2022年1月に、島根・松江市の男性教諭が知人女性を包丁で脅し、車に監禁したとして逮捕・送検された事件。
その後の調べで、被害者とされた女性の証言が信憑性に欠けるとして、男性教諭は不起訴となった。
逮捕・送検から約2カ月半が経過した後の検察の判断…男性の複雑な心境をTSKが独自取材した。

「10時間近く話したのに信じてもらえない」

不起訴となった吉田恭二さん:
安堵しています。わかっていただいたという気持ちと、長かったなというのが正直な気持ちです

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安堵の声をもらすのは、不起訴処分が決まった松江市の県立養護学校に勤務する吉田恭二さん(37)。

吉田さんは1月4日、島根県東部の駐輪場で知人の40代の女性に包丁を突きつけて脅迫し、車に無理やり連れ込んだとして、逮捕監禁と銃刀法違反の疑いで松江警察署に逮捕された。
しかし松江地検は、被害を訴えた女性の証言は信憑性が十分ではないとして不起訴処分とした。

不起訴となった吉田恭二さん:
スーパーやコンビニ、家を出て外を歩くなど、しやすくなるなと感じる

吉田さんは逮捕の翌日に身柄を松江地検に送られたものの、その翌日、つまり逮捕の2日後、送検の1日後には釈放されている。
このことから逃走の恐れがない事はもちろん、嫌疑自体が十分でなかった事が伺える。

TSKでは、釈放され自宅に戻った吉田さんと接触。取材の承諾を得て心境を聞いた。

不起訴となった吉田恭二さん:
10時間近く取り調べも受けてきて、これだけお話しして、ちゃんと正確に話したのに、それが認められない、信じてもらえない

そして警察が発表した逮捕容疑について、自身の主張との食い違いを訴えた。警察は、女性に包丁を示して「声を出すな」などと脅迫し、車に連れ込んだとしていたが…

不起訴となった吉田恭二さん:
被害者女性に1つ1つ確認を取り、車に一緒に乗るという形を取ったので、逮捕監禁にあたらない

逮捕監禁容疑に思い当たることはないと主張した。警察は、車の中から見つかった刃渡り17cmの包丁は吉田さんの所有で、吉田さんが事前に用意したものとしていたが…

不起訴となった吉田恭二さん:
私は包丁を出していないし、脅してもいない。包丁は相手方(女性)が包丁を持ってきて、カバンにしまっていた

銃刀法違反容疑も否定した。

不起訴となった吉田恭二さん:
世間一般には迷惑をかけた半面、自分も苦しかった半面、申し訳なかった半面、なんで逮捕されたのだろうというところが渦巻いている

不起訴となった吉田恭二さん:
喋ったことが認められず、被害者女性の言葉だけが認められて残念だった

不起訴でも「苦しみは全部消えない」

今回の逮捕について島根県警は、「被害者や被疑者への聞き取り、目撃情報などを総合的に判断し、粛々と捜査を進めた」として正当性を主張している。

逮捕、送検と不起訴。どちらも捜査当局の判断だが、こうした警察権力の行使は一般市民にとっては想像を超える強い力であることを、吉田さんの体験が改めて示している。

不起訴となった吉田恭二さん:
逮捕されたあと勾留された時の苦しさだとか、勾留が解けて釈放されたあとの自分の居場所のなさだとか、そういう苦痛は不起訴が決まったあとも、あす以降も、苦しみは全部は消えないなと思っている

吉田さんの胸には、深い傷痕が今も刻まれたままだ。

(TSKさんいん中央テレビ)

TSKさんいん中央テレビ
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