「93歳まで現役」を目標に掲げ、ボディビルダーとして鍛え続ける男性がいる。広島市内でスポーツジムを経営する金澤利翼さん。8月30日、「日本マスターズ選手権」の85歳以上の部で19回目の日本一に輝いた。
「しわが出ない」スーパーおじいちゃん
血管が浮き出た太い腕。硬く引き締まった背中に、ムキムキのたくましい脚。
2024年、当時88歳だったボディビルダーの金澤利翼さんを取材した際も、その肉体は年齢を感じさせなかった。
「88歳には見えない」と伝えると、「センキュー ベリーマッチョ」と笑顔。
筋肉は何歳になっても大きくなるのかと聞くと、「それを証明したいのが私なんです。90歳まで現役を貫こうと思っている」と話していた。
あれから2年――。
2026年の夏、90歳を迎えた金澤さんから「新たな目標を掲げた」という手紙が届き、広島市内のスポーツジムを訪ねた。
「いつも放送時間には『ライク!』を見てるから、元気な姿を喜んでいますよ」と、明るく出迎えてくれた金澤さん。新たな目標について尋ねると、こんな答えが返ってきた。
「いつまでたってもしわがガンガン出てこないから、ひょっとしたら、しわができないように努力して93歳までいけるかなと」
現役を続ける目標が「90歳」から「93歳」に延びていたのだ。
若さの秘訣は日本食とブルーベリー
金澤さんがボディビルダーの道に入ったのは20歳のとき。体を鍛えるために始めた筋トレがきっかけだった。この道、約70年。これまで18回にわたり日本一に輝いてきた。
90歳になっても、筋肉もトークもキレッキレ。懸垂を披露すると、カメラマンから思わず「すごいですね」と声が漏れた。
「おじいさんとしてはね。すごくないと世界に通じない。アンダースタンド? ガソリンスタンドじゃだめよ」
どんな時もユーモアを忘れない。
若さの秘訣として挙げるのが、50歳から続けている食生活だ。米とみそ汁、納豆を中心とした日本食。そして最近、1日1袋食べているというのがブルーベリー。袋から直接スプーンですくって、おいしそうに口に運ぶ。
「ん~!こんなものを食べて、私は体を作りよるんよ。考えられる?考えられんね」
ブルーベリーには、体内で発生する活性酸素の働きを抑える抗酸化物質が豊富に含まれ、肌の老化防止や美肌効果が期待できるそうだ。
毎日2時間の筋トレで筋肉を追い込む
金澤さんは鍛える部位を曜日ごとに変え、毎日2時間、トレーニングに励んでいる。
取材した日は「肩」のトレーニング。マシンを使って、鍛えたい筋肉を意識しながら負荷をかけていく。
「大脳からの指令を筋肉へもってくる。そういうことを“しれい”や」と、ダジャレも健在。年齢に関係なく、鍛えるときに大切なのは「その筋肉を求めて集中的に刺激を与え、疲労させて鍛える」ことだという。
上半身を逆三角形に見せるためには、広背筋のトレーニングが欠かせない。
「肩を広くしてVシェイプ。その前に広背筋を出さないといけない」
長年の鍛錬が90歳の肉体を支えている。さらに、新たな挑戦も見据えていた。
2026年、男女ペアの「ミックスドペア」に初めて出場する。きっかけは、金澤さんのジムに通う宮前亜寿香さんからの誘いだった。
「90歳で出ている人いませんよ。一緒に組んだら注目されるんじゃないですか?って言ったら、『じゃあやろうかな』と」
年の差は約40歳。金澤さんも乗り気だ。
「これも大記録ね。90歳でミックスドペアに出たのは誰もいない」
宮前さんは、ペアで並んだときにバランスの取れた体を見せられるよう、腕や脚をさらに鍛えるつもりだという。一方、金澤さんはいつテレビ取材が来てもいいように、「年中無休」で体を絞っている。
90歳でつかんだ19回目の日本一
ペアに挑む前に、まずは個人の大会を控えていた金澤さん。8月30日、広島市で開催された「日本マスターズ選手権」だ。
本番前、金澤さんはこう意気込みを語っていた。
「審査員が『あれ90歳の腕か!?』というくらい、大迫力を与える。それで『すごいのぉ』と思わせたら自動的に『金澤さん1位だ、1位だ、1位だ…』って、ならんかの?」
取材班が「なるかもしれない」と答えると、金澤さんは「それが勝つための作戦よ」と笑った。
大会当日。会場では、参加者から「YouTube見ています」と声をかけられたり、握手や撮影を求められたりと、人気者の金澤さん。
「金澤さんはもう、はるか遠い遠い存在」
「そんなことはない。競争相手だからお互いに頑張らないと」
周囲の選手にとっては憧れの存在だ。
出場したのは、最高年齢カテゴリーとなる85歳以上の部。最年長の金澤さんを含む7人がエントリーした。予選では、7人がステージに並んで基本の7ポーズを披露。筋肉の大きさやバランス、美しさを競う。
続く決勝審査では、好きな曲に合わせて1分間、自由にポージング。
「間違えないように。おじいさんだから間違えることがある」
ダイナミックな動きの中に、金澤さんが得意とする中腰のポーズも何度も取り入れた。
そして迎えた結果発表。
下位から順位が読み上げられ、「2位は……エントリーナンバー181番!」
この瞬間、優勝が決まった。
「優勝は183番、金澤利翼選手!」
「93歳まで現役」世界の大記録へ
90歳でつかんだ19回目の日本一。客席からの拍手に、金澤さんは力強いポーズで応えた。
大会終了後のインタビューでは、いつものダジャレも飛び出す。
「勝った。よかった~。勝った勝ったで、よ“かった~”」
「人間っていつまでも辛抱して頑張らないといけないことを90歳で学んだ。人生で負けたくないって気持ちでずっと続けてきたから、19回目の日本一になれた」
そして、次なる目標を改めて口にした。
「93歳まで現役を続けられたら、世界の大記録をいっぱい作りたい。世界、それで“せいかい”でしょ? 私の生き方としては」
筋肉も、挑戦する気持ちも、まだ衰えを知らない。90歳のスーパーおじいちゃんは、Vポーズとこの決め台詞で最後を飾った。
「センキュー ベリーマッチョ!」
(テレビ新広島)

