まもなく行楽シーズン。アクティビティをする機会も増えるが、どんな楽しみも安全があってこそだ。
スキー場は今シーズンの営業を終えたが、多くの人を楽しませたゲレンデは、昼夜問わず奮闘するスタッフによって支えられていた。
2026年4月に「スキージャム勝山」から「ジャム福井勝山マウンテンリゾート」へと名前を変え、新たなスタートを切ったスノーリゾートの最後のシーズンに密着。過酷な自然の中で安全を守り続ける人々の姿をカメラが追った。
夜明け前から始まる“戦い”
小雪がちらつく2月下旬。午前6時、まだ客の姿がないスキージャム勝山の駐車場では、除雪作業が大詰めを迎えていた。

約3400台分の広大な駐車場を除雪するため、作業は前夜から朝7時まで実に9時間にも及ぶ。
効率を追求するため、重機が3台が横一列に並んで除雪を進める。重機と重機の間隔は、わずか10センチ未満。まさに神業だ。
除雪作業が落ち着きを見せる午前6時45分、ウェブ関連や広報を担当する吉田さんが出社。
当日の降雪や積雪などゲレンデ状況を確認し、公式サイトに反映させる。
オープン前の1時間半ですべてのリフトを点検
空が明るくなり始めた午前7時。麓にはリフトスタッフが集合し、ミーティングで注意事項が共有される。
広大な敷地には全部で6基のリフトがある。
ミーティングが終わるとスタッフはスノーモービルでそれぞれの持ち場へと向かう。
今回、特別にリフトの裏側を見せてもらうことができた。天井裏に上り、リフトを押し出す装置のタイヤの空気圧やベルトの張りを、一つ一つ手で触れて確認していく。
この作業を、オープン時間の朝8時30分までの1時間半で、すべてのリフトで実施。過酷な自然環境では機械の不具合が起こりやすい。少しでも気になる点があれば再検査し、徹底した安全管理を行う。
スキーで滑走しながら全ゲレンデをチェック
同時刻帯、パトロール本部前ではパトロール隊がミーティングを行っていた。女性客が多いこのスキー場では、女性のパトロール隊員も多く活躍している。
リフトが動く前のため、彼らもスノーモービルで点検ポイントへ向かう。私有地なので免許は不要だが、その操縦は非常に難しいという。雪面の状態を見極めながら、慎重にコースを駆け上がっていく。
今度は中腹の詰所でスキーに履き替え、コース点検に出発。滑走しながら防護ネットや看板を設置し、ゲレンデ上の異物を取り除いていく。
圧雪車が通る幅ぎりぎりの場所は毎晩ネットを外し、毎朝再び設置する。この作業を、広大なゲレンデの全エリアで“マンパワー”で行うのだ。
春先の雪不足に備えた作業も
コースとリフトの安全が確認された朝8時30分、いよいよリフトの運行がスタート。
手付かずのゲレンデを目指し、客は一目散にリフトへ。
オープン後、リフトでは運転監視、乗客係、待機の3人1チームでローテーションを組む。山頂付近では時に気温がマイナス10度以下、風速は台風並みの20メートルを超えることもある。じっとしているだけでも体力が奪われる激務だ。
一方その頃、ゲレンデの片隅では「雪入れ作業」が行われていた。均一で安全なゲレンデを維持し、春先の雪不足に備えるための重要な作業だ。
除雪で活躍したホイールローダーが、今度は駐車場などの余分な雪を吸い上げてトラックに積み、ゲレンデへと運んでいく。車両を運転しながら雪を飛ばすノズルを操作…まさに超絶テクニックだ。
「お客さんの板が傷つかないよう、そして長くシーズンが続けれるように、こういった作業も必要」とスタッフは語る。
救助した人からの“言葉”が励みに…
パトロール隊はというと、けが人の搬送や落とし物の捜索など、トラブル対応に追われていた。心身ともに過酷な仕事だが、彼らには大きな心の支えがある。
それは、かつて救助した人々から届いた感謝の手紙だ。
また来シーズン、そちらのスキー場にお邪魔できたらいいなと思っています。本当に皆様に助けていただいたこと、感謝しております
綴られた言葉が、隊員たちの力になる。「嫌な思い出じゃなく笑い話にできれば、それはいいかなと思います」と隊員は静かに語る。
“最高のコンディション”を求め作業は続く
夕方4時30分。ゲレンデに影が伸び始めるこの時間帯は、レンタル品の返却ピークだ。
多い日には1000セットものスキーやスノーボードが返却され、店内は嵐のような忙しさに。翌日に備えた作業は夜遅くまで続く。「明日使う人に気持ちよく使ってもらいたい」その一心だ。
沖縄から来たという客は「レンタルして良かったことしかない。器具も良くて、匂いもなくて新品みたい」と笑みを見せた。
日が暮れた午後5時。客が誰もいなくなったゲレンデに、今度は圧雪車が現れる。
日中に削られデコボコになった雪面を、ブレードと呼ばれる前方の部分で削り、ミルという後方の装置で雪を攪拌(かくはん)し平らに圧雪していく。

圧雪車が通った後には美しい圧雪痕が残る。広大なゲレンデを、最大7台のチーム体制で夜通し作業する。

この道20年、神奈川から移住した片村誠さんは「上から下まできれいな直線でそろった一枚のバーンになったときは、上手くいったという実感がありますね」と話す。
そして翌朝。ゲレンデは最高のコンディションで客を迎えるのだ。
客が不安なくゲレンデでの一日を楽しむ。その裏側には、黙々と働き続けるスタッフたちの姿があった。
