愛媛・今治市大三島に7月、フランス料理店がオープンした。
しまなみ海道で初めてという本格フレンチ。東京から移住してきた夫婦の挑戦が始まっている。

豊かな自然に囲まれた古民家で本格フレンチ

しまなみ海道で最も大きな島・大三島。
豊かな自然に抱かれたこの地にたたずむ古民家をのぞくと…

古民家で本格フレンチ
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訪れた人:
大三島でこんなにおいしいフランス料理に出会えるなんて、夢にも思っていませんでした

島で捕れたイノシシ肉の煮込み料理に、瀬戸内の魚をメインに、まるでアート作品のような美しい一皿。

色とりどりの料理

テーブルを彩るのは、本格的なフレンチのコース料理だ。
7月1日にオープンした、しまなみ海道で初めてのフランス料理店「Filer(フィレール」)。
2020年、東京から移住してきた伊藤ご夫妻が営んでいる。

シェフ・伊藤博史さんと妻・安奈さん:

妻・安奈さん:
移住しようというのは、どちらかというと私の方が先に言い出して。何か新しいことを始めようというのは、都会よりかは田舎で、必要とされる環境でやりたいなというところで

シェフ・伊藤博史さん:
山より海がいいなって言ったんですよ。ふたりとも魚が好きなんです。迷いはなかったですね、即決でしたね

調理学校の「講師」から「シェフ」へ…52歳の挑戦

シェフの博史さんは、2020年3月までの31年間、辻調理師専門学校で「講師」として勤務。

辻調理師専門学校で「講師」を

本場・フランスのミシュランガイド三つ星店で学んだ経験もあるが、シェフとして自分の店を持つのは初めて。52歳での大きな挑戦だ。

妻・安奈さん:
本当、間取りとかそのままやってまして、梁とかもそのままなんです。のんびりくつろいでいただきたいという感覚が、想像がすごい膨らんで。2人の夢の形じゃないですけど、ここで迎えられてすごく良かった

「大三島を味わい尽くして」こだわりは地元農家の野菜

築90年の古民家を改装した「夢」の店の厨房では、シェフとしては新米の博史さんが腕を振るう。

シェフ・伊藤博史さん:
お客さんが来られたので、前菜の前にアミューズ的なもので、イノシシのパテを。イノシシって大三島でよく捕られるんですけど、イノシシもこうなるんだっていうのを感じてほしいですね。
これはイノシシの黒ビールで煮込んだ煮込み料理です。材料はタマネギだけですね。タマネギを茶色くなるまで炒めて、甘みのあるものと黒ビールの苦み。苦さと甘みを合わせた煮込み料理になります。最初はイノシシで勝負しようと思いまして

魚も地元で捕れたもので、ふっくらと焼きあげたら、ナスやピーマンなど島で育った旬の野菜を添えて。

一品一品に、「大三島をとことん味わい尽くしてもらいたい」というシェフのこだわりが詰まっている。

吉川自然農園・吉川努さん:
どうしたんですか?

シェフ・伊藤博史さん:
ちょっと新しいメニューを考えようかなと思って、豚肉とかにあう野菜

この日、伊藤シェフがやってきたのは、地元の農家さんの畑。

年間100種類もの野菜を育てる農家

いつでも旬のものを提供したいと、国内では珍しいバターナッツカボチャやサンマルツァーノという加熱用のトマトなど、年間なんと100種類もの野菜を、農薬や化学肥料を使わずに育てている。

縦長の形をしたトマト

吉川自然農園・吉川努さん:
今ちょうどナスの、ナスもちょうどイタリアンナスなんですけど、白ナスとか

シェフ・伊藤博史さん:
白ナスおいしかったです、すごく

吉川自然農園・吉川努さん:
日本のナスに比べると、皮は硬くて果肉もキュッキュした感じなんですけど、逆に加熱するとトロトロになるんですよ

見慣れない真っ白なナス

シェフ・伊藤博史さん:
採ってその日にいただけるので、それをすぐ使える。一番最高ですよね

地元の新鮮な食材をよりおいしく調理するため、野菜のプロからの貴重なアドバイス。伊藤シェフの挑戦を応援している。

シェフ・伊藤博史さん:
新しい野菜、ちょっとこういうのがほしいって言うと、「じゃあ来年挑戦してみます」とか言ってくれるので、すごくうれしいですね

地元のイノシシと魚…月替わりランチコース

ランチコースは月替わり。島で捕れたイノシシ肉のパテは、店の看板メニューだ。

イノシシ肉のパテ

吉川さんら地元農家が育てた夏野菜はパイで包んで、トマトとブラックオリーブ、2種類のソースをお好みで。

パイが包むのは夏野菜

メインはイノシシ肉を黒ビールで1時間半じっくり煮込んだフランスの郷土料理のアレンジで、地元でもかなり好評だとか。

イノシシを黒ビールで1時間半じっくり煮込んで

トマト風味のクスクスとバジルソースでいただく瀬戸内の魚料理は、添えられた野菜の濃い甘みも際立つ。

デザートには、パイナップルにバジルを効かせたシャーベットを合わせ、大人の味に仕上げている。

デザートは「大人味」に仕上げた

この日、イノシシ肉が苦手で、どうしても食べられなかったお客さんがいた。

シェフ・伊藤博史さん:
イノシシの臭さとかにおいじゃなくて、こういう調理法があるんだな、こういう味があるんだなっていうのを見てもらいたかったのもあるんですけど、やっぱりお客さんなので

大三島らしさを出しながら、お客さんに満足してもらうために。
初めての接客で日々課題も生まれるが、オープンから1カ月、手ごたえも感じている。

お客さん:
大三島ならではのお野菜だったり、お魚だったり、イノシシのお肉だったりをすごく感じることができて、すごく満足で

お客さん:
野菜がおいしい。近所にこんな本格的な料理が食べられる所ができてうれしいです

シェフ・伊藤博史さん:
みなさん、来るのにちょっとおしゃれしてますね、やっぱり。来るまでの時間、食べてる時の時間、帰ってからの「フランス料理食べてきたね」っていう余韻の時間っていうのを、みなさん楽しんでもらえてるのかな

大三島の食材を通して、島の魅力も伝えていきたいと話す2人の挑戦の舞台「フィレール」には、フランス語で「紡ぐ」という意味がある。

妻・安奈さん:
何かしら私たちが今までしてきた経験で島に貢献できるような、紡げるような存在になっていければなというので、店の名前を付けました。本当に始まったところなので、ここからどう何を紡いでいけるのか。家族で頑張っていきたいなと思います

(テレビ愛媛)