夏の高校野球全国大会は8月7日、第2試合で高知代表の高知中央高校が初戦を迎え、滋賀の綾羽高校と対戦します。

高知中央の部員は3年生18人、2年生22人の計40人。1年生は1人もいません。前監督が香川の高校に行くことになり、野球部に入る予定だった中学3年生18人全員が、前監督と一緒にその高校へ進学したのです。

高山大和キャプテンは「びっくりしたのが一番。ずっと夢見た甲子園を目指すことは変わりがないので、もう一回みんなで頑張ろうとなった」と当時を振り返ります。

急きょチームを率いることになった山野司監督(57)は「知り合いの方から『高知中央の監督がいないので…』と聞いて、3月下旬には来ていました。私は一生懸命やるだけなので、何も深く考えずに選手と一緒に頑張ろうという気持ちで就任させていただきました」と語ります。

4カ月でチームを甲子園に導いた山野監督
4カ月でチームを甲子園に導いた山野監督
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4カ月で甲子園出場を決めた山野監督は大阪出身。高校時代は名門・PL学園の野球部でレギュラーとして春のセンバツに出場しています。清原選手・桑田投手の一学年下で、清原選手の世話係として洗濯なども担当していたといいます。

監督就任後、高知中央のユニホームを以前の赤のストライプからPL学園をほうふつとさせるデザインに新調。「知り合いの方にPL仕様のユニホームでどうだと(言われて)変えました。PLのことも思い出していただいたらうれしい」と母校愛をのぞかせます。

7月26日の県大会決勝では、王者・明徳義塾に3対2で勝利、2年ぶり2回目の甲子園出場を決めました。

試合後、山野監督は「明徳さんは強いのは分かっていたので、なんとか接戦に持ち込みたいと思っていた。結局、ヒットも5本なので(明徳エースの池崎投手を)打ち崩せていないと思うのですが、みんなが低い打球を打って、 1つのチャンスを生かしてくれた。練習の通りやってくれた」と選手への感謝を語りました。

決勝で一躍注目を浴びたのが2年生の堅田徠可(くうが)投手です。試合直前、右肘の違和感を訴えたエースに代わって急きょ先発が決まり、「やっときた。やってやろう」という気持ちでマウンドに立った堅田投手。それまでのストレートの最速記録は143キロでしたが、明徳打線を相手に150キロ台を連発しました。

圧巻だったのは2対2で迎えた8回表。フォアボールを与え、1アウト満塁の大ピンチから、三振、センターフライと抑え、無失点で切り抜けたのです。

「甲子園でもチームを勝たせるピッチングをしたい」と語る堅田投手
「甲子園でもチームを勝たせるピッチングをしたい」と語る堅田投手

最後まで投げ切った最速151キロの“シンデレラボーイ”は「自分が自信が持てる球で明徳打線を抑えられた。ものすごくうれしいです」と振り返ります。甲子園では「世代最速を目指す」と公言。「全国の強豪校を“まっすぐ”で押さえたい」と闘志を燃やしています。

監督が急きょ変わるという非常事態の中、チームをまとめてきた高山キャプテンは、甲子園出場を果たせたことについて「やってやるぞっていう気持ちが一番強かったんですけど、一から、基礎からやっていたのが出た。甲子園では最後まで諦めない姿勢を見せていきたい」と話しています。

紆余曲折がありながらも、もぎ取った夢の舞台への切符。“おらんくナイン”の熱い夏が始まります。