新型コロナの影響を受けて中止や延期になっていた演劇の公演も、少しずつ再開されている。
コロナ禍で再び公演が制限されても、演劇の魅力を伝える方法はないだろうか…ユニークな表現方法を模索する静岡市出身の舞台俳優を取材した。
舞台俳優が企画したユニーク展示会
2021年10月、静岡市葵区で一風変わった展示会が開かれた。
落合健悟記者:
展示されている様々な作品は見て楽しむことができますが、スマートフォンを使うとさらに楽しめます
展示されているのは、脚本が書かれた原稿用紙やCDが積まれたスケートボード、それに着物などだ。
一見、共通点がないようにみえる展示物。
この展示会を企画したのは、静岡市出身の舞台俳優・大石憲さん(34)だ。
どんな展示会なのか聞いてみると…
舞台俳優・大石憲さん:
展示されている作品には、それぞれQRコードがついています。皆様のスマートフォンでQRコードをスキャンしていただくと、作品にまつわる僕の映像作品を見ることができます
(原稿用紙のQRコードをスキャンすると動画が)
朗読する大石さん:
私は思い切って何者かに声をかけてみる。「もし? あ、びっくりさせましたか。私はごくごく普通の人間です。ご安心ください」
鑑賞できるのは大石さんが出演する演劇「朗読者」だ。脚本も自分で考え、1人で制作した。大石さんが脚本を朗読するというものだ。
原稿用紙にも工夫が凝らされている。余白の書き込みだ。
大石さん:
普段、舞台でお見せするのは本番の様子だけですが、原稿用紙に書いてある書き込みは僕が本番前の稽古で考えたり、やっていることです。(書き込みをみて)僕は展示場にいないですが、僕がいた形跡をイメージできるような構造になっています
コロナ禍の影響受け…舞台俳優の苦悩
都内を拠点に活動している大石さん。
新型コロナの影響で舞台の中止が相次ぐなど、自分の演技を表現できる場が激減したという。
大石憲さん:
演劇は1カ月以上稽古して本番を迎えます。コツコツ稽古をしてきたけど公演ができなくなってしまうと、精神的にすり減ってしまったり、作品を世に出せなかったことでメンタルをやられてしまうこともありました
そんな状況の中、今だからこそできる作品を作ろうと、演技を画面上で楽しんでもらう形を考案した。
大石憲さん:
三密を避けて僕が(観客の前に)いなければ何かできるのではと思った時に、今回のような展示にいきつきました
「窮屈さからの解放」や「妄想デート」
作品には、大石さんが街の中で踊り、コロナ禍で外出ができない窮屈さからの解放をイメージしたものや、撮影まで大石さん1人で行うユニークなものもある。
(Q.こちらのQRコードはどんなものが見られるんですか?)
大石憲さん:
こちらは「妄想デート昼・夜」という作品です。川べりのベンチに2人で座っているという想定で、僕が話しかけます。僕とのデートをお楽しみくださいという感じですね
展示会に訪れた人は、新しい演劇やその表現の形に関心していた。
来場者:
コロナの時代だからこその、楽しみ方のひとつなのかな
別の来場者:
(俳優のみなさんは)早くコロナが落ち着き、野外でお客さんの前でやりたいと思う。その気持ちを我慢して、新しい方法を考えたのはすごいと思う
演劇文化を守るために
感染状況が落ち着きつつある新型コロナだが、現在も演劇の公演は入場者数が制限されているケースが多くある。
そうした中で、大石さんは演劇という文化を守るため、新しい表現方法を考え、試行錯誤を続けている。
舞台俳優・大石憲さん:
全く元通りになることは、もしかしたらないと思っています。元通りにならないと考えた時に、演劇や音楽などライブで何かを楽しむこと、同じ空間にいて一緒に何かを共有することは忘れてほしくないと思います
(テレビ静岡)