各国が非難する中で続くロシアのウクライナ侵攻。
西側諸国とともに制裁を科したため、暗礁に乗り上げたのが、北海道の"悲願"ともいわれる北方領土問題。
再び、希望を失いつつある元島民らの思いを聞いた。

大きく"後退"…元島民の思い

現状では、日本本土・最東端の北海道根室市。
花咲港には頻繁にロシア船が出入りし、街中にはロシア語表記の看板が目立つ。 

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領土問題を抱えながらも、ロシアとの交流を深めてきた証でもあるが、ウクライナ侵攻で今、住民感情は揺れている。

根室市民(80代):
昔の空襲のことを思い出す。早く終わってほしいです

根室市民(20代):
北方領土が隣にあるので怖い。ひとごとではないと思います

根室沖では3月2日、ロシア機とみられるヘリコプターが領空を侵犯。
さらに、その後、北方領土ビザなし交流の停止を表明。
"領土交渉"は暗礁に乗り上げた…
一歩ずつ、故郷を取り戻す"希望"を積み重ねてきた元島民たちの思いは大きく後退した。

双方が抱える"複雑"な思い

根室市でビザなし交流を支援してきた本田幹子さん(64)は…

ビザなしサポーターズたんぽぽ 代表 本田 幹子さん:
 (ビザなし交流停止は)予想はしていましたけど、強烈でした。もう再開することはないのかなとすごく不安になりました

ビザなし交流でロシア人と親交を深めるにつれ、領土問題解決に向けては「お互いの信頼」が大切だと実感してきた一人だ。

ウクライナ侵攻が続く中で、20年以上交流があるロシア人男性からのメッセージが本田さんに届いた。
そこには複雑な思いが綴られていた。

(ロシア人男性からのメッセージ):
どんな形であれ戦争を知っています。どんなに良い計画を立てても、それは悪いことです

ビザなしサポーターズたんぽぽ 代表 本田 幹子さん:
『戦争はよくないこと』だと同じように思っていて、安心しました。きついですけど、実際に島の人たちと直接交流したい。島の人たちも望んでいると思うけどな

「私たちはあきらめない」

苦悩する人はここにも…77年前、生まれ故郷の歯舞群島勇留島(ゆりとう)を追われた角鹿 泰司(84)さん。

8歳のころ、ソ連兵が土足で自宅に上がりこんできた恐ろしさと、今が重なるという。

歯舞群島 勇留島出身 角鹿 泰司さん:
ウクライナの子どもたちの姿を見ていると、島を追われたとき以上の、ものすごい恐ろしさが伝わってくる

根室市の納沙布岬からは、生まれ故郷が見える。

歯舞群島 勇留島出身 角鹿 泰司さん:
あれが勇留島。本当に近い。こんな近いところがロシアに占領されている。返還運動を私たちは諦めない。自由がなくなったり、平和をおろそかにしてはいけない

次の世代へ 「故郷への思い」

現在84歳の角鹿さん。
元島民の平均年齢も86歳と高齢化が進む中、角鹿さんは島での経験を若い世代に伝えている。 

孫の志歩さん(21)と柚衣さん(19)は、これまで2度北方領土を訪れ、角鹿さんが住んでいた土地などをめぐった。

歯舞群島 勇留島出身 角鹿 泰司さん:
今度、島に行く時は、おじいちゃんいなくてもわかるでしょ

角鹿さんの孫 妙護寺 志歩さん:
残っているところは少なかったけど、おじいちゃんがここまで覚えているのはすごいなと思った

角鹿さんは、孫たちに元島民の思いも引き継いでほしいと感じている。

歯舞群島(勇留島)出身 角鹿 泰司さん(84):
今もうすでに命が尽きる時点にきているけど、北方領土返還を絶対してもらわないといけない強い気持ちがある

角鹿さんの孫 妙護寺 柚衣さん:
昔起きていたことや、現状が知られていないままだから、自分も伝えていかないといけないと感じています

揺れる元島民らと家族、そして交流があったロシア人。
ウクライナ侵攻は、積み上げてきたものにも暗い影を落としている。

(北海道文化放送)

記事 1074 北海道文化放送

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