「ここはもう大阪」自民党が嘆いた維新の躍進 なぜ兵庫県で9人が当選できたのか? “大阪以外では弱い”を覆す
衆院選2021

「ここはもう大阪」自民党が嘆いた維新の躍進 なぜ兵庫県で9人が当選できたのか? “大阪以外では弱い”を覆す

関西テレビ
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地域

自民党から聞こえた「恨み節」と「嘆き節」

「あなた方のおかげで、維新は躍進しました。私も苦戦を強いられております」

衆院選の投開票日、兵庫県内の自民党ベテラン国会議員が私に掛けた言葉だ。彼は「圧勝」が予想されていたが、当選確実の一報は深夜にずれ込んだ。日本維新の会公認の新人が、想定外の追い上げを見せていたからである。

日本維新の会は、兵庫県内12小選挙区のうち9選挙区に候補を擁立。宝塚市や伊丹市などの兵庫6区では、兵庫県の小選挙区として初の勝利を収めた。

兵庫6区を制した日本維新の会・市村浩一郎衆院議員
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維新は比例区でも得票が激増し、兵庫県の維新候補は比例復活を含め9人全員が当選。

維新は長らく「大阪だけで強く、他の地域では弱い」と思われてきた。今回は違うと一番肌身で感じたのは、兵庫6区で敗れた自民候補の陣営だろう。選挙期間中、陣営からはこんな嘆き節も聞こえていた。

「この辺りはもう大阪。兵庫じゃない。維新王国の一つだ」

風を起こせばいい? 大阪以外で弱かった維新

兵庫県は大阪府の隣にあり、阪神地域や神戸市から大阪へ通勤する人は昔から多い。人も文化も交流が盛んで、兵庫県に維新が浸透するのも時間の問題だったのかもしれない。前回の参院選(2019年)では、兵庫選挙区で維新候補が公明・自民を上回るトップ当選。宝塚市長選(2021年4月)では、維新候補が敗れはしたものの1600票差にまで迫った。

では、兵庫県に維新が浸透したのは「大阪府に近いから」だけなのか。私はそれだけではないと思っている。

橋下徹大阪市長(当時)が国政政党・日本維新の会を設立した頃、私は担当記者だった。維新が地方進出に挑戦しだした2013年には、静岡市議選を取材したことがある。当時の維新は、「維新政治塾」の塾生を地縁のない土地にまで送り込み、有名人の街頭演説を何度もおこなって、「いかに風を起こすか」ばかり考えていたように感じた。静岡にも東国原英夫衆院議員(当時)を投入、駅前や児童公園で声を張り上げていた。

静岡市議選で演説する東国原氏。かつては「落下傘+有名人戦法」をとっていた(2013年)

結果、維新3候補のうち、現職市議と地元出身の維新塾生は当選。東国原氏が何度も応援演説をした大阪出身の新人は、下から2番目の惨敗だった。

大阪以外への進出は、「維新の看板」だけではなく「候補者本人」の要素も大きいのだ。

今や「本格政党」に…8年間で戦略も成熟

あれから8年、今回兵庫県で当選した維新候補9人に「地縁のないド新人」は少ない。県議会議員や衆院議員の経験者など、地元で名が通った候補が多かった。特に、自民候補に数千票まで肉薄した維新候補2人は、共にそういう候補だった。

それだけではなく、候補者たちは普段からの努力も惜しんでいなかった。

駅前での朝立ち、街頭での辻立ち、挨拶回り…。有名人の街頭演説に頼るのではなく、昔ながらの“ドブ板”に徹して毎日努力を続けてきた候補たちは、結果として多くの票を集めている。党本部にあたる日本維新の会が直接、普段の活動について指導することもあったという。

駅立ちに励んできた三木圭恵衆院議員

今回の選挙で7年ぶりに会った日本維新の会の選挙対策担当者は、こう話していた。

「自民が強い兵庫県では、小選挙区での勝利は厳しい。まずは比例復活でもいい。国会で実績や知名度を高めれば、次の選挙では必ず互角に戦える」

維新はもう“風頼み”の新興政党ではない。本格政党としての長期戦略を持つ、成熟した政党になったのだと実感した。

伏線は見えていた。知事選での“うねり”

とは言え、大阪府に近い兵庫県ではさらに大きな“うねり”が起きていた。

兵庫県知事選(2021年7月)では、大阪府財政課長、つまり吉村洋文知事の部下だった斎藤元彦知事が、自民と維新の推薦を受けて初当選している。斎藤知事の選挙応援には、維新は吉村知事などを投入した。吉村知事の人気ぶりは凄まじく、応援演説で黄色い声援が飛んでいた。新型コロナ対策で、「吉村さん頑張ってはる」という高評価は兵庫県でも聞かれた。

兵庫県知事選では吉村知事も応援

逆に井戸敏三前知事への声は厳しく、「大阪がうらやましい」と話す人さえいた。兵庫県庁で取材をしていると、私の井戸前知事の印象は違う。「コロナと災害の同時発生」を想定した避難所設置マニュアルをまとめたり、酒類の提供自粛を提唱したりと、後に国が取り入れるアイデアも多かったし、実行も早かった。

しかし、井戸前知事は部下の進言を聞き入れず、メディアでの“見せ方”を軽視し続けた。前年に導入した「公用車センチュリー」の問題など、余計な一言が火に油を注ぐ始末だった。対する吉村知事の場合、後で振り返れば成功した施策と言えるかどうかはともかく、「構想段階で発表する」というスタイルは、「仕事が早く見える」「府民に安心感・信頼感を与える」効果を生んだ。

井戸敏三 前兵庫県知事

斎藤知事は維新の公認候補ではなかったが、「吉村さんのような人」と考えて投票したという声は多く、維新に対する兵庫県民の目が変化しているのを感じた。

テレビが生んだ? 吉村知事の人気

兵庫県でもうねりを起こした「吉村人気」の源泉は何か。

「報道ランナー」もそうだが、新型コロナでは都道府県の知事を招く番組が増えた。コロナ対策の総責任者に直接質問する意義はとても大きいからだ。吉村知事は報道だけでなく、情報番組やバラエティ番組でも引っ張りだこだった。

他の知事は多忙を理由に、出演に難色を示すことが多かった。その結果、どの知事よりも吉村知事が視聴者に語り掛ける場面が多かった。彼は「お役所言葉」ではない自分自身の自然な言葉で語るので、視聴者にグイグイ響いたのではないかと考えている。

兵庫県でも吉村人気

ただ私の中で1つ、心の引っ掛かりがある。大阪は関西の中心なので、多くの記者が配置されている。大阪府庁・市役所には行政を専門に取材する記者が何人もいて、大阪のコロナ対策の動きは細やかに伝えることができる。

他府県は記者がグンと少なく、「目立った動きがあれば伝える」という程度になってしまう。大阪府は知事職・議会多数派を「維新」が占める、全国唯一の都道府県である。大阪府の施策を細かく伝えることは、すなわち維新の働きぶりを細かく伝えることでもある。

私は担当記者として、兵庫で注目すべきコロナ対策が実施された場面は何度も見てきたし、取材、報道もしてきたが、これが大阪発ならば、もっと扱いが大きくなっただろうと、内心忸怩たる思いを抱いたこともあった。

関西のテレビ局は、今まで通りでいいのだろうか。今、立ち止まって考えるべき時が来ているのかもしれない。

取材:鈴木祐輔(関西テレビ報道センター 神戸支局長)

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