新型コロナウイルスはペットの保護活動にも影を落としている。長野市の「保護猫ハウス」は訪れる人が激減し、運営の危機に直面。ネコたちの居場所の存続が心配されている。

コロナで来場者半減、寒さで体調崩すネコも

長野県庁に近いビルの中にある、保護猫ハウス「信州猫日和」。保護されたネコと触れ合い、気に入れば引き取ることもできる新たな飼い主との”出会いの場”だ。1月にオープン5周年を迎えた。

「おはよう」との呼びかけに元気よく飛び出したのは、生後半年ほどのきょうだいの「ちょび」(オス)と「しめじ」(メス)。生まれた直後に民家の庭で保護された。

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そして、交通事故に遭い後ろ足が動かない「こてつ」(オス)。

高い所も自由自在に動き回り、ハンディをものともしない。今は40匹余りが暮らしている。

高い所も自由自在に動き回る
高い所も自由自在に動き回る

オープンは正午。この日もネコたちは「出会い」を待っていたが…。

信州猫日和・桜井志津枝代表:
新型コロナ(の影響)で皆さん外出を控えているので人が来ない、お金が苦しい。どうやっても先々の家賃が払えないという状況が見えてきた

桜井さんは2017年、夫婦でNPO法人を立ち上げ保護猫ハウスを始めた。収容は多いときで75匹。5年間で305匹を保護し、231匹を譲渡してきた。

年間の運営費は1000万円を超え、その8割を入場料の代わりに訪れた人からもらう任意の寄付で賄ってきた。

ただ、コロナ禍でひと月300人から400人いた来場者は半減。加えて厳しい寒さで体調を崩すネコも相次ぎ、暖房費や医療費の負担がのしかかっている。

ツイッターでのSOSきっかけに 通販や映像配信に注力

そして、2021年の暮れ。ついに…。

信州猫日和のツイッター(12月14日):
ごめんなさい。2月くらいに閉める事になると思います。打つ手がない

SNSでつぶやいた本音。これがSOSとなり、その後、100万円以上の寄付が寄せられた。

信州猫日和・桜井志津枝代表:
お客さんからは「仕事がなくなった。今月出勤がなくなった」という話も。自分たちも生活が苦しい中で切り詰めて応援してくださっている。1円も無駄にしてはならないと強く思ってます

ひとまずピンチは脱したものの、数カ月先が見えない状況に変わりはない。

いっそう力を入れるのは、焼き菓子やグッズの通信販売だ。5周年記念のフォトブックとセットで、この日は九州の支援者などに配送した。

また、動画投稿サイトで夜のネコたちのライブ配信も始めた。見てもらうと広告収入が入る仕組みだ。ネコたちの豊かな表情をほぼ毎日、配信している。

スタッフ:
写真展を見るネコです。たぶん、反射してる光が不思議だったんだと思います。「こんなかわいい子がいるのよ、家族を待ってるのよ」という思いで発信しています

インスタグラムやツイッターもほぼ毎日、更新
インスタグラムやツイッターもほぼ毎日、更新

今できることは、通販や映像配信で来場できない人たちとつながることだ。

新規飼育数増も「やっぱり飼えない」を懸念

コロナ禍により、長野市の保健所も2020年の春以降、人が集まる譲渡会は一度も開いていない。感染が急拡大した1月からは見学の受け入れも中止し、譲渡はストップしている。

長野市動物愛護センター・笠原美絵獣医師:
コロナ禍で確実に譲渡の機会は減ってしまった。これから繁殖シーズンを迎え、子ネコがたくさん出てきます。この状況が続けばご覧いただく機会がないので、多く抱えてしまうようなことが起きるかも

一方、「おうち時間」が長くなり、ペットを飼う人が増えたという報告もある。長野市でも譲渡が少しずつ進み、2021年も殺処分はせずに済んだ。

ペットフードの協会によると、全国で2021年に新たに飼い始めた数は、犬が39万7000匹、ネコが48万9000匹。犬は前の年より少ないもののコロナ前より多く、ネコは前の年より3万匹近く増えた。

長野市動物愛護センター・笠原美絵獣医師:
通常の生活に戻ったとき「時間がなくて、やっぱり飼えない」と、ペットの引き取りの依頼や遺棄などが起きないかという心配はある

自然な姿で生活しているネコを見てほしい

以前は、夕方になると学校帰りの小学生や中学生も訪れていたハウスだが、今は閑散としている。それでも…。

常連客:
(ネコたちが)暴れまわっていると近づけないんですけど…。自分ができないことをハウスがやってくださっているので応援する

信州猫日和・桜井志津枝代表:
自然な姿で生活しているネコを見てもらえるように、家に遊びに行ったような施設をとハウスを立ち上げました。今のように気軽に触れ合ってもらえなくなると、ハンディのあるネコ、大人のネコの魅力は伝わりにくい。できるだけこの場所で頑張っていきたい

街なかで気軽に立ち寄れる保護猫ハウス。「無理のない範囲で力を貸してほしい」としている。

(長野放送)