熊本地震の発生翌日、鹿児島から巡視船「かんばい」が八代市の岸壁に接岸した。給水、入浴、充電——陸の支援が行き届きにくい場面で、海の力が被災者の日常を支えた。「涙ながらに『ありがとう』という声をもらった」。現場で活動した乗組員たちの言葉が、支援の重みを物語る。
鹿児島から熊本へ、翌日には岸壁へ
第10管区海上保安本部の拠点は、鹿児島市七ツ島の岸壁だ。巡視船「かんばい」は熊本地震発生の翌日、被災地支援のために八代市の岸壁へと向かった。
乗組員の中には、熊本出身の浜昇汰航海士補(21)もいた。地元がどのような状況にあるかもわからないまま、被災地へと赴くことになった。
「親の心配や身近な人の心配もしながら、八代がどういう状況かすぐには分からなかったので、やれることをしっかりやろうという意気込みでやった」

不安を抱えながらも、使命感をもって現場に立った。
570トンのタンクから、200トンの水を
かんばいが担った主な支援は、給水、入浴設備の提供、携帯電話などの充電設備の提供の3つだ。
船内には570トン分の給水タンクが備わっており、八代に滞在した1週間で約200トンの水を提供した。給水作業にあたった西方想一朗航海士補(22)はこう振り返る。
「こちらのポンプを回して自衛隊や一般の人に、ホースをつないで給水を行った。車がひっきりなしに来る状態で、ポンプは回しっぱなしの状態もあった。たくさん給水を求める人がいたので一人でも多く対応できるよう頑張った」

ライフラインが断たれた被災地において、飲料水の確保は生死に直結する問題だ。巡視船という大型の設備が持つ給水能力は、陸上の支援では補いきれない部分を確実に埋めた。
3〜4時間待っても「お湯が使える幸せを感じた」
かんばいには合計4カ所の浴室とシャワー室があり、滞在期間中に836人の住民が利用した。

熊本出身の松園隆誠主計士補(26)は、入浴支援を通じて、被災者にとってのお風呂の意味を深く実感することになった。
「長い人で3時間から4時間待つ人がいたが、それでも入浴後は『待った甲斐があった』とか『お湯が使える幸せを感じた』とか、涙ながらに『ありがとう』という声をもらった。この仕事を通じて、地元熊本で支援できたことをうれしく思う」

長時間並んでも入浴を求めた人々の姿は、それだけ日常の安らぎが失われていたことを示している。温かいお湯に浸かるという、ふだんは当たり前の行為が、被災者にとってどれほどの救いになるかを、現場の声が伝えている。
延べ10隻が出動、支援は続く
今回の熊本地震では、第10管区海上保安本部からこれまでに延べ10隻の巡視船が支援活動に出動している。今後の活動継続を見据え、船の調整も進められているという。
海という経路を活かした支援は、陸路が寸断された災害時にとって重要な選択肢となる。給水・入浴・充電という、生活の根幹を支えるサービスを届けた巡視船の活動は、被災地のコミュニティに確かな安心をもたらした。
【動画で見る▶「お湯が使える幸せ」涙ながらに感謝 10管の巡視船が熊本地震の被災地で給水・入浴支援 海からの支援活動語る】

