発がん性などが指摘される化学物質・PFASについて、沖縄県北谷町に住む母親が血液中に含まれるPFAS濃度などの健康調査を求めて立ち上がった。

PFASの一種「PFOA」は6つの疾患と関係

その理由について、公開中の映画「ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男」を手がかりに考える。

(2月11日までの公開日は沖縄県のもの)
(2月11日までの公開日は沖縄県のもの)
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この映画は、20年ほど前に約7万人の血液検査を実施し、PFASの一種であるPFOAによる水汚染と健康被害との因果関係を証明し、真実に光をあてた弁護士の物語だ。

映画でも紹介されている7万人への血液検査で、PFOAは腎臓がんや精巣がんのほか、妊娠高血圧症など6つの疾患と関係があると結論づけられている。

大城良太アナウンサー:
映画では企業が汚染源で、沖縄ではアメリカ軍基地が汚染源と考えられているという点では違いはありますが、既視感があるように感じますね

健康被害との因果関係がわかってきて、世界では次々に規制が設けられてきたが、国内では2020年4月にようやく、PFOSとPFOA合わせて「1リットルあたり50ナノグラム」という水道水の暫定目標値が設けられた。

この値について京都大学の小泉昭夫名誉教授は、「妊婦や子どもへの影響を考えると10ナノグラム以下が望ましい」としているほか、「健康への影響を知るためには水の濃度より血液中の濃度を調べることが肝要」と指摘している。

血液検査や浄水器の設置求め…署名活動に応援の声

こうしたことから、PFASの血中濃度について調査してほしいと北谷町に住む母親が声をあげた。

2022年1月12日、仲宗根由美さんは北谷町に対して希望者への血液検査のほか、子どもが利用する施設への浄水器の設置を求めた。

仲宗根由美さん:
知らず知らずのうちに我が子の体に有害物質を取り入れてしまったかもしれないと知った時は、胸が張り裂けそうでした

5歳と3歳、そして9カ月、3人の子どもを育てる由美さん。2020年頃にこの問題を知るまで、PFASが検出されている北谷浄水場からの水をずっと飲んできたとして、子どもへの影響に不安を感じ、国が定めた値で問題ない事を証明するためにも血液検査をしてほしいと訴える。

仲宗根由美さん:
(PFASの血中濃度が)全国平均ってわかれば、国も浄水器なんて設置しなくて大丈夫だよって言えるはずだから、早くやって安心させてください。何もしないで待ってたり、声を上げなかったら誰も助けてくれないから、やるしかないと思って

本来なら国がやるべきこと。でも、それを待ってはいられない。由美さんは自分が住む町での調査の実現を目指し、友人だけでなく地域の公民館に声をかけ署名を集めた。

砂辺区自治会 照屋博一会長:
頑張ってください。子どもたちをはじめ多くの方が、安心して飲める飲料水を

友人・ヘップバーン 紗由里さん:
(署名を)書いた人も「ありがとう」と言ってくれて。この活動を支援してくれているんだなぁと感じました

別の公民館では、たまたま居合わせた住民から声をかけられることも。

住民:
偉いね~って

仲宗根由美さん:
ありがとうございます。名もなき母なんですけど

住民:
一番強いと思いますよ

こうして集めた413人分の署名とともに、北谷町に要望書を提出。血液検査について渡久地町長は…。

北谷町 渡久地町長:
住民の不安があるので県は協同して、国の責任において(血液検査を)やっていただくということを明確に要請していきたい

また、浄水器については「除去に有効な器材の調査を続けていく」と回答した。

子どもには健やかで幸せな生涯を送ってほしい

仲宗根由美さん:
町がこういう風に考えているんだっていうのがわかったので、やってよかったと本当に思いました

上の子どもたちを寝かしつけた後、由美さんは署名に賛同してくれた人たちへ報告するためパソコンに向かっていた。生後9カ月の次男はまだ寝てくれそうもない。

仲宗根由美さん:
深夜からやり始めて、また泣いて起されて

それでも諦めない理由は…。

仲宗根由美さん:
この命がとにかく健やかに、幸せに生涯を送ってほしい。いろんな問題がたくさんあって、嫌になることもいっぱいあって、それでも生まれてきてよかったって思うような社会にして。そういう社会を子どもたちにつなげていきたいです

(沖縄テレビ)

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