全国で相次ぐクマの出没。石川県能美市では、この1ヶ月あまりで約25件もの目撃情報が寄せられるなど、住民の不安が高まっている。そんな中、金沢市の商社が社員の安全を守るためにAIを活用した「クマ検知システム」を開発した。
相次ぐクマの目撃情報
全国的にクマの出没が社会問題となるなか、特に山間部に事業所を構える企業にとって、従業員の安全確保は喫緊の課題となっている。石川県能美市の丘陵地に社屋を構える三谷産業のグループ会社も、その一つだ。能美市では今年に入ってからもクマの出没が後を絶たず、5月からわずか1ヶ月あまりで約25件の目撃情報が市に寄せられていた。

こうした状況は、従業員やその家族に大きな不安をもたらす。そこで、親会社である三谷産業グループが立ち上がり、社員の安全を守ることを目的に、AIを活用したクマ検知システムの開発に着手。5月29日、ついにグループ会社の社屋への設置が完了した。なぜ一商社が、ここまでのシステム開発に踏み切ったのか。
「大騒ぎになった」10年前の恐怖が開発の原点
この社屋では、実は10年前に実際にクマが出没した経験がある。コンフィデンシャルサービス株式会社の柴原敦社長は、当時をこう振り返る。「当然その時には大騒ぎになりましたが、クマの撃退スプレーとかね、そういったものを会社として準備したりとか、社員の安心感につながるようなことをやってきました」
突然のクマの出現は、従業員に大きな衝撃と恐怖を与えた。この出来事をきっかけに、会社は撃退スプレーを常備するなど、できる限りの対策を講じてきた。しかし、いつまた現れるか分からない恐怖を根本的に解消するには至らなかった。社員が日々安心して通勤し、業務に集中できる環境をどう作るか。その問いに対する答えが、今回のシステム開発へとつながった。10年前の“大騒ぎ”は、単なる過去の出来事ではなく、社員の命と安全を守るための技術開発を促す原動力となったのだ。
AIが即時検知!光・音・スマホで知らせる
三谷産業グループが開発したクマ検知システムは、最新のAI技術を駆使したものだ。まず社員用の出入り口を見渡せる場所に2台のカメラを設置。このカメラが捉えた映像をAIがリアルタイムで分析し、クマなどの動物の姿を判断する。そして、クマと判断された場合、即座に事務所内に設置された警告灯が作動。光と音で周囲に危険を知らせる仕組みだ。これにより、屋内にいる従業員は即座に異常を察知し、安全な行動をとることができる。

さらに、危険通知は事務所内だけに留まらない。カメラでクマが検出されると手元のスマートフォンにも通知がくる。タップしてみるとリアルタイムの映像をみることもできる。従業員一人ひとりのスマートフォンに直接通知が届くため、屋外で作業している場合や、車での移動中でも、いち早く危険を知ることが可能に。
二次被害を防ぐ先進機能
このシステムの特筆すべき点は、単にクマを検知するだけではないことだ。出没したクマがその後どこへ向かったのか、その移動経路を追跡する機能も備わっている。クマが敷地内にとどまっているのか、あるいはどの方向に去っていったのかを把握できるため、従業員の避難誘導や、安全が確認されるまでの待機指示など、的確な判断を下すための重要な情報となる。

これにより、不用意に屋外に出てクマと遭遇してしまうといった二次被害のリスクを大幅に低減させることが期待される。危険を知らせるだけでなく、その後の安全確保までを一貫してサポートするこの先進的な機能は、従業員にとって何よりの「安心材料」となるだろう。
社員を守る技術を社会のために
開発を担当した三谷産業情報システム事業部の酒井繁高さんは、今後の展望について力強く語る。「まずは直近、当社のグループ会社でクマの被害が出やすそうなところに展開することはそうですし、北陸をはじめクマの被害で困っている、またはその危険性があるようなところに相談をさせていただきながら広めていければなと思います」
開発の第一歩は、自社の社員を守るためだった。しかし、その技術は今、より広い社会貢献への可能性を秘めている。今後はシステムの精度をさらに高め、7月には青森県にある別のグループ会社にも設置する予定だ。
(石川テレビ)

