スーパーでの買い物はつい夢中になりがち。床に落ちていたお総菜の天ぷらを踏んで転倒し、ケガをした男性がスーパー側を訴える裁判が起こされていて、先日、注目の判決が言い渡された。
かぼちゃの天ぷらに足を滑らせ…安全管理義務違反?
事故が起きたのは2018年4月12日午後7時ごろ、30代の男性が帰宅途中、自宅近くのスーパー「サミットストア練馬春日町店」に立ち寄った。
この記事の画像(13枚)約20分後にレジに向かったのだが、目指していたレジが混んでいたので、空いているレジに向かったところ、レジ前の通路に縦13cm×横10cmのかぼちゃの天ぷらが落ちていて、足を滑らせ転倒。膝を打撲するけがをしたという。
このスーパーでは、お総菜は客が自らパックに入れてレジまで持って行き、お会計をするという仕組みになっていた。そして、落ちていたかぼちゃの天ぷらは、この男性ではなく他の客が会計前に落とした可能性が高いとされている。
転倒した男性は、「安全に買い物できるような環境を提供していない。安全管理義務違反だ」と主張して、スーパーを提訴。
一審判決は2020年12月に言い渡されていて、東京地裁は「客が自らパック詰めして運ぶ形式だと、総菜を床に落とすことは容易に想像できる」「店舗が混み合う時間にレジ周辺の安全確認を行った形跡はなく、安全管理を怠った」として、店側に約57万円の損害賠償を命じる判決を言い渡し、男性が勝訴した。
二審判決は8月4日に言い渡された。「天ぷらは短時間放置されただけで、レジ前に客が天ぷらを落とすことは通常、想定しがたい」「従業員が巡回するなど、安全確認のための特段の措置を講じる義務はない」として、判決は一審とは真逆の“男性が敗訴、スーパー側が勝訴”の判決を言い渡した。
「床滑り」での転倒事故は350件 野菜売り場でも足元に注意
榎並大二郎キャスター:
判例がないことだから、判断はなかなか難しそうですけれども、転倒してしまうということは結構あることなんですか?
フジテレビ社会部 平松秀敏 解説委員:
判決文の中でも、買い物中の転倒事故の傾向というのが明らかにされていて、消費者庁のデータによると、2009年9月~2016年10月末までの間に、買い物中の転倒事故が602件報告されていて、そのうち店内の床で滑った事故が350件。
フジテレビ社会部 平松秀敏 解説委員:
その内訳は、床の水ぬれによる転倒が123件、雨天でぬれた床で滑ったケースが101件、今回のように商品や野菜くずなどの落下物で転んだケースが67件だといいます。榎並さんは、ちょっと危険な経験などありますか?
榎並大二郎キャスター:
雨の日とか、店内はちょっとぬれている印象はありますね。履物によってもツルッといきそうな時はありますよ。
フジテレビ社会部 平松秀敏 解説委員:
消費者庁が注意喚起しているように、この床の水ぬれの転倒事故というのは本当に多い。調べてみたところ、床の水濡れの転倒事故でも裁判が起こされていました。転倒事故が起きたのは、神奈川県内のスーパーの野菜売り場。ここでは水気を含んだサニーレタスを売っていたんです。お客さんがサニーレタスをカゴに入れる度に水滴が床に落ちて、水たまりができてしまった。
フジテレビ社会部 平松秀敏 解説委員:
そこで50代後半の男性客が足を滑らせて転倒。この男性は肘を骨折して後遺障害まで残ってしまった。天ぷらと同じように、男性はスーパー側を提訴したということです。
フジテレビ社会部 平松秀敏 解説委員:
この判決も7月に言い渡されたばかり。「サニーレタスから垂れた水の清掃などを行っておらず、安全管理義務を怠った」ということで、約2184万円の損害賠償をスーパー側に命じた。男性に後遺障害が残っているので、そこに対する賠償額が大半を占めているということなんです。
事例ごとに異なる判決 スーパー経営者に聞いた転倒対策
フジテレビ社会部 平松秀敏 解説委員:
この転倒事故に関して、スーパーの現場に今回の裁判も含めて聞いてみました。都内のスーパーの経営者の方は、「そもそも天ぷらが落ちていて気づかないのはおかしい。不注意で転んだのを全部店側の責任にされるのは厳しい」とおっしゃっていた。
転倒対策についても聞いたのですが、「雨などの滑りやすいケースは頻繁に、野菜売り場での水気が多いようなケースはこまめに掃除をするといった店頭対策をとっています」とのことです。
榎並大二郎キャスター:
これは本当に裁判の判決も事例によって違うし、お店側の対応というのも大変ですね。
ジャーナリスト 柳澤秀夫氏:
お店もいろいろと気を使ってはいると思うんですけれど、私はお店の敷地に入る、あるいは店舗の中に一歩足を踏み入れれば、その空間はお店側の責任があるんじゃないかなと。利用する側としては思ってしまいますね。
フジテレビ社会部 平松秀敏 解説委員:
過失という面では、転んでしまった方の過失というのも認められるケースが非常に多いので、バランスとしてはなんとも言えないところですが…
ジャーナリスト 柳澤秀夫氏:
これは判例を重ねていって、一つの方向性が出てくるのを待つしかないんですかね。
フジテレビ社会部 平松秀敏 解説委員:
あとはケースバイケースになりますね。
(「イット!」8月16日放送分より)