東日本大震災で甚大な被害を受けた岩手・陸前高田市は、SDGsに積極的に取り組む「SDGs未来都市」に認定されている。
復興とともに、さらにその先の未来を見据えた取り組みが進んでいる。
陸前高田市で“楽しみながら”SDGsを学ぶイベント
陸前高田市で3月5日に行われたイベントには、市内の8つの事業者などが、SDGsについて体験やゲームを通じて学べるブースを出展した。

参加者:
子どもの頃の出店の遊びに来たみたい
万華鏡をつくる体験コーナー。
材料になっているのは、市内の海岸清掃で集められたプラスチックの破片。

海の生態系を破壊することから問題になっているプラスチックごみも、万華鏡に入れてみると、きれいな花模様があしらわれる。

参加者は楽しみながら環境問題について学ぶ。

参加した子ども:
海に(ごみを)捨てたら、海にいる魚たちが食べてしまうことがあるから、気を付ける
この体験コーナーを設けた伊東亜希子さんは、普段勤務する文具店でも海洋プラスチックを使った手作りのアクセサリーなどを販売している。

身近な取り組みでも、SDGsにつながることを知ってもらいたいと話す。
伊東文具店・伊東亜希子さん:
自分ができる範囲の中で、そして楽しくできるものでやっていけたら、ずっと続けられるんじゃないかと思う

目標は「ノーマライゼーションという言葉のいらない街づくり」
それぞれができることをみんなでやっていくこと。それは、街が目指す未来の姿にもつながる。
陸前高田市は、SDGsに積極的に取り組む自治体として、2019年に「SDGs未来都市」に認定された。

市が掲げる目標は「ノーマライゼーションという言葉のいらない街づくり」。
ノーマライゼーションとは「障がいのある人や高齢者でもいきいきと活動できる社会を目指す」という理念を指し、こうした考え方が当たり前に定着するようにという意味を込めている。

陸前高田市 政策推進室・菅野隼さん:
誰もが生き生きと笑顔で過ごせる街というのは、被災したこの街だからこそ発信できるメッセージだと思うし、この街に来れば元気になれるということで、訪れる人も笑顔になって帰ってもらえる街になればいい

「誰もが輝ける街へ」震災後、大阪から移住した男性の取り組み
「誰もが輝ける街へ」取り組んでいる男性がいる。富山泰庸さんは、市内でチョコレート専門店「カカオブローマ」を経営している。
大阪府出身の富山さんは、東日本大震災後すぐに、被災地の復興に役立とうという思いから陸前高田市に移住した。

ロッツ・富山泰庸さん:
知っていて動ける人間で動かないのは、天罰がくだるんじゃないかと思って。日本の危機なので、やらなきゃいけなくてはと思っただけ
チョコレート事業を立ち上げたのは、商売だけでなく健康への思いもあった。

ロッツ・富山泰庸さん:
誰でも食べられるもので栄養素がしっかりしていて、生活習慣病の予防にもなるような食材。カカオは、その栄養素をたくさん含んでいてよかった
チョコレートに使われる素材は、南インド産の有機栽培のカカオなど厳選されたものばかり。その吟味はなんと薬剤師が行っている。

さらに、チョコレートづくりは働く場をつくることにもつながっている。
カカオ豆の選別や豆の殻を取り除く作業をしているのは、市内の障がいのある人たちだ。

富山さんは障がいのある人たちと雇用契約を結び、健常者と同じように県の最低賃金を上回る給与を支払っている。これは市内では唯一のことだという。

きちんとした報酬を得られることは、雇用されている人たちのやりがいにもつながっている。
従業員:
目標量を決めていて、それに達したときが楽しいし、自信がつく
ロッツ・富山泰庸さん:
ずっと同じ作業なので飽きっぽくなるし、ずっとやらなければとなるが、逆に障がいのある人はそこに特性を持っている人もいるので、生産性が逆に高いという人もいて、非常に助かっているし、ありがたい

富山さんは、自分たちの取り組みで成功事例をつくり、観光業などさまざまな分野の発展にもつなげていきたいと語る。
ロッツ・富山泰庸さん:
バカみたいな夢ですけど、カカオの実をここでならせて、カカオ豆自体を採った瞬間から発酵することができるので、より身体にいいチョコレートをつくっていきたいなと。そういうことができたら、ここにカカオのツリーができるので観光客も来ると思う。これは将来の大きな夢

震災で甚大な被害を受けた陸前高田市。
すべての人を誰一人取り残さない街を目指して、復興の歩みを進める。
(岩手めんこいテレビ)