コロナの影響が長引くなか、子育て世帯や生活困窮者への10万円給付などを盛り込んだ政府の経済対策。
総額55兆7千億円と過去最大の規模だが、コロナで困窮しても支援の対象外になる人もいて、不公平感が高まっている。
年収100万円から200万円程度の「働く貧困層」は対象外に
福岡市に住む、仲藤涼花さん(25)。
仲藤さんは、年収100万円から200万円程度の低所得者、いわゆる「働く貧困層」だ。
(Q・年収はどれぐらい?)
仲藤涼花さん:
100万円ちょっとですかね。120万、130万行くか行かないかぐらいだと思います
舞台女優として活動する仲藤さんだが、コロナ以降は公演が激減。
舞台出演による収入は途絶えた。
仲藤涼花さん:
(舞台が)何もない期間に、詰め詰めで昼も夜もバイトをしたりするんですけど、だいたい働いているのが飲食店なので、まずお店が開けなくて、その分は何も出来ない状態でしたね。ただただ生活だけが困難になっていくというか、お金だけが減っていくというのが辛かったですね…。一番、精神的にきてましたね
岸田文雄首相:
経済的にお困りの世帯に対して、1世帯あたり10万円の現金給付を行います
11月19日に閣議決定した、政府の経済対策。
子育て世帯への現金給付とならんで盛り込まれた、生活困窮者への10万円の給付は対象が「住民税が非課税となっている世帯」に限られた。
仲藤さんのように、税金を納めながらも生活に困っている年収100万円から200万円程度の低所得者は、現金給付の「対象外」とされている。
仲藤涼花さん:
人として、(給付対象に)含まれなかった人たちは、見られてないのかな、もうどうでも良いと思われちゃってるのかなって。怒りも起こらないかな…。悲しいですね、ただただ
現金給付の対象に含まれなかったのは、給与所得者だけではない。
自営業で働く低所得者もいる。
“生活困窮者”の線引きの「曖昧」さ…感じる憤り
27歳の和田里奈さんは、知人が営むバーを昼の時間帯だけ間借りして、コーヒーと日本酒を提供している。
(Q・年収はどれぐらい?)
和田里奈さん:
だいたい200万円行くかな、行かないかな、ぐらいの狭間です
ひと月の売り上げは20万円程度で、テナント代などに消えるため、利益はほとんどない。
さらに、和田さんのような間借り営業者には、コロナによる休業補償がないのが現状だ。
和田里奈さん:
これ(間借り営業)だけで、もちろん生活は出来なくて、(光熱費などの)支払いが滞る月もあったりするので、ほかのアルバイトを掛け持ちして何とか生活している状況
和田さんは、政府が支援を約束した「生活困窮者」の線引きが極めて曖昧だと憤りを感じている。
和田里奈さん:
コロナで困ってるのって一緒なんですよ、働いてなくてお金がないわけじゃなくて、たくさん頑張って生活しようと思って働いているのに…。「大丈夫ですね、あなたは。もらえません」っていうのはね、「あれっ?」ていうのはありますよね。平等にまずはしてほしいなと思う
働く貧困層の「ジェンダー格差」深刻に
今回の現金給付をめぐっては、とにかく「不公平感」が指摘されている。
取材したのは2人の女性のケースだが、働く貧困層のなかで深刻なのが男女の違い、つまり「ジェンダーの格差」だ。
非正規労働者の平均給与は、男性が228万円。一方、非正規の女性平均は153万円と、男性より低い水準なのが現状だ。
さらに、年収100万円から200万円の層、ワーキングプアは、男性が全体の7%である一方で、女性は全体の23%と4分の1近くを占めている。
こうした弱い立場の女性たちが、現金給付の対象から外れてしまっているのだ。
今回の政府の給付金が緊急対策であるのなら、セーフティーネットから漏れた人が出てきた以上、今後、何らかの形でフォローする支援策が必要となるのではないか。
(テレビ西日本)