新型コロナウイルス対策の切り札として、期待されるワクチン。医療従事者向けから始まったワクチン接種は、高齢者、一般向けへと順に行われていく予定だ。

接種への不安もある中、厚生労働省が公開している「新型コロナワクチンについてのQ&A」を一部抜粋し、基本的な情報や疑問を紹介する。この記事では、効果と安全性について伝える。
 

新型コロナワクチンの効果について

ーー日本で接種が進められている新型コロナワクチンにはどのような効果(発症予防、持続期間)がありますか。(6月15日追加)

日本で接種が行われている新型コロナワクチンは、いずれも、新型コロナウイルス感染症の発症を予防する高い効果があり、また、重症化を予防する効果が期待されています。効果の持続期間や、感染を予防する効果についても、時間の経過や接種者数の増加に伴い、研究が進んでいます。

日本では現在、ファイザー社、武田/モデルナ社、及びアストラゼネカ社のワクチンが薬事承認されており、うち、ファイザー社と武田/モデルナ社のワクチンが、予防接種法における接種の対象となっています。

いずれのワクチンも、薬事承認前に、海外で発症予防効果を確認するための臨床試験が実施されており、ファイザー社のワクチンでは約95%、武田/モデルナ社のワクチンでは約94%の発症予防効果が確認されています。

重症化予防効果については、薬事承認前に行われた臨床試験では症例数が十分ではなく解釈に注意が必要ですが、実施された臨床試験や、承認後に実際に接種された人の情報を集めた研究等から、これらのワクチンの重症化予防効果を示唆する結果が報告されており、効果が期待されています。


ーー年齢によって、ワクチンの効果や副反応に違いはありますか。

今回のワクチンは高齢者に対しても高い発症予防効果があります。一方、若年者に比べて高齢者の方が少し副反応が出にくいことが分かっています。

従来のワクチンでは、高齢者は若い方に比べてワクチンの効果が劣る場合がありました。しかし、日本で承認されたファイザー社のワクチンでは、大規模な治験やイスラエルの実社会での臨床研究において、高齢者に対しても9割以上の発症予防効果があることが報告されています。

一方、副反応については、接種部位の局所の副反応も、発熱や倦怠感、頭痛などの全身性の副反応も、若年者よりも高齢者の方が少し頻度が低いことが報告されています。


ーー持病の有無によって、ワクチンの効果や副反応に違いはありますか。

今回のワクチンは、基礎疾患をもっている方に対しても高い効果があることが分かっています。過去に重いアレルギー症状を経験されたことがある方は、接種会場で30分間様子をみることが大切です。

日本で承認されたファイザー社の新型コロナワクチンは、高血圧、糖尿病などの基礎疾患をもっている方に対しても、高い発症予防効果があることが分かっています。ただし、免疫抑制剤を内服されている方や重い免疫不全がある方は治験の対象とはなっておらず、他の方と同等の効果があるのか、はっきりとは分かっていません。

稀な副反応であるアナフィラキシーについては、過去にアナフィラキシーを含む重いアレルギー症状を引き起こしたことがある人でやや起こりやすい可能性があります。過去に重いアレルギー症状を引き起こしたことがある方は、ワクチン接種後30分程度は接種会場で様子をみることが大切です。アナフィラキシー以外の副反応については、治験において基礎疾患の有無による頻度の違いは報告されていません。


ーーワクチン接種後に新型コロナウイルスに感染することはありますか。

ワクチン接種後でも新型コロナウイルスに感染する場合はあります。また、ワクチンを接種して免疫がつくまでに1~2週間程度かかり、免疫がついても発症予防効果は100%ではありません。

ファイザー社の新型コロナワクチンは、通常、3週間の間隔で2回接種します。最も高い発症予防効果が得られるのは、2回目を接種してから7日程度経って以降です。体の中である程度の抗体ができるまでに1~2週間程度かかるため、1回目の接種後から2週間程度は、ワクチンを受けていない方と同じくらいの頻度で発症してしまうことが論文等でも報告されています。

また、治験においてワクチンを2回接種した場合の有効率は約95%と報告されており、100%の発症予防効果が得られるわけではありません。


ーー変異株の新型コロナウイルスにも効果はありますか。(6月15日追加)

一般論として、ウイルスは絶えず変異を起こしていくもので、小さな変異でワクチンの効果がなくなるというわけではありません。それぞれの変異株に対するワクチンの有効性がどのくらいあるのかについても、確認が進められています。

現在、変異株に対応したワクチンの開発や臨床試験も実施されています。世界各国で様々な変異株が出現していることを踏まえると、引き続き、ワクチンの有効性に関する情報を収集していく必要があります。

米国の製薬大手「ファイザー」のコロナワクチン
米国の製薬大手「ファイザー」のコロナワクチン
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新型コロナワクチンの安全性と副反応について

ーーこれまでに認められている副反応にはどのようなものがありますか。

ファイザー社のワクチンでは、接種後に注射した部分の痛み、疲労、頭痛、筋肉や関節の痛み、寒気、下痢、発熱等がみられることがあります。こうした症状の大部分は、接種後数日以内に回復しています。

日本への供給が計画されている海外のワクチン(アストラゼネカ社、モデルナ社、ノババックス社が開発中のワクチン)でも、ワクチン接種後に、ワクチン接種と因果関係がないものも含めて、接種部位の痛みや、頭痛・倦怠感・筋肉痛等の症状がみられたことが論文等に発表されています。(詳細は、副反応に関する審議会資料をご覧ください。)

また、海外で、まれな頻度でアナフィラキシー(急性のアレルギー反応)が発生したことが報告されています。もし、アナフィラキシーが起きたときには、接種会場や医療機関ですぐに治療を行うことになります。


ーーアナフィラキシーではどのような症状が出ますか。治療法はありますか。

薬や食物が身体に入ってから、短時間で起きることのあるアレルギー反応です。じんま疹などの皮膚症状、腹痛や嘔吐などの消化器症状、息苦しさなどの呼吸器症状が急におこります。血圧低下や意識レベルの低下(呼びかけに反応しない)を伴う場合を、アナフィラキシーショックと呼びます。

アナフィラキシーは特定のワクチンだけに起きるものではなく、様々な医薬品やワクチンの投与後に報告されています。例えば、インフルエンザワクチン接種後の副反応疑い報告では、因果関係があるかどうか分からないものも含め、1シーズンで、約20件のアナフィラキシーが報告されています。

予防接種後に、息苦しさなどの呼吸器症状がみられれば、接種会場や医療機関で、まず、アドレナリン(エピネフリン)という薬の注射を行います。そのあと、症状を軽くするために、気管支拡張薬等の吸入や抗ヒスタミン薬、ステロイド薬の点滴や内服なども行います。接種後にもしアナフィラキシーが起こっても、すぐに対応が可能なよう、予防接種の接種会場や医療機関では、医薬品などの準備をしています。

接種後に息苦しさなどがみられれば対処が行われる(画像はイメージ)
接種後に息苦しさなどがみられれば対処が行われる(画像はイメージ)

ーー過去にアレルギー反応やアナフィラキシーを起こしたことがあり、今回も起こすのではないかと心配なのですが、接種を受けても大丈夫でしょうか。

食物アレルギー、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、蕁麻疹、アレルギー体質などがあるといった理由だけで、接種を受けられないわけではありません。また、接種するワクチンの成分に関係のないものに対するアレルギーを持つ方も接種は可能です。ただし、これまでに、薬や食品など何らかの物質で、アナフィラキシーなどを含む、重いアレルギー反応を起こしたことがある方は、接種直後に調子が悪くなったときに速やかに対応ができるよう、接種後、通常より長く(30分間)、接種会場で待機していただきます。

過去にアレルギー反応やアナフィラキシーを起こしたことがある方は、予診票にご記入いただくとともに、原因の医薬品等やその時の状況をできるだけ詳しく医師にお伝えください。アレルギーについて医療機関にかかっている場合には、接種の可否について事前に相談してください。


ーーワクチンを受けた後に熱が出たら、どうすれば良いですか。

ワクチンによる発熱は接種後1~2日以内に起こることが多く、必要な場合は解熱鎮痛剤を服用いただくなどして、様子をみていただくことになります。このほか、ワクチン接種後に比較的起きやすい症状としては、頭痛、疲労、筋肉痛、悪寒(さむけ)、関節痛などがあります。

ワクチンによる発熱か、新型コロナウイルス感染症かを見分けるには、発熱以外に、咳や咽頭痛、味覚・嗅覚の消失、息切れ等の症状がないかどうかが、手がかりとなります。(ワクチンによる発熱では、通常、これらの症状はみられません。)ワクチンを受けた後、2日以上熱が続く場合や、症状が重い場合、ワクチンでは起こりにくい上記の症状がみられる場合には、医療機関等への受診や相談をご検討ください。


ーーワクチンを受けた後の発熱や痛みに対し、市販の解熱鎮痛薬を飲んでもよいですか。

ワクチンを受けた後の発熱や痛みに対し、市販の解熱鎮痛薬で対応いただくことも考えられますが、特に下記のような場合は、主治医や薬剤師にご相談ください。

・他のお薬を内服している場合や、病気治療中の場合
・激しい痛みや高熱など、症状が重い場合や、症状が長く続いている場合
・ワクチン接種後としては典型的でない症状がみられる場合


なお、ワクチンを受けた後、症状が出る前に、解熱鎮痛薬を予防的に繰り返し内服することについては、現在のところ推奨されていません。

市販薬の服用は主治医らに相談を(画像はイメージ)
市販薬の服用は主治医らに相談を(画像はイメージ)

ーーワクチン接種で新型コロナウイルスに感染することはありますか。

ワクチンを接種したことが原因で新型コロナウイルスに感染することはありません。

ファイザー社の新型コロナワクチンは、新型コロナウイルスの表面にある「スパイクタンパク質」のみの遺伝情報を用いたものであり、ウイルス全体の遺伝情報が含まれているわけではありません。このため、体の中で新型コロナウイルス全体が作られたり、新型コロナウイルスに感染することはありません。

その他

ーー新しい仕組みのワクチンということですが、どこが既存のワクチンと違うのですか。特に、ワクチンの遺伝情報を人体に投与するということで、将来の身体への異変や将来持つ予定の子供への影響を懸念しています。

これまで我が国において使用されていたワクチン(不活化ワクチン、組換えタンパクワクチン、ペプチドワクチン)はウイルスの一部のタンパクを人体に投与し、それに対して免疫が出来る仕組みでした。mRNA(メッセンジャーRNA)ワクチンでは、ウイルスのタンパク質をつくるもとになる情報の一部を注射します。人の身体の中で、この情報をもとに、ウイルスのタンパク質の一部がつくられ、それに対する抗体などができることで、ウイルスに対する免疫ができます。

mRNAは、数分から数日といった時間の経過とともに分解されていきます。また、mRNAは、人の遺伝情報(DNA)に組みこまれるものではありません。身体の中で、人の遺伝情報(DNA)からmRNAがつくられる仕組みがありますが、情報の流れは一方通行で、逆にmRNAからはDNAはつくられません。こうしたことから、mRNAを注射することで、その情報が長期に残ったり、精子や卵子の遺伝情報に取り込まれることはないと考えられています。

このような一般的な科学的な知見だけでなく、薬事承認に当たっては、動物試験や臨床試験の結果に基づいて安全性を評価し、審査を行っていきます。


ーー接種するワクチンは選べますか。

接種を受ける時期に供給されているワクチンを接種することになります。また、複数のワクチンが供給されている場合も、2回目の接種では、1回目に接種したワクチンを同じ種類のワクチンを接種する必要があります。

接種を受ける時期に供給されているワクチンを接種する
接種を受ける時期に供給されているワクチンを接種する

※厚生労働省のQ&Aは2021年6月15日現在の内容から抜粋。

新型コロナワクチンをめぐっては、過去に前例のないペースで開発・普及が進んでいることなどから、接種に不安を抱く声も一部でみられるが、こうした情報を是非参考にしてほしい。
 

・厚生労働省の新型コロナワクチンについてのQ&Aはこちら

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プライムオンライン編集部
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