夫の定年退職を機に、ふるさと・長野に戻った夫婦がクラフトビールの店を開いた。店内で醸造したビールも好評で、コロナ禍の街を元気づけたいと奮闘している。

クラフトビールの店を夫婦でオープン

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「かんぱーい、お疲れさま」
「うまい、飲みやすい」

まん延防止等重点措置が解除されてから、最初の夜を迎えた飲食店。ここは2021年9月、長野駅前の二線路通りにオープンした「山の間」。

小山一夫さんとみち江さん
小山一夫さんとみち江さん

ともに長野市出身の小山一夫さん(62)と妻のみち江さん(62)が切り盛りしている。
店の「売り」はクラフトビール。小山さん自身が醸造したものもある。

山の間・小山一夫さん:
皆さんに喜んでいただけるような、また飲みたくなるような、そんなビールをつくっていきたい

こだわりの一杯が味わえる店。コロナ禍に夫婦の挑戦が続いている。

アメリカでクラフトビールに出会った

大学卒業後、東信地区の自動車部品メーカーで働いてきた一夫さん。赴任先のアメリカでクラフトビールに出会い、魅了された。

山の間・小山一夫さん:
今まで飲んでいたビールとは違う味、それもさまざまな種類がある。一軒のレストランに行って、何種類も飲むことができるのが楽しいと

提供 山の間
提供 山の間

帰国してから飲むだけでなく、次第に自分でもつくってみたいと思うようになった一夫さん。2018年に新潟市に赴任すると、週末は現地のクラフトビール会社で醸造を学んだ。
そして…

山の間・小山一夫さん:
クラフトビールでいうと、(長野市には)今まで製造するところはなかった。もっともっとファンを広げていけたら

定年退職後にふるさとに戻って起業

定年退職後に醸造所を併設した店を、ふるさと・長野市に開くことを決断。折しもコロナ禍だったが、貯蓄や退職金で設備を揃え、2021年9月にオープンにこぎつけた。

山の間・小山一夫さん:
定年後の仕事なわけですから、私たち自身からすると、待っていられない、待つ必要がない。環境はコロナ禍という厳しい状況ではあるが、とにかく始めようと

妻が後押し「自分のビールつくりたい気持ち分かった」

夫の挑戦に妻は…

妻・みち江さん
妻・みち江さん

妻・みち江さん:
これから温泉とか旅行とか楽しみにしていたのに、全部、吹っ飛んじゃうのって(笑)。本当に自分のビールをつくりたいんだなという気持ちが分かったので、遅いかもしれないけど、頑張る気持ちがあるのならやりましょうかと

オープン後は新潟の修業先で仕込んだビールを提供しながら、製造免許も取得。徐々に常連客もでき、順調な船出となった。

休業中に店の味を追求

しかし1月、「まん延防止等重点措置」が適用され、飲食店に時短営業の要請が出された。店は「充電期間」と割り切って休業し、一夫さんは店で仕込む「第1弾」のクラフトビールづくりに集中した。

提供 山の間
提供 山の間

仕込んだのは、麦芽に米を混ぜて口当たりをまろやかに仕上げる「ライスヴァイツェン」という種類だ。

山の間・小山一夫さん:
麦芽に「頑張れよ」とか、「酵母頑張ってね」とか、そういう感じで

「重点措置」の解除を受け、店は7日から通常営業に。午後3時に開店すると、次々と客が訪れた。
店で仕込んだ第1弾の味は…

店で仕込んだ第1弾の味は…
店で仕込んだ第1弾の味は…

客:
おいしい、ごくごく飲めちゃいます。プレミアム感っていうんですか?その場でつくってすぐ飲むのは付加価値がある

客:
久しぶりに外で飲んで、おいしいです。(クラフトビールは)飲んでみないと味が分からないので、飲み比べも楽しい

クラフトビールにあわせる「おつまみ」は、妻・みち江さんの担当。川中島の豆腐店から仕入れて作る湯豆腐に、にらせんべい。地域の魅力を発信しようと、地元の食材や郷土料理をメニューに取り入れている。

「おつまみ」はみち江さんの担当
「おつまみ」はみち江さんの担当

妻・みち江さん:
(生産者や食材と)いい出会いができているのは肌で感じますし、皆さん応えてくださって、頑張ってと見てくれているので、ありがたい

一夫さんの幼なじみ:
新しいやつ

「ライスヴァイツェン」を注文したこちらの男性は、一夫さんの幼なじみだ。

一夫さんの幼なじみ:
ここで初めて(醸造した)というやつなんで、どんなかなと楽しみに来ました。泡から、みんなおいしいですよ。今年は(御開帳など)いろんなことがある年だし、にぎやかになってくれれば。この店もお客さんがいっぱい来てくれればいい

第二の人生はふるさとに戻っての「チャレンジ」。夫婦はこだわりの一杯と郷土の味で、コロナ禍の街を少しでも元気にしたいと意気込んでいる。

山の間・小山一夫さん:
喜んで飲んでいただいて、楽しんでいただいて、ファンを広げていきたい

妻・みち江さん:
二線路(通り)から元気にしたいというのが最初の気持ちなので、ここから駅前、長野市、長野県と膨らんでいったらいいという気持ちは強い

(長野放送)

長野放送
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