「番組制作の裏側を知りたい」という視聴者の声が福井テレビに寄せられた。そこで、ローカル情報バラエティ番組「なんだー?ワンダー!」放送200回の節目に、番組制作の工程を紹介する。福井の身近な疑問「なんだー?」を解き明かし驚きいっぱいの「ワンダー!」を見出すこの番組は、一体どうやって作られているのか。
取材対象者と距離を縮めるには…“ジャズスタイル”!?
今回のディレクターに抜てきされたのは、4月に異動したばかりの横川調査員(33)。

密着するのは2021年の番組創設メンバーの一人、宮塚調査員(52)。海に潜り、山に登り、穴に入り…大自然にまつわるワンダーを数多く発掘してきたベテランで、横川調査員の年齢とほぼ同じ約30年間、この業界で働いてきた。
宮塚調査員の取材テーマは、月9ドラマ「サバ缶、宇宙へ行く」の放送に合わせて、そのバックグラウンドを探る「宇宙に行ったサバ缶ってなんだー?」(5月2日放送)。宇宙サバ缶を開発した高校や、そのレシピを受け継いでサバ缶を製造するメーカーへの取材。
その取材からVTR完成までの過程に、横川調査員が密着する。
ロケ当日、三脚を担いで現れた宮塚調査員。彼の取材スタイルは、いわゆる「ワンオペ」だ。カメラを自分で回しながら取材を進め、さらにドローンの操縦まで1人でこなす。横川調査員の密着取材の出演者としてカメラへの映り方にも気を配るため、この日は“1人4役”を担う。
本人はこのスタイルを「ジャズスタイル」と表現する。「その場の雰囲気で取材対象者にアドリブで合わせる…1人でやっているうちに向こうがカメラを気にしなくなってきて信頼関係も高まってくる」という。
宮塚調査員は自らハンドルを握り、サバ缶を製造する小浜市の「福井缶詰」に向かった。到着後は白いヘアキャップとマスクを着用し工場内へ。マイナス25度の冷凍庫に案内されると、カメラを回しながら「ノルウェーのサバを使う理由は何ですか」と問う宮塚調査員。
その後もカメラを構えたまま「なぜ?」を積み重ねていき、インタビューの間に入れる映像「インサート」撮影にも余念がない。こうして約2時間ほぼノンストップでカメラを回し続けた。
後日、宮塚調査員は再び小浜市に出向き、サバ缶を開発した若狭高校やサバ缶を販売する道の駅など4カ所で取材し、すべての撮影が終了した。
1人取材は「主観的になってしまう」VTRチェックは大人数で
撮影を終え、次に待ち受けるのが編集作業。宮塚調査員は、すべてのロケを終えた4月14日から編集を開始。
スタジオ収録は21日に設定されているので、1週間でVTRを完成させなければならない。しかも最初の締め切りはわずか2日後だ。
30分番組のうち、宮塚調査員が担当するVTRは約17分。「自分の構成に基づいて映像や音をつないで、コメントで説明が足りないところはナレーションを考える。映像が足りないときはイラストや写真を取り寄せて埋めていく」と説明してくれた。
スタジオ収録5日前には、制作局長らが参加し「プレビュー」と呼ばれる編集チェックが行われた。この段階では大まかな構成のまま宮塚調査員がナレーションを読み、分かりにくい点を複数の視点からあぶり出す。「若狭高校で本物の宇宙サバ缶を製造しているということが意外と分からない」といった指摘が入り、大幅な構成変更を加えることになった。
宮塚調査員はプレビューについて「1人で取材していると主観的になってしまう部分があるので、客観的に視聴者にとって何が大事かという考え方をチームで作るということは大切」と語る。
スタジオ収録の前日にはナレーションを収録。そこから“追い込み”で仕上げ作業に入る。
1フレームの単位の職人技で“聞きやすさ”を追求
こうしてVTRが完成した翌日、スタジオ収録が行われた。
ここから作業を引き継ぐのは倉橋デスク。
スタジオパートとVTRパートをつなげ、CM枠も入れて「一本化」という作業を終えると、データは東京の音響効果の専門家へ送られる。

音効とは「チリーン」「パーン」「トントン」といった効果音と、場面に合った音楽を選曲する仕事。「なんだー?ワンダー!」の音効を担当する古川さんは1996年から日本テレビの長寿番組「笑ってコラえて!」の音効も担当してきたベテランだ。
「音効は料理でいえば調味料的な役割。何もないと味気ないけど、やりすぎると味がよく分からなくなってしまう。やりすぎないようにして、“これなんだろう?”と耳で振り返ってもらえたら」と音効の仕事について語ってくれた。
古川さんが付けたBGMや効果音のデータは再び福井に戻り、専門スタジオでMA(マルチオーディオ)作業が行われる。ナレーション・コメント・BGMなど、あらゆる音のボリューム・音質・タイミングを最終調整する工程だ。
ナレーションのタイミングは、1秒間30フレームのうち数フレーム単位で行われる。MAを担当する小川さんは「1フレーム、2フレーム動かすだけでも最終的な聞こえ方に差が出る。聞きやすさ、分かりやすさにつながるので、おろそかにできない」と語る。
こうして番組が完成し迎えた放送当日。会社の自席でじっと画面を見つめる宮塚調査員。
オンエアを見届け「一瞬ほっとする」と表情を緩めた。「おもろいやろ、制作の仕事」と新米の横川調査員に問いかけると「そぅ…はい…大変ですね」と少々戸惑いを隠せない様子。
「テレビだからこそできることがある。だからこそ、福井の知られざる景色や人を変わらず伝えていきたい」そう語る宮塚調査員は、次なる「なんだー?」に迫るため、きょうもカメラを手に奔走する。
