2月24日放送のBSフジLIVE「プライムニュース」では、河野太郎自民党広報本部長をスタジオに迎え、夏の参院選に向けた自民党広報のあり方と今後の戦略について議論した。

また外相、防衛相、ワクチン担当相を歴任した河野氏には、ロシア軍による攻撃が始まり深刻化するウクライナ情勢、そして新型コロナ対策の現状についても見解をうかがった。

ウクライナ侵攻はロシアに全ての責任。日本は台湾有事も見据え制裁強化を

国民向けのテレビ演説(日本時間2月24日正午ごろ)
国民向けのテレビ演説(日本時間2月24日正午ごろ)
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長野美郷キャスター:
ロシアのプーチン大統領は「NATO(北大西洋条約機構)のさらなる拡大やウクライナ領土の軍事開発は容認できない」「流血の責任は全面的にウクライナ政府にある」と発言。一方、アメリカのバイデン大統領は「この攻撃がもたらす死と破壊はロシアだけに責任がある」。それぞれの言い分をどう受け止められますか。

河野太郎 自民党 広報本部長:
バイデン大統領の言う通り、今回の事態はロシアが一方的に引き起こした、ロシアだけに責任がある犠牲と苦しみ。NATOの拡大はロシアに対する何らの攻撃でも仕掛けでもない。それを理由とし、ウクライナ政権があたかも国民を弾圧しているかのように振る舞っているが、ロシアはかつてナチスが隣国に侵攻したのと同様のことをやっている。

反町理キャスター:
プーチン大統領は「我々は30年間交渉してきた」と。ソ連からロシアになって30年で後退した勢力圏を戻そうとしている?

河野太郎 自民党 広報本部長:
今回、ロシアは単独ではなくウクライナ侵略にベラルーシを使っている。単純にウクライナの問題なのか、もっと勢力圏を広げようとしているのかを見ていかないと。ウクライナを「フィンランド化」(かつてフィンランドが議会民主制・資本主義を維持しながらもソ連の勢力下に置かれた状況)しようとしているのかも。西側は真剣に対応する必要がある。

反町理キャスター:
米露首脳会談でバイデン大統領が述べた経済制裁は抑止力になっているか。アメリカにはもう、ヨーロッパでロシアと、アジアで中国と向き合うような二正面作戦をとる国力はないのでは?

河野太郎 自民党 広報本部長:
アメリカにかつての絶対的な力はない。軍事介入に国内支持が得られない現実もある。トランプ政権は中東から、バイデン政権はアフガニスタンから撤退。国際秩序を守る意思が強固でないことをプーチン大統領は感じている。アメリカにとって、より大きな国際秩序への脅威は中国。ロシアを無視していいとは考えていないが、軍事介入する意思決定には至っていない。

河野太郎 自民党 広報本部長、プーチン ロシア大統領(画面左)、バイデン アメリカ大統領(画面右)
河野太郎 自民党 広報本部長、プーチン ロシア大統領(画面左)、バイデン アメリカ大統領(画面右)

反町理キャスター:
プーチン大統領は、西側も自分たちの天然ガスに依存しており、たいした経済制裁はできないと高を括っているのでは? 

河野太郎 自民党 広報本部長:
G7(主要7カ国)の首脳会談でしっかりした制裁を出せるか。台湾を念頭に中国の習近平国家主席も見ている。対岸の火事ではない。岸田総理には制裁のイニシアチブをとっていただきたい。

反町理キャスター:
北方領土問題もあり、慎重論も聞かれるが。

河野太郎 自民党 広報本部長:
全くあたらない。まず、日露の平和条約交渉はこの状況下で従来通り進むことはなく、仕切り直しとなるでしょう。中国の台湾侵攻について「日本は巻き込まれないように」と言う人が必ず出てくるが、その瞬間に日米同盟、東アジアの平和と安定が危機に晒される。ロシアとの関係でも同様。今は国際秩序をどう維持するか、力による一方的な現状変更を認めない原理原則が崩れるのか抑えるのか、という状況。日本が欧米と一緒に向き合うことは、東アジアで似た事態が起きたときに国際秩序を守ることに繋がる。

コロナウイルスはさらに変異も…ワクチン3回目接種が重要

河野太郎 自民党 広報本部長
河野太郎 自民党 広報本部長

反町理キャスター:
新型コロナのオミクロン株は新規感染者も減り、ピークアウトという話もある。現在の状況について。

河野太郎 自民党 広報本部長:
デンマークでは、オミクロン株の中でも変異したBA.2という株が今や9割で、さらに新しいものが出始めていると聞く。日本では感染者は減ったが、遅れて重症者・亡くなられる人が増えた。恐らくさらに変異が起きる。

反町理キャスター:
なるほど。

河野太郎 自民党 広報本部長:
(ワクチンの)3回目接種で重症化をかなり防げる。オミクロン株が収まったと手を緩めるのではなく、今回検査キットの増産やコストダウンに失敗したことを繰り返さないように、次の波に備えていくこと。そして3回目接種を受けて頂くことが大事。

“広報の家庭教師” 舩木氏「広告と広報の違いを理解することが重要」

反町理キャスター:
自民党の広報が、他党と比べてダメな部分は。

河野太郎 自民党 広報本部長:
県連で、機関紙『自由民主』は読んでいないが公明党の新聞は読んでいる自民党議員の話があった。野党の主張の矛盾点についてなど、わかりやすい解説があるから役に立つと。今までの『自由民主』って、やや、その……。

反町理キャスター:
言葉を選んでらっしゃいますね(笑)。

長野美郷キャスター(左)、反町理キャスター(中)、河野太郎 自民党 広報本部長
長野美郷キャスター(左)、反町理キャスター(中)、河野太郎 自民党 広報本部長

河野太郎 自民党 広報本部長:
例えば、中国共産党の機関紙みたいな「総裁様がここ行きました、幹事長様がこうおっしゃいました」。さすがに読まない。だから内向けのものはやめる。読者である100万党員にとってもっとわかりやすく、そしてデジタルファーストで。

長野美郷キャスター:
「広報の家庭教師」として100社以上の広報人材を育成されてきた舩木さん、河野さんの印象と機関紙については。

舩木真由美 株式会社シプード 代表取締役:
広報は組織の顔かつ窓口であり、河野さんは自民党の顔にふさわしい。ワクチン施策のプロセスをSNS活用でオープンにされ、双方向性あるコミュニケーションに誠実さがあった。一方、機関紙は民間企業でいう社内報。中身を変えて読む人は増えても、党員以外の人には届かない。改善は良いが、外の人に届けるには別の打ち手が必要。

河野太郎 自民党 広報本部長:
難しいところ。外の人にも見てもらいたいのだが、まずはこれぞというものを作って100万党員を引きつけたい。

舩木真由美 株式会社シプード 代表取締役
舩木真由美 株式会社シプード 代表取締役

舩木真由美 株式会社シプード 代表取締役:
SNS活用は手段だが、その上層で広報を本格化するにあたっての戦略として、国民の世代別の課題を調査してマイルストーンに落とすなどできていますか?

河野太郎 自民党 広報本部長:
夏の参院選に向けて、色々と調べ考えながら施策が走っている。本当は党本部の事務方に広報マンをつくる投資が必要。本部長や部長代理は任期が3期までで交代するから。

反町理キャスター:
選挙では政策ビラ、政策集が配られるが、広報のプロとしてあれで票が増えると思われますか?

舩木真由美 株式会社シプード 代表取締役:
まず、政治だけでなく日本全体の課題ですが、「広告」と「広報」が混在しており違いが理解されていない。広告はお金を払って枠を買い、出したいメッセージを載せ、認知を上げる。広報は社会性と新規性の2軸で情報発信・問題提起し、それをメディアが客観的に報じる。政策パンフレットは、広告と同じ考えで作られているから刺さりにくい。つまり自らが出したいメッセージを出している。広報は国民が知りたい情報を渡すもの。

反町理キャスター:
では、各政党の政策パンフレットはいらない?

舩木真由美 株式会社シプード 代表取締役:
従来の方法で届いている方には届く。若者からの支持の母数を広げるにはデジタルだが、どう変えるべきかは、実態調査で若者の声を聞くこと。

河野太郎 自民党 広報本部長:
若い世代の支持率は高いが、どれだけ投票に行ってくれるか。またテレビの影響でコロナ対策がダメだと思われているのか、年齢が高い層でガクッと落ちている。きちんとやっていますよとメッセージを送る。

反町理キャスター:
政策パンフレットはやはり出しますか。

河野太郎 自民党 広報本部長:
自民党の政策が網羅されており、国民向けメッセージとして大事。有権者が手に取ったり、メディアが手にとって広報の一環として流れるということもある。そういう意味では役に立つ。

苦しい決断も世の中に受け入れてもらうために、広報の力が重要

長野美郷キャスター:
河野さんは広報本部長として、都道府県連との意見交換会、地方議員向けのセミナーを行っています。この内容は?

河野太郎 自民党 広報本部長:
「SNSでの情報発信をしっかり」と。ツイッターは街頭演説、フェイスブックは後援会の少人数集会だと。ただしSNSは双方向のもので、街頭演説で話をされにきた方と話すのと同様、アクションを返してねと。

反町理キャスター:
参院選に向けた状況は。

河野太郎 自民党 広報本部長:
戦略をつくるためのリサーチ段階。今回はかなり短期決戦となるが、やらなければしょうがない。地方を回って申し上げているのは、参議院の候補者には申し訳ないが今回はテストだと。候補者が使えるものを色々提供し、うまくいけば来年の統一地方選でそのメソッドを使うので、協力してくださいと。

長野美郷キャスター:
河野さんはいろんな分野で経験を積まれていますが、今の仕事が今後のキャリアにどう活かされるでしょう。

河野太郎 自民党 広報本部長:
去年はワクチンを打ってもらうために、いろんなエビデンスを出して説得した。また自治体に納得してもらうため、やり方とその理由を説明し、情報を出して共有するシステムを作った。今年はその修行を試す場かなと。自民党のメッセージをどこまで伝えられるか。

河野太郎 自民党 広報本部長
河野太郎 自民党 広報本部長

反町理キャスター:
問題を先送りにしている今の日本は茹でガエルだという人もいる。河野さんがしかるべきポジションにいて、辛いがやる必要があることを国民に伝えなければいけない時にどうするか。

河野太郎 自民党 広報本部長:
難しく苦しい決断のとき、世の中に「こういうことをやらざるを得ない、理解してください」と。賛成してくれなくても理由はわかってほしい。そのための広報が大事。

BSフジLIVE「プライムニュース」2月24日放送