不安定な中東情勢が長引く中、ほぼ輸入に頼っている肥料の高騰や資材不足などで、農業の現場にも影響が広がっている。こうした中、地域で廃棄される食材を使って肥料を作り、野菜づくりに挑戦する若手農家を取材した。

廃棄食材から肥料つくる循環型農業

「鮮度と味は直結するので、そのまま袋詰めされて、明日の朝に届く『野菜セット』になります」と語るのは、福岡市早良区の山間で農園を営む棚町弘一郎さん(35)。

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収穫した野菜を24時間以内に直接、自宅へ宅配する『たなまち農園』の代表を務めている。

農園が今、取り組んでいるのが、廃棄される食材から野菜の肥料を作る循環型農業だ。棚町さんが見せてくれたのは、自前で作っているという肥料。

「世界情勢がどういう形であっても地域にある、まだ埋もれているような資源を有効活用できたら」と語る棚町さん。目指すは、廃棄される食材から野菜の肥料を作る循環型農業だ。

24h宅配の『野菜セット』好評

“野菜セット”を届けている『たなまち農園』は、6~7品目の野菜が採れるように畑を作付けしている。全て露地栽培で有機農法。

こだわっているのは鮮度。野菜の味わいが大きく変わるからだ。

「ニンジン臭さみたいなのは、貯蔵で出ることがよくあります。うちの野菜は、『嫌味なく食べられる』と言って頂くことが多くて…」と棚町さんは笑顔を浮かべる。

宅配サービスを専門にしている『たなまち農園』では、サイズ感にもこだわっている。

『困ったら味噌汁に入れられる野菜』をテーマに、手頃なサイズ感で提供するなどのサービスが口コミで広がり、現在は、福岡市とその近郊の200世帯以上に利用者が広がっている。

世界情勢に左右されない農業目指す

今後も利用者の増加を期待する棚町さんだが、一方で心配しているのが、中東情勢の緊迫化による原油や輸入肥料の価格高騰だ。

「原油の輸入制限だったり資材の供給網が乱れたりしていること。野菜栽培に必要なものが入ってこないこと。肥料とか基本的に業界として輸入に頼っている部分がすごくあるので、危機的な状況が世界で起きると、如実にそれが反映されますね」。

農林水産省によると、主な化学肥料の原料である尿素やりん酸アンモニウム、塩化カリウムなどは、ほぼ全量を輸入に頼っていて、世界情勢により価格が大きく変動する。

2026月5月15日には、JA全農が6月から販売する肥料の価格を最大で14%ほどの値上げを発表。中東情勢の悪化が長引けば、今後さらに値上がりする可能性があるという。

「情勢が不安定になると、基本的に値上がりする。最初から国産肥料を調達していた農園としては、国産のものが競合して調達しづらくなる」と棚町さんも先行きを心配している。

栄養豊富『豆乳』活用

常に世界情勢に左右される国内の農業。この状況から脱却するため棚町さんが始めたのが輸入肥料に頼らない肥料作りだ。今、取り組んでいるのは、豆乳由来の肥料づくり。

豆乳には、野菜が育つために必要な栄養素であるタンパク質やアミノ酸が多く含まれているため、『たなまち農園』では、豆腐店で廃棄される予定の豆乳を回収し、微生物の力で培養させ新たに肥料として活用している。

2025年11月から始めた新たな肥料作り。今、育てている野菜の肥料にも使用している。「今季の野菜が、豆乳のエキスで育ってきたものなので、凄く手応えを感じています。

今までで、1番美味しいなと感じていて、ありきたりな野菜ですが」と棚町さんは胸を張る。

目指すは、循環率100パーセント。棚町さんは、世界情勢に左右されず、地域で完結する農業を目指している。棚町さんの挑戦に、農業関係者の注目が集まっている。

(テレビ西日本)

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