「スパイスがこう右側に引っ張られるんですけど、お味噌の甘みと香ばしさが左側に引っ張られて、奥深い味わい」——そう表現したのは、石川テレビが展開する食のキャンペーン『HUBEAT』のアンバサダー、彦摩呂さんだ。金沢から車で1時間ほど山へ向かった先にある、古民家を改装した隠れ家カフェ「神音(かのん)」のスパイスカレー。今回の「イトシメシ」は看板もなく、知る人ぞ知るこの店を紹介する。

隠れ家カフェ「神音」—スパイスカレーと自家焙煎コーヒーが、都会疲れを癒やす

この記事の画像(26枚)

向かったのは羽咋市の神子原地区。傾斜地に広がる山間の集落で、棚田も広がる美しい場所である。石川テレビの古賀アナは「美しい場所、いい場所ですよね」と語り、彦摩呂さんも「本当に素晴らしい、のどかで」とその風景に目を細めた。

この地区にある直売所「神子の里」では、地元で採れた新鮮な食材を販売している。彦摩呂さんはたらの芽を見つけるやいなや「天ぷらにしたらおいしいやつ」と反応し、コシアブラなど豊富な山菜に目を輝かせた。

そして、この直売所で特に注目を集めるのが「神子原米(みこはらまい)」である。古賀アナが「こちらの豊かな自然で育まれたおいしいお米なんです」と紹介するこの米は、なんとローマ教皇にも献上されたことがあり、一大ブームを巻き起こした。昼と夜の寒暖差や冷たい山の清水が甘みやうまみを引き出すという。

直売所ではこの神子原米を練り込んだソフトクリームも販売されており、2人はおやつタイムを楽しんだ。彦摩呂さんが一口食べると、「ミルクが濃厚で、なめらかですね。こう、ちょっと粘り気があるというか、もったりといい感じの」と唸った。神子原米の特性がソフトクリームにまで生かされていることに、思わず感嘆する彦摩呂さんだった。

看板なし、山の奥の「隠れ家」へ

直売所をあとにし、さらに山のほうへ進むと、いよいよ神音に到着する。

「ちょっとちょっと、看板も出てないし、まだ信じられないんですけど」——そう言う彦摩呂さんに、古賀アナが「隠れ家的な雰囲気もあるので」と笑いながら背中を押す。

恐る恐る扉を開けると、そこには想像を超えた空間が広がっていた。
「うわー、すごいすてきー。天井のこの梁見てこれ」と彦摩呂さんが声を上げるのも無理はない。古民家を丁寧に改装した店内には、重厚な木製の梁が通り、木のテーブルと椅子、本棚、キャンドルなどが並ぶ。歴史を感じさせながらも、温かみのある空間だ。

オーナー・武藤さんの夢と、20年の歩み

神音を営むのは、東京で働いていた武藤さんだ。「学生時代からコーヒー屋さんになるのが夢だったので、焙煎を生業としております」と語る武藤さんは、20年前に「田舎暮らしがしたい」と神子原地区にカフェをオープンした。

店内の後ろには焙煎機が鎮座しており、武藤さん自らが豆を選び、焙煎し、一杯一杯を丁寧に仕上げている。「ほんとだ、焙煎機がある後ろに」と彦摩呂さん。

さらに、豊かな自然環境の神子原地区にやってきたとき、武藤さんにはもう1つの夢が生まれた。「とても環境がいいところなので、ここに滞在していただくようにしたいなっていう思いがやっぱり当時からあったんです」。そしてそれが一昨年、ついに実現した。

カフェの隣に広がる「宿」と「サウナ」

カフェの隣には、農家の広々とした納屋を改装した宿が設けられた。窓から見える美しい緑は芸術品のようだ。彦摩呂さんも「めちゃくちゃいいじゃないですか」と声をあげた。

そして、さらに驚きの施設があった。
「うわー、サウナだここ。最高だー」——彦摩呂さんが叫んだのは、本格フィンランド式のアウトドアサウナだ。鳥のさえずりや木々のゆらぎ、山の香りを感じながら「整う」ことができる空間である。

彦摩呂さんと古賀アナは、目を閉じて自然の音だけに耳を傾けた。「自然の音だけがぐっと聞こえてきますよね」という古賀アナの言葉に、彦摩呂さんも「山のいい香りがする」と目を細める。都会の喧噪からは想像できないような、静かな時間がここには流れていた。

「右と左に引っ張られる」スパイスカレー

体と心をほぐした後は、いよいよ神音の「イトシメシ」との対面だ。神音で紹介する「イトシメシ」は、地元の食材を使ったスパイスカレー。隠し味に味噌を使った豆とひき肉のカレーと、カシューナッツチキンカレーの2種類が用意されており、お米はもちろん神子原米が使われている。日替わりで数量限定というこのカレーは、まさにここでしか味わえない一皿だ。

彦摩呂さんが豆とひき肉のカレーを一口食べると、先の名言が飛び出した。「スパイスがこう右側に引っ張られるんですけど、お味噌の甘みと香ばしさが左側に引っ張られて、奥深い味わい」。スパイスの刺激と、発酵食品である味噌のまろやかな甘みが拮抗し合い、複雑で豊かな味わいを生み出している様子が、この表現から鮮やかに伝わってくる。

「豆の食感がほくほく。豆の種類によってアルデンテのような形のこの食感がまた噛むカレーですね」という感想も印象的だ。豆ごとに異なる食感の変化が、食べる楽しさをさらに高めている。

そして彦摩呂さんが「このお米がまたおいしいね」と目を向けたのが、神子原米だ。武藤さんは「山間地のお米で、きれいな山水のみで育つんですが、南向きの斜面で日照がいいので、粒はちっちゃいんだけど味わいがすごくバランスが良い」。恵まれた自然条件が、小さな粒に凝縮されているということだ。

古賀アナが食べたのは、カシューナッツチキンカレー、「ちょっとエスニック風の香りが口いっぱいに広がって。お米のこのもちっとした食感と、カレーが相性すごくいいですよね」と笑顔を見せた。

学生時代からの夢が宿る、自家焙煎コーヒー

食後には、武藤さん自慢のコーヒーが振る舞われた。

「この程よいコーヒーの苦みもちょっと抑え気味なんだけれども、こんなに香りって反映するんですかね」と彦摩呂さんが語るように、このコーヒーは苦みよりも香りを前面に出したスタイルだ。

コーヒーが苦手な人でも「すっごいいい香り、味も濃い、ちょっと苦いかもとかって一瞬思っても、そのあとはすーって消えるような。あとは余韻だけ残って消えるようなコーヒーを目指してます」という言葉に、武藤さんのコーヒーへの哲学と愛情が凝縮されている。

彦摩呂さんはコーヒーを飲みながら、「なんかいろんなものをくっつけてきたやん、都会で。それでいろんな人間関係に悩んだり、もういろんなもの、もうくっついてんのよ。脂肪だけじゃないのよ。もうそれおろして外しや、みたいな。もうこれ飲んでほっこり、もう自分らしく帰りやーっていう。そういうアプローチがこう感じられる。」と語った。

食べ物も、場所も、コーヒーも——すべてが「余分なものを落とす」ためにある場所。それが神音なのかもしれない。武藤さんも笑いながらこう返した。「皆さんが落としていった毒を掃除するのは私大変なんです。」

金沢から車で1時間。棚田の広がる山間の集落、神子原米を使ったスパイスカレー、学生時代からの夢を実現した自家焙煎コーヒー、そして本格フィンランド式のアウトドアサウナ——神音は、日常の重さをおろしに行くための場所として、静かにそこに在り続けている。

『神音』
住所:石川県羽咋市菅池町カ54
営業日:金・土・日・月 午前11時半~午後5時半
電話:0767-26-1128
Instagram:kanonkaffee
※カレーは日替わりで数量限定のため、事前に電話で確認してからの訪問がオススメ。最新情報はお店のインスタグラムで確認を。

(石川テレビ)

石川テレビ
石川テレビ

石川の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。