コロナ禍で物流がストップしたことを機に、小麦などの材料も自前で育て、どんな時も商売が継続できる仕組みを作り、循環型の店づくりに挑戦している和菓子職人を取材した。

和菓子の材料は自前の畑から

福岡・宗像市の中心部にあるJR赤間駅。そのすぐそばにある人気の和菓子店『このわ』はある。15年ほど前にオープンし、季節の和菓子を中心に地域の人達に愛されている。

和菓子『このわ』
和菓子『このわ』
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「今は季節のものでしたら、この『青じそ餅』ですね」と夏の限定商品『青じそ餅』を薦めるのは、店主の中澤力さんだ。

爽やかなシソの香りと上品なこしあんの甘さが口の中に広がる『青じそ餅』。中澤さんは、「実は、この大葉は自分のところの畑で作って、そのまま朝採りして店頭に並べている」と話す。

約2千坪の中澤さんの畑では、大葉の他にも様々な和菓子の“材料”が作られていた。黒豆やモモ、サツマイモやモチキビなど。これらが全て、和菓子の材料になるのだという。

中澤さんによると、収穫した黒豆は、『黒豆大福』に、サツマイモは『芋ようかん』や『スイートポテト』に姿を変え、店に並ぶという。

「自分で育てて、それが和菓子になるっていうのが、やっぱり凄い嬉しいことですよね」と笑顔がこぼれる。

コロナ禍で物流滞り自給の道へ

中澤さんが自ら農作物を育て始めたのは、約4年前。コロナ禍で物流が滞り、それまでのように仕入れができなくなったことがきっかけだった。

「これはもう自分で作って、ある程度その材料を作って、和菓子として自分の手でできたものをショーケースに並べることを、これからはしていかなければいけないんじゃないか」と考えた中澤さん。

手探りで始めた農業だったが、徐々に作物の種類が増え、今では、地元のうどん店に提供すうるナスも作っている。更にうどん店の出汁ガラを中澤さんが引き取り、それをぼかし肥料にして畑にまた還元しているという。肥料も手作りなのだ。

和菓子を作るときに出る米ぬかや小豆の皮、卵の殻などにうどん店から引き取った魚の骨などを含む出汁ガラを混ぜて作った肥料は栄養満点。肥料全体の7割以上をこの手作り肥料で賄うため、原油高騰による肥料価格の上昇の影響も受けにくいという。

更に、畑にある倉庫の屋根の上にはソーラーパネルを設置。

作物を保管する保冷庫や水やりに使用する井戸のポンプ、移動用の電気自動車の電力などを賄っている。

「他の事象がどうなろうとも、きっちりと無理なく回るようなシステムを作っていく。そのためには、食とエネルギーを自分で自給する」。それが中澤さんのモットーなのだ。

「物流が止まっても何かしら…」

中澤さんが始めった新たな挑戦。それは、パンだ。

小麦を育て『パン作り』にも挑戦
小麦を育て『パン作り』にも挑戦

「うちの畑で穫とれた小麦粉で作ったパンです。ベーカリーではなく和菓子店ですが、パンも作られる。小麦を種から撒いて収穫して、製粉してパンにしたものです」と中澤さんは胸を張る。

パンをつくるために小麦も栽培
パンをつくるために小麦も栽培

独学でパン作りを学んだという中澤さん。失敗を繰り返し、何度も配合を変えながらようやく完成した自家製パンだが、なぜ、そこまで和菓子職人がパン作りに拘ったのか?

「物流が、もし止まった時でも、何かしら自分のところの畑でできたものを加工して、それをこのショーケースの中で売れるような状態にしたいっていうのが最終目標なんですよ。だからそれを実現するために絶対パンは必須アイテムだったんです。最終的に小さなインフラができた状態で、どんなことがあっても食べるものが作れるようなお店にしたいですね」。

中澤さんは、物価や包装資材が高騰する中、『マイお皿』という取り組みも行っていて、自宅から商品を入れる皿やタッパーを持参したお客には、和菓子1つあたり30円の値引き販売を行っている。中澤さんの循環型店づくりは、いつの間にかお客も関わりながら、周囲への広がりをみせている。

(テレビ西日本)

テレビ西日本
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