“魚離れ”が広くいわれるなか、福岡市にオープンした海鮮の直売所が人気を集めている。その人気の秘密を取材した。
祖父や父に続いて16歳で漁師に
博多湾で獲れたクルマエビが3尾で550円。旬のタチウオは1本100円。

「これはきのう、博多湾で捕れたマダコです。漁師なので、自分が獲ってきた博多湾の魚を並べている。スーパーに並んでいる魚は高いので、他の物を食べてしまう。魚を食べて好きになってもらいたい」と話すのは、直売所『ふくおか福産海』の半田貴大さんだ。

この『ふくおか福産海』は、福岡市中央区に2025年秋にオープンした漁師が運営する直売所なのだ。

人口160万人を超える大都市・福岡市。博多湾に面した伊崎漁港は、市のほぼ中心に位置している。

「博多湾の特徴として海底の質、泥がすごくいいんですよね。大小合わせると300くらいの川の水が入って来ていて、川から流れてくる砂や泥、川の水に含まれる栄養分が流れている海になる」と話す半田さん。

祖父や父に続いて16歳で漁師になった半田貴大さんは現在37歳。直売所を運営しながら博多湾へ漁に出ている。

一般的な流通ルートに疑問
直売所は、伊崎漁港から僅か100メートルの場所にある。新鮮な海鮮が安く手に入ると、市内を中心に週末は県外からも買い物客が訪れる。

「鮮度がいいし、お刺身も美味しい。おススメも教えてくれるし、食べたことがないものも食べてみようかな」と話す女性客や-

「生のタコが好きで、タコ刺しにしてよく食べています。子どもがよく、私が食べようと思った分を私より食べるくらい」と笑う男性客。買い物客からの評判も上々だ。

漁師は、獲れた魚介類を、漁協を通して市場に卸すのが一般的だ。

しかし半田さんは、その流通ルートに疑問を呈する。

「博多湾の魚を買いたいけれど、なかなか手に入り辛いと聞いた。大阪・東京とかに福岡の魚は、美味しいし需要があるから、向こうに送られている。それだったら自分で獲って来たものを直接、販売できる仕組みを作って、地産地消に繋がっていくかと思って」と直売所を開いた理由を話す。

福岡で獲れた魚介類を、より新鮮な状態で届けられる地元で食べて欲しい。福岡市内のホテルや飲食店にも半田さんは配達をしている。

『Restaurant Sola』(福岡市博多区)のオーナーシェフ・吉武広樹さんは「地のものを探していたんですけど、ずっと見つからなくて。『どうですか!』と言える食材なので。遠方からいらっしゃるお客さまも多いので、そういう方は、福岡に来て良かったと言ってもらえる、いいきっかけになる」と話す。

博多湾の“厄介者” 紫ウニの商品化
「いただきまーす」。もちろん半田さん家族の食卓には、海の幸がふんだんに並ぶ。

「これはパパが釣ってきたの」と子どもも大喜び。妻の未華さんも「楽しいのは、やっぱり美味しい魚が食べられること」と話す。

漁で家族を養う半田さんは「伊崎漁港に若い漁師たちが増えていくなかで、切れ目なく仕事ができる環境作りを今後、頑張っていこうと思う」と次の課題にも目を向けている。
伊崎漁港は、福岡県内でも若手が多く集まる漁港として知られている。

「父親が漁師をしていて、それに憧れて漁師になった」(最年少・21歳)。

「営業職とか事務、現場、転々として漁師に。メチャメチャ面白いですね。シーズンによって獲れるものも違うし、量も違うし、飽きない」(漁師6年目・31歳)。

若い漁師仲間たちが、この先も漁業を続けていけるよう半田さんは、新たな取り組みを始めた。「磯焼けしているところのウニは、身が入っていないんですよ。食べるものがないから。なので、それを食べ物があるところに移設してあげて」と話す半田さん。
博多湾で“厄介者”になっている紫ウニの商品化だ。

温暖化などで大量発生した紫ウニのエサはアオサ。アオサが蓄積した海底にウニを移設する。海底の砂にいる貝やエビを窒息させてしまうアオサをウニが食べることで、アオサは減り、ウニは身が入り商品になるという流れだ。

更に漁でウニが減ることで海藻が育ち、海が豊かになるという。

試食した記者も「甘いです。とろっとろで濃厚。ちょっと塩みもあって美味しい」と舌鼓を打つ。
3年の月日をかけて伊崎漁港独自のウニの商品化に取り組み、2026年3月、若手漁師9人で『博多ウニ伊崎塩水会』を立ち上げた。

獲れたての美味しさを味わえるようウニを海水に漬けているのが特徴だ。(※『塩水うに』の販売は12月から6月で今季は終了)

半田さんは「ウニ、魚全般、獲るだけだと資源は減っていく一方なので、資源を保護して増やして将来、子どもたちにも美味しい魚が届くようにという環境作りをみんなでやっていくことが目標です」と前を向いた。
(テレビ西日本)

