9月17日告示・29日投開票との日程が正式に決まった自民党総裁選挙。去年9月の総裁選とは異なり、党員・党友投票も行われ全国の自民党員の意見が反映される、いわゆる「フルスペック」の総裁選の幕がいよいよ切って落とされた。

総裁選には菅総裁のほか、岸田前政調会長が正式に出馬を表明し、現職の菅総裁に岸田氏が挑むという構図を軸に展開されていくものと予想される。しかし、その対決構図の裏にいるキーパーソンが、歴代最長の5年以上の間、幹事長職を務める二階氏だ。

自民党トップの菅首相が二階幹事長の元にわざわざ出向く

二階幹事長との会談に臨む菅首相 
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8月25日午前、自民党本部の二階氏の元に菅総裁が足を運んだ。会談は菅総裁が申し入れ、コロナ対策や総裁選の日程について意見交換が交わされたものだったが、自民党のトップである菅総裁が、ナンバー2である二階氏の元を訪れて意見を求めた形となり「二階幹事長あっての菅総裁だ」ということが改めて印象づけられた会談となった。

二階幹事長「派閥でも菅再選支持」表明の一方 派内で異論も

その二階氏は、早くから「菅総裁を代える意義が見つからない」「続投を求める声が国民の間にも党内にも強いのではないか」などと、菅総裁の総裁選挙での再選を支持することを表明していた。さらに24日の会見では「二階派としても支持することは当然だ」と強い口調で断言した。22日の横浜市長選で、菅総裁の側近である小此木八郎氏が敗北し、「菅総裁が党の顔では選挙は戦えない」との声が若手や中堅から噴出していた最中での支持の表明は、実力者の二階氏が菅総裁に大きな恩を売る形となった。

二階氏の側近は「当然、菅総裁との会談を意識した発言で、これが二階流だ」と話し、会見前日の二階派の幹部会では「総裁選に向け幹事長の元で一致団結してやっていく」ことが確認されたという。

しかし、二階派内には、派閥全体の総意を得ずに二階氏が菅総裁支持を表明したことに不満の声も少なくない。26日に非公開の形で開かれた派閥の会合では「菅政権支持では地元の党友・党員に納得する説明ができない」「幹事長から派内にしっかり説明する場が必要」などの声も聞かれ、現時点では必ずしも「一枚岩」とは言えない状況だ。

「党役員任期を設けて権力集中と惰性を防ぐ」岸田氏の決意の裏に二階氏の影?

総裁選出馬会見を行う岸田氏 

26日、現職の菅総裁に挑む形の岸田氏は他の候補者に先んじて一番乗りで出馬会見を行った。コロナ対策について菅総裁のこれまでの取り組みに敬意を払いつつも「国民の納得感につながっていない」と、国民の声を吸い上げ切れていない現状を課題として挙げた。そして党内改革として、自民党の党役員について「1期1年、連続3期までとすることで権力の集中・惰性を防いでいく」とし、「国民の声を聞く政治」と「自民党の若返り」を打ち出した。

これについて岸田氏は「自民党のガバナンス改革を一番目の柱に掲げたもので特定の誰かを指すものではない」としているが、永田町では「現状の菅・二階体制に向けた挑戦だ」と広く受けとめられた。

岸田氏の会見について、派内のベテラン議員は裏側をこう明かす。「会見での打ち出しには派内の若い連中の意見が多く取り入られている。地元の選挙区で『今の自民党の体制では厳しい』という声が多いのだろう」

二階幹事長との会談後、取材に応じる岸田氏 

岸田氏は27日に二階幹事長のもとを訪れ出馬の意向を伝えた。この際、二階幹事長からは「ぜひ頑張ってくれ」と言われたということだが、党役員の任期制については話題に出なかったということだ。

岸田氏の出馬は、現状の党人事の体制に不満をもつ若手や中堅の受け皿になる可能性があるため、「党の若返り」は今後の総裁選の焦点になる打ち出しと言えそうだ。

9・29に向け約1カ月にわたる闘いがスタート 「国民のため」の総裁選となるか

総裁選にはこのほか、自民党の下村政調会長や高市前総務相が出馬の意向を示している。複数候補による総裁選になれば、「反・菅票」が分散するため、現職の菅総裁有利の闘いになるとの見方がある一方、9月17日の告示日までに下村氏・高市氏が20人の推薦人を集めることが出来るのかどうかというハードルも残っており、総裁選の行方は現時点でまだ不透明だ。

1年前の9月。総裁選を経て、党の総意の上で「国民のために働く内閣」を掲げ誕生した菅総裁。しかし1年後の今では、「国民の納得感が得られていない」と同じ党内から指摘されている現状がある。党内改革も必要だが、それ以上に、各候補者が今後、「国民のため」の政策について説明を尽くすことが、今何よりも求められている。

コロナ禍で実施される総裁選が、国民のために有意義なものとなることを期待したい。

(フジテレビ政治部 平河クラブ 亀岡晃伸)