「校章」や「思い出のキズ」を生かした形でランドセルを再生

卒業のシーズンを迎え、使わなくなるランドセルを財布やキーホルダーなどにリメイクするサービスが人気を呼んでいる。

愛知・一宮市の「Askalカバン工房」。
会社の扉を開けると、全国各地から届いた大量のランドセルが所狭しと並んでいた。

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「Askalカバン工房」は、2010年に代表取締役の大橋泰助さん(48)がイタリアの革製品を作る個人事業を立ち上げ、2014年に法人化した会社。
5年前の2017年3月に、ランドセルのリメイクを始めた。ランドセルのフタやサイドの大マチ、ベルトなどを、財布やパスケース、キーホルダーなどに生まれ変わらせるサービスだ。

きっかけは大橋さんの娘が中学に入り、友人がランドセルをミニランドセルにリメイクしたのを聞いて、自分も「ランドセルを何かの形として残したい」と話したことだった。
もうランドセルは残していなかったため、この時は大橋さんが革で作ったパスケースと髪を留めるバレッタをプレゼントしたところ、娘が喜んで使っていたのを見て、このサービスを思いついたという。

1年目の2017年が800個ほどだった注文は、2019年に3600個と右肩上がりだったが、2020年は9000個とさらに大きく伸びた。そして2021年は14000個と、注文は伸び続けている。
2020年に大きく注文が増えたのは、新型コロナウイルスの影響だ。年が明けて感染が広がり始めたため小学校が休校となり、ランドセルを背負う“最後の日”が突然訪れた6年生の親から「何か形に残したい」という声が増え、このサービスが知られていった。

各地の公立小学校で卒業式が行われた3月17日、工房を訪れた。思い出の詰まったランドセルが生まれ変わっていく工程を見せてもらうと、それぞれの工程で職人が集中して作業に向かっていた。

職人は全員女性。「Askalカバン工房」は29人の従業員のうち27人が女性で、出退勤時間を自由に決めることができ、会社を支えている。

最初の工程は、裁断。皮素材も苦もなく切ることができる万能バサミで裁断したあと、機械にかけてパーツにする。

ここからは出来上がる商品によって工程が異なるが、生地を部分的に薄くしたり、毛羽立ちを燃やして処理したり、サイドの部分を丁寧に色付けしたり…。きめ細やかな作業が、使い古されたランドセルを蘇らせていく。

長財布には、ランドセルのフタにデザインされていた「花の刺繍」がそのまま生かされていた。

また、財布のチャックの部分には、ランドセルのポケットに使われていた金具を使うなど、ところどころに思い出を残してくれる。

乾かす工程を含めて、約5時間かけて1つのランドセルが、長財布・折りたたみ財布・ミニランドセルキーホルダー・ベルトキーホルダーなどに生まれ変わった。

ランドセルに入っている「校章」や「思い出のキズ」などを残してほしい場合は、オーダーすればそれを生かした形で品にしてくれる。別途料金がかかるが、名入れのサービスもある。

また、リメイクして残った部品は、「ランドセル詣り」をしている一宮市の尾張猿田彦神社から神職を呼び、お祓いをして感謝の気持ちを表して処分しているという。

ランドセルを祖父母に買ってもらって、捨てるに捨てられず保管しているというような家庭には重宝するサービスかもしれない。
大橋さんは、「家族でシェアして使ったり、入学時に買ってくれた祖父母にプレゼントして卒業の感謝の気持ちを伝えたりするために、このサービスを利用してもらえれば」と話している。

基本プランは7800円の6点セット(キーケース、パスケース、バレッタ等23点のうちから3点と楕円キーホルダ、コードホルダー、ベルトキーホルダー)と、14500円の5点セット(長財布、折りたたみ財布5種類のうちから1点、小物1点、楕円キーホルダ、コードホルダー、ベルトキーホルダー)で、楽天やYahooショッピングのサイトなどで申し込むことができる。

(東海テレビ・佐藤岳史)

佐藤岳史
佐藤岳史

東海テレビ放送・報道部WEBニュースデスク。2012年に報道部に戻り、スポーツ、三重支局駐在で伊勢志摩サミットの取材にあたった後、2018年秋より現職。今は番組で網羅できなかった街ネタや不思議に思ったこと、関心を持ったことをネタにしています。まだあまり支持されていませんが、最近は「タイムラプス動画」を撮影しながら記事を書いています。