“逆ギレ”の背景に何が?

歴代総理の悩み事でもある、“発信スタイル”。

2月26日の菅首相のぶら下がり対応は一部で“逆ギレ”とも言われていたが…首相の取材対応の裏側と、歴代総理の発信の「革命と反動」に迫った。

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フジテレビ政治部・高田圭太デスク:
緊急事態宣言一部解除のぶら下がり、映像を見てみますと、菅首相の周りに記者が集まるいわゆる「ぶら下がり取材」なのですが、菅首相が本来行うはずだった記者会見ではなく、ぶら下がりならではのことが今回は背景にあったんです。


正式な記者会見の特徴は、

・30分~1時間
・内閣広報官が仕切り、質問を制御
・会見台に資料を準備できる


など。一方の「ぶら下がり」は

・数分で終了
・進行役なし
・明確なルールなし


というものだ。

フジテレビ政治部・高田圭太デスク:
30分~1時間とやや長めで、そこはちょっと首相側からすると大変なんですけれども、広報官という仕切り役がいて質問もある程度制御できる。そして会見台に資料も置けますので比較的準備はしやすい。これに対してぶら下がりというのは数分で打ち切れるお手軽なものではあるのですが、進行役がいません。そして明確なルールもないのです。

フジテレビ政治部・高田圭太デスク:
そのため2月26日は記者会見をやるはずだったのにぶら下がりになったということもあって、記者団も「そんなに簡単に終わらせられない」というのがあって、18分間・記者会見より多い29問も質問が相次いだんです。しかも“更問い”と言いまして、総理が曖昧な答えをしたときにもっと「どうなんですか」という突っ込みですよね。これが相次いだので、菅首相は苛立って「ですから言っているじゃないですか」というような場面があって、首相周辺によると「殺伐とした」状況が生まれてしまったのが今回なんです。

「どなたですか?」発言の狙いは…

さらに、菅首相は3日間連続のぶら下がり取材の中で、名乗らなかった記者に対して「どなたですか」という促しを連発。


記者(3月3日のぶら下がり):
専門家に聞く前に…

菅首相:
どなたですか?

記者:
目標は3月7日までだったと…

菅首相:
あの…どなたですか?

記者:
朝日新聞の…

フジテレビ政治部・高田圭太デスク:
ぶら下がりは記者会見とは違って、記者が名乗らないこともよくあるんですが。しかし今年に入りまして首相側が質問ごとに社名と名前を名乗るようにしましょう、というふうに要請したという経緯があったんですね。ただ、2度目の質問で「2度目なのでいいだろう」ということで名乗らない記者がいて「どなたですか」というふうに促したというのが真相なんです。

加藤綾子キャスター:
これは何か狙いはあるんでしょうか?

フジテレビ政治部・高田圭太デスク:
「ルールに従ってくれ」ということと同時に、社名と名前を名乗ることで責任を持って「あんまり変な質問をするな」というプレッシャーの意味も若干見て取れるかなと。

加藤綾子キャスター:
お互い馴れ合いにならなくて、記者も「聞いてやろう」という良い緊張感になるのかなと…

フジテレビ政治部・高田圭太デスク:
逆に首相にとってはちょっと想定外だった部分があるんじゃないかと思います。

歴代首相の取材スタイル

こういった取材対応での試行錯誤は、歴代首相らの中にも。

竹下登元首相や宇野宗佑元首相、森喜朗元首相の時代には、首相の周りに記者たちが集まり、歩きながらの取材がOK。

そんな中、

・歩き取材禁止
・1日2回まとめて取材対応、うち1回はカメラあり


という“取材革命”を起こしたのが、小泉純一郎元首相。洒落も交えた硬軟両様の取材対応で構造改革を推進していった。

明治大学・齋藤孝教授:
結構印象に残る言葉遣いが上手いんですよ。当時、けっこう新聞から小泉さんの日本語について取材を受けました。「聖域なき構造改革」とかスローガンになるようなキーフレーズを繰り返すのが上手かったですね。

フジテレビ政治部・高田圭太デスク:
当時小泉さんから対抗勢力扱いされていた野中さんが「小泉さんの言葉は五七調でわかりやすい」とボヤいていたのを思い出しましたけれど…

加藤綾子キャスター:
やっぱり分かりやすさとか印象に残るフレーズがあったんですね。

フジテレビ政治部・高田圭太デスク:
この流れで「カメラありの取材を1日2回にしよう」と言ったのが鳩山由紀夫元首相だったんです。ただ、普天間基地の移設などをめぐり朝と夜で違うことを言っちゃったりしまして、それで批判が噴出して退陣の一因になってしまったということも。

フジテレビ政治部・高田圭太デスク:
その流れで「頻繁に発信すればいいというわけではない」ということで菅直人元首相が東日本大震災をきっかけに定例ぶら下がりはやめましょうということで、その後、野田元首相、安倍元首相もそれを引き継いで定例ぶら下がりは廃止という流れで来ているんですけれども。

フジテレビ政治部・高田圭太デスク:
国民の側からすると「昔みたいに定例ぶら下がりがないなら歩きながら質問できるようにしてほしい」という記者もいて、国民に届くメッセージをどのような機会で確保するかが難しいんですね。

(「イット!」3月5日放送分より)