違法薬物の中でも今、特に「大麻」が広がりをみせている。
広島県警が、2021年に大麻関連で検挙した人数は過去最多の64人となった。その内、約7割を占めるのが30歳未満の若年層だ。
4月にも、大麻草16株を栽培、末端価格約10万円分の乾燥大麻などを所持していた男が逮捕される事案も発生。
SNSの普及などにより、薬物の入手は容易になっている。

軽い気持ちで手を出してしまったことから、依存症との長い闘いに苦しむ人に話を聞いた。

最初は好奇心から大麻に…そこから薬物の深みに

ユウさん(仮名):
自分、ついこの間(刑務所を)出所したばかりなんですけど、後悔しかないですね。使い続けると、やっぱ死んじゃいますしね

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ユウさん(45)。今も薬物依存から抜け出そうと闘っている。これまでに4度、覚せい剤取締法違反の容疑で逮捕された経験がある。
薬物への入り口は10代の時。遊びに行ったクラブで友人から貰い、軽い気持ちで手を出した大麻だった。

ユウさん(仮名):
まぁ好奇心ですね。やる?って言われた時、“ああじゃあ!”みたいな感じで、すぐ手をつけた。
(Q.大麻は結構簡単に手に入る?)
簡単に手に入りますね。
(Q.特別な人でなくても?)
特別な人でなくても、ほんと一般人でも。誰でも若い子なら、そういうクラブとか行ったら、なんか「あるよ」みたいな感じで、「さあさあ」みたいな感じで

罪の意識もなかったと言う。

ユウさん(仮名):
それが入り口になって、まぁ、どんどん、どんどん、薬物の深みにハマっていくんですけど。
最初は大麻だったけど、大麻が危険ドラッグになって、危険ドラッグが覚醒剤になって、MDMAとか、ほかにもいろんなものをやってました

ユウさん(仮名):
その当時、結婚していて子供もいて…全て失いましたね。逮捕されて失って、それでも止められなくて。精神的にも病んできますし、社会にも適応できなくなるから

治療の目的は完治ではなく「コントロール」

広島県の依存症治療の拠点機関となっている瀬野川病院。依存症に詳しい医師は、治療の目的は完治ではなく、コントロールだと言う。

(Q.依存症は治る?)
瀬野川病院・加賀谷有行医学博士:
治るという定義が難しいなと思うけど、辛くなった時にも、何かそういう薬物に頼らずに他の対処法を学ぼうっていうようなことをウチではやっていますね。失敗しても復帰できるチャンスがあるということを考えながら、彼らの治療にあたっているつもりではありますけどね

こちらは、薬物やアルコールなどへの依存症回復施設・広島ダルク。社会復帰を目指し、ユウさんたちはここで共同生活を送っている。

依存症という同じ苦しみを味わった仲間と支え合いながら、「死ぬまでクスリを止め続ける闘い」に挑む覚悟だ。
そんなユウさんだが、夢や希望を持っている。

ユウさん(仮名):
初めて手を出した時に戻れるのなら戻りたい。「その時しなかったらな」みたいなのはありますね。最初の1回に手を出してしまった。
こんな自分にも待ってくれてる人がいるから…まだいるから。その人のために、自分のためにでもある。止め続けて、幸せになりたいですね。本当に幸せになりたいです

大麻は違法薬物であるにも関わらず、煙草の延長のように軽く考えられがちだが、他の薬物への入り口「ゲートウェイドラッグ」とも言われている。

ちょっとした好奇心や、仲間に誘われて断り切れなかったりなど、きっかけは様々でも、薬物は脳に作用して自分の意志ではどうしようもなくなってしまうという怖さがある。

また依存症の人が社会復帰を果たすには、社会の受け皿も必要だ。
薬物に限らず、失敗しても受け入れ、支え合える、そして何度でもやり直せる社会作りが重要なのではないだろうか。

(テレビ新広島)

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