費。装備品に使える金は15.8%だ。新しい装備は必要だ。特にスタンドオフ、非常に長距離から相手に反撃を行う力も当然必要だ。対空防衛も強化しなければいけない。研究開発費は非常に少ない3.2%、当初予算で見ると1600億円台だ。これから宇宙、電磁波、サイバーといった分野で相当な研究開発を行わなければいけないが、この部分が絶対的に足りていない。

松山キャスター:
立憲民主党は防衛費に関して3日に発表した公約で、メリハリのある防衛予算で防衛力の質的向上を図ると盛り込んでいる。では、防衛費を仮に増やすとなった場合、財源はどうするのか。

小川淳也氏(立憲民主党政調会長):
当面、国債を含めて財源確保していくのはやむを得ないという立場だ。しかし、長期的には、所得税の累進性、法人税の応能負担、場合によっては相続税、さまざまな歳入改革を堂々と議論できる政治勢力が必要だという立場だ。経済成長で全部まかなえるなら、きれいでかっこいいことだが、この30年、それを言い続けてできなかったことだ。それで終わらせるのは議論としては無責任だ。

高市氏:
コロナ禍前までのアベノミクスの成果は相当上がっていたと思う。

松山キャスター:
税収の増加もあると。

小川氏:
ただ、借金依存という本質的な体質からは抜け切れていない。

木村太郎氏(ジャーナリスト):
一体、日本の防衛に何が必要なのかということを今度のウクライナの紛争から学ぶべきだ。もう21世紀型の戦争になっている。20世紀の武器は一切通用しなくなった。ロシアが負けているのがそれだから。

小川氏:
サイバー戦とか情報戦を含めて。

木村氏:
そうだ。ドローンの研究をどれだけしているのか。そのためにはいくら金がかかるのか。今度の戦争の仕方を見に防衛省は人をウクライナに派遣したのか。本当なら何十人という防衛省の人間があそこに行って、何の武器がどう使われ、何が効果的で何が効果的でなかったのかを見て来るべきだ。その報告書を待つ。その上で日本の防衛考えるべきだ。

高市氏:
自民党内でずっと議論を積み上げてきた。スタンドオフ、相手の射程圏外から反撃する能力、相手の指揮統制機能を無力化するためのさまざまな装備が必要だ。例えば、衛星で言えば、アメリカには地上配備型の衛星攻撃システムがある。宇宙で衛星を破壊したら大変なことになるが、レーザー照射をして画像情報を得無力化する。情報の妨害だ。ジャミングなどで位置情報を攪乱する。それから電磁波。アメリカは相手の指揮統制機能、指令基地が地下にあっても、そこにある通信機器を無力化する、パソコンも使えなくする、こういった段階に入っている。衛星については、日本はすごく高い宇宙技術を持っているが、残念ながら普段から敵性衛星をチェックしたり、衛星の電波情報を取得したり、場合によっては、衛星に対する妨害を行ったりすることについて、法律に書き込まれていない。そういう装備もない。これから整えていかなければいけない分野だ。サイバーに至っては法改正まで必要になってくる分野だ。

梅津弥英子キャスター(フジテレビアナウンサー):
海外から日本へのサイバー攻撃は、2012年には78億パケットだったが、2021年には5180億パケットと、およそ70倍に増加している。

小川氏:
中国をはじめ専門の部隊が相当増強されていると言われている。国家として対応が必要な分野だ。日常的なサイバー攻撃は、有事に備え、脆弱な部分を見極める偵察行為だとも言われている。IOT(モノのインターネット)とよく言うが、あらゆるものが電脳空間と接続されつつある時代だ。人によっては生体情報まで登録する時代だ。ひとたび深刻な攻撃にさらされると社会そのものが麻痺する。そういうことに備えた国家的な防御はやはり必要なことだ。

高市氏:
平成の時代からロシアも中国も北朝鮮もすごい数のサイバー要員を抱えていた。サイバー攻撃への対応はものすごく大事で、法改正も必要になる。アクティブサイバーディフェンス、本気で守ると。場合によってはサイバー空間上で反撃もしなければいけない。不正アクセス防止法で相手の機器に許可なく入れない。それから電気通信事業法。これは憲法の通信の秘密があり、改正はなかなか難しいが、ただ、国防面でもあまりにも通信の秘密が除外をされないということになると、普段からサイバー空間の動き、ロシア軍の動き、こういうものの情報収集ができなくなるから、法改正も必要になってくる。非常に大きな仕事だ。あらゆる面で情報収集力を強化していくことが、(北海道を含む)北部地域の守りにも南西地域の守りにも直結していくと思う。

松山キャスター:
経済安全保障推進法が5月に成立した。これにより軍事転用される恐れがある技術特許を非公開にできるなど進展した。経済安全保障はこの法律で充分に機能するのか。

高市氏:
まずは第一弾ができたということだ。第二弾、残る課題は「セキュリティクリアランス」だ。これは海外から入ってくる研究者も含めてしっかりとクリアランスをかけるということ。人権侵害だとか、さまざまな論争が起こるところであるため、今国会では省かれたが、しっかりやらないと諸外国との民間同士の共同研究もできないという声も上がっている。下手したら日本が欧米のサプライチェーンから外される可能性も出てくるので、セキュリティクリアランスをやらなければいけないと思っている。それから、いわゆるスパイ防止法と、これまで呼ばれてきたけれども、経済安全保障推進法の中にそれに近いものをしっかりと入れ込んでいくことが大事だ。中国の国家情報法、会社法、中国共産党規約などを見ると、中国人民は中国の国家情報工作に協力する義務がある。今の不正競争防止法では、特に学術機関で行われている研究に関しては対応できない。まだ商品化が決まっていないから営業秘密にならない。国家に忠誠を誓って日本の技術を持ちだすことも図利加害目的とは言い切れない。そういう意味ではもう情報はだだ漏れだ。日本が強いスクラムジェットエンジンや流体力学、特に耐熱材料の技術などが中国で極超音速兵器など、私たちを狙うかもしれない兵器の開発に使われている。この状況を何とか早く止めなければいけない。

日曜報道THE PRIME
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