福井・池田町の山奥で、総事業費2500億円をかけた超巨大プロジェクトが進行中だ。それは、2004年の福井豪雨による甚大な被害を受け建設が始まった足羽川ダムの建設。完成後には決して見られない内部を福井の身近な疑問を解き明かし驚きを見出すローカル情報バラエティ番組「なんだー?ワンダー!」で潜入取材した。

ダムの材料は現地調達 岩盤を爆破して石を採取

ダム建設の出発点となるのは「原石山」と呼ばれるエリア。ダムには大量のコンクリートが必要となるが、その原料となる岩石は外から運ぶのではなく、現場の岩盤を爆破して採取しているのだ。

足羽川ダムの建設現場
足羽川ダムの建設現場
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国土交通省足羽川ダム工事事務所の技術副署長・松田幸喜さんによると「岩盤は硬いので、爆破させて崩して採取している」という。

岩盤を爆破させて材料を採取
岩盤を爆破させて材料を採取

取材した日は悪天候で爆破作業は行われなかったが、別日に撮影された映像では、爆破の衝撃が足元まで届くほどの迫力ある光景が記録されていた。

元々は山だった場所が、いまでは深い谷へと変貌している。

BEFORE
BEFORE
AFTER
AFTER

この爆破後に活躍するのが巨大タイヤを備えたダンプカーだ。その価格は1台9000万円。一般道を走行できるサイズではないため、分解しタイヤの空気を抜いた状態で現場に運び込み、その場で組み立てているという。

1台9000万円のダンプカー
1台9000万円のダンプカー

採取した岩石はこのダンプカーで「骨材製造プラント」へと運ばれる。

採掘した岩石が運ばれる骨材プラント
採掘した岩石が運ばれる骨材プラント

骨材とは、コンクリートの原料となる石や砂のことだ。骨材プラントでは、岩石を「砕く」「洗う」「ふり分ける」という3つの工程を繰り返し、3種類の骨材に仕上げていく。

骨材は3種類ある
骨材は3種類ある

骨材プラントのスペシャリスト・田中茂さん(株式会社ムツミ)によれば、ダム用の骨材は一般的なコンクリートに使われるものより粒が大きく、配合を変えることで強い水圧に耐えられる硬さに調整されているという。

平日は24時間、現場は止まらない

骨材プラントで完成した骨材は、ベルトコンベアを経由して「バッチャープラント」と呼ばれる施設に運ばれ、水とセメントと混ぜ合わせてコンクリートに仕上げられる。

骨材の流れ(バッチャープラントより)
骨材の流れ(バッチャープラントより)

コンクリートのスペシャリスト・亀井健吾さん(清水・大林特定建設工事共同企業体)によると、コンクリートの製造は原則として夜間に行われる。昼間にコンクリートの基盤を整え、夜に積み上げていく。工期の短縮のため、平日は24時間体制で続けられているのだ。

工期短縮のためダム建設は24時間体制
工期短縮のためダム建設は24時間体制

製造されたコンクリートを現場へ運ぶのが、ケーブルクレーンだ。最大18トンの重さに耐えられ、コンクリートだけでなく建設用の重機まで運ぶことができる。

重機も運搬できるケーブルクレーン
重機も運搬できるケーブルクレーン

操縦士はこの道40年のベテラン・中澤正幸さん(石井組)。最も気をはらっているのは「事故がないように」すること。そのため月に一度はクレーンに上り、ダム底から約130メートルの高さでワイヤー点検などを行っているという。

安全のため月に1度は地上130メートルの高さで点検する
安全のため月に1度は地上130メートルの高さで点検する

足羽川ダムの建設開始以来、ケーブルクレーンは無事故を貫いている。

全国わずか7基 ダム湖を作らない『流水型ダム』

足羽川ダムは、全国に3000基以上あるダムの中でわずか7基しかない「流水型ダム」の中でも、日本最大級の規模を誇る。

流水型ダムの特徴
流水型ダムの特徴

流水型ダムとは、洪水時以外はダム湖を作らず常に水が川を流れるようにするダムのこと。環境への負荷が小さいのが最大の特徴で、発電や農業用水の確保ではなく、洪水予防に特化したダムだ。

全国にも例がない導水トンネル
全国にも例がない導水トンネル

さらに、このダムには「導水トンネル」という全国でもほとんど例のない設備が備わっている。池田町内を流れる部子川と水海川、2つの川の水を洪水時に一カ所に集めて溜めるためのトンネルだ。4.7キロに及ぶこのトンネルの内部を、メディアに初めて公開してくれた。

メディア初公開!導水トンネル内部
メディア初公開!導水トンネル内部

足羽川ダムは当初、より下流に建設する計画だったが、家屋移転など地域への影響が大きいとして、上流側に変更された経緯がある。その結果、支流からの水も取り込めるよう「導水トンネル」を掘る必要が生じたのだ。

22年前の福井豪雨を教訓にダム建設がスタート

足羽川ダム建設のきっかけは、2004年7月に福井県を襲った記録的な集中豪雨。足羽川の堤防が決壊し、濁流が福井市街地へと流れ込んで甚大な被害をもたらした。

足羽川の決壊で市街地が濁流にのみ込まれた福井豪雨
足羽川の決壊で市街地が濁流にのみ込まれた福井豪雨

この災害を二度と繰り返さないため、2014年に着工し、2029年の完成を目指して作業が続いている。

国土交通省足羽川ダム工事事務所の責任者・松田さんは「このダムと下流河川の整備を合わせて大きな災害も防ぐことができる。1日も早い完成に向けて頑張っていきたい」と語る。

1日も早い完成に向け作業が進められている
1日も早い完成に向け作業が進められている

岩盤の爆破から始まり、骨材の製造、24時間体制のコンクリート打設、そして全国でも類を見ない導水トンネルの整備まで——足羽川ダムはあらゆる工程において、関わる人々の技術と思いが積み重なって築かれている。

完成後はここに立つことはできない
完成後はここに立つことはできない

完成後には見ることのできない建設現場の内側には、福井の未来を守ろうとする人たちの姿があった。