不登校や発達障害など、さまざまな悩みを抱えた人の居場所となっている富山県のコミュニティカフェ。訪れる人たちの相談にのるだけでなく、就労も後押しする取り組みが始まっている。

元講師と元教員の女性2人が運営

富山・砺波市にある「みやの森カフェ」。ここには、年齢も状況も異なるさまざまな人が訪れる。

7年前にオープンした「みやの森カフェ」
7年前にオープンした「みやの森カフェ」
この記事の画像(16枚)

訪問する人だけでなく、店に立つ人も日によってさまざま。この日は、10代から30代までの若者たちが調理や接客をしていた。彼ら自身、もともと不登校や発達障害などの悩みを抱え通うようになったカフェの常連。

ここは、学校や社会で生きづらさを感じている人たちが相談・交流できる居場所。そして、自信を取り戻すチャンスを得られる場所だ。

カフェは7年前にオープンした。運営しているのは2人の女性。フリースクールの講師だった加藤愛理子さんと、養護学校などで教員をしていた水野カオルさん。

加藤愛理子さん(奥) 水野カオルさん(手前)
加藤愛理子さん(奥) 水野カオルさん(手前)

今、特に力を入れて取り組んでいることがある。

「みやの森カフェ」運営する加藤愛理子さん:
結局、ここに来る人たちにとって何が必要かというと「就労」。居場所も必要だが、居場所でホッとできて仲間ができたときに、じゃあ次は?というと、やっぱり仕事をしたいという人がほとんど。じゃあ、働ける場をつくろうかと

最初の給料に涙が出た…踏み出す一歩

カフェで若者たちが「働く体験」ができるようにしたのも、その一環だった。

引きこもりやうつ病などを経験し、一般的な働き方に自信がもてない…。そうした人たちが社会に出る最初のステップになればと考えている。

社会で働く最初のステップとなる場を広げようと、2020年から高岡市の高齢者施設と連携し、施設内の清掃業務に働きたい人を派遣する取り組みが始まった。

県西部に住むタケシさん、20歳。高校生のころ不登校になり、2年前からカフェに通っている。このほど清掃の仕事に挑戦することになり、この日は先輩に付いて研修を受けていた。

タケシさん(20):
最初は不安で頭の中で難しく考えていて、俺にはできないだろうと思っていた。(今では)自信がついたのと、自分でもできるんだなってホッとした

県西部に住むタケシさん(20)
県西部に住むタケシさん(20)

メンバーのために作られたマニュアルをもとにトレーニングを重ね、清掃の正規のスタッフになると時給は900円に。また、体調が悪いときは休みやすい体制をとっている。

タケシさんの先輩・江畑美由紀さんも、もともとカフェの常連客。以前は看護師として病院に勤務していたが、心身ともに調子を崩し2年ほど家にこもっていたという。

タケシさんの働きを見守る先輩・江畑さんもカフェの常連客だった
タケシさんの働きを見守る先輩・江畑さんもカフェの常連客だった

そんなときにカフェで声をかけられ、この仕事を始めた。

江畑美由紀さん:
このまま働けなかったら、どうやって食べていこうかというところまで本当に追い詰められていた。何かきっかけを作ってくださったことはすごく大きな一歩だったので、感謝している。最初のお給料をもらった時に涙が出ました

看護師として働いていたが、心身ともに調子を崩し2年ほど家にこもっていた江畑美由紀さん
看護師として働いていたが、心身ともに調子を崩し2年ほど家にこもっていた江畑美由紀さん

「カフェはオアシス」自分を見つめ直し学ぶ場所

清掃の仕事を終えたタケシさんはカフェへ。昼食はカフェで過ごす仲間が作ってくれた。

「みやの森カフェ」運営する水野カオルさん:
タケシさんはここに来始めたばかりのころ、金縛りで毎日眠れないような人だった。毎日(カフェに)来るようになったら、今度はウキウキして眠れないって

タケシさん(20):
カフェはオアシス。自分と似たような人を見ると「こんな風に、人から見られているんだ」と学ぶことは多い

安心できる居場所だからこそ、余裕をもって自分を見つめ直し、自分のペースでできることを探せる。ここに集う人たちは、カフェで生まれたつながりを通して自立するきっかけを掴んでいる。

――カフェに集う人たちは、誰かのために自分ができることを探して取り組んでいる?

「みやの森カフェ」運営する加藤愛理子さん:
誰かの「ために」というと、ちょっと違う気もする。誰か「と」とか「一緒に」とか。今、誰かの「ために」何かするということで、苦しんでいる人がいっぱいいる。誰かのためにならないと自分はダメという感じ。誰かと「一緒に」楽しむことからスタートすると、結果として誰かのためになる。自分のためにも誰かのためにもなる、ということを実感してほしい

カフェに集まる若者の中には、お菓子づくりが得意なメンバーも多いということで、10月には近所の空き家にお菓子工房をつくったという。

カフェを拠点に自立支援を支える取り組みが、今後さらに広がっていくとみられる。

(富山テレビ)

富山テレビ
富山テレビ

富山の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。