アメリカのトランプ大統領は5月8日、政府がこれまで非公開としてきたUFO(未確認飛行物体)関連の機密文書を公開した。公開からわずか12時間で世界中から3億4000万ものアクセスが殺到したとの情報もあり、異例の注目を集めている。
その一方で、この公開前にUFO関連の専門家や政府関係者の失踪・不審死が相次いでいるとの話題がSNSを中心に沸騰している。その中には、数々の政府の極秘プロジェクトに関与してきたとされ“UFO将軍”とも呼ばれた元米空軍少将も含まれていて、議会がこの問題について政府に説明を要求する事態にまで発展。トランプ大統領も「かなり深刻な事態」と発言するなど、全米の大きな関心事となっている。
“UFO将軍”の失踪
ニューメキシコ州ベルナリオ郡の保安官事務所は2月28日、米空軍退役少将のウィリアム・ニール・マッカスランド氏(68)が行方不明になったと発表し、シルバーアラート(高齢者が行方不明になった際に使用される警報)を出して、捜索の協力を呼びかけた。
保安官事務所によると、マッカスランド氏は2月27日午前10時頃、自宅を訪れた修理業者と接触したのが確認されている。しかしその後、午前11時10分ごろに、同居する夫人が診察の予約のため外出。正午すぎに帰宅すると、自宅には彼の携帯電話や眼鏡などが残されたまま、本人の姿だけが消えていたという。彼はハイキングブーツを履いて、財布と38口径リボルバーなどを持ち出したとみられている。捜査員が近隣700戸以上の聞き込みを行ったが、失踪から2カ月以上たった今も発見には至っていない。
マッカスランド氏の失踪に注目が集まる理由は主に2つある。
1つ目は、彼が長年にわたり米空軍高官として科学技術部門を率い、機密性の高い事案に多く関与してきた人物であることだ。マッカスランド氏は、米空軍士官学校やMIT(マサチューセッツ工科大学)、ハーバード大学ケネディ行政大学院で学位を取得した宇宙工学の技術者としても知られ、国防総省のGPSや宇宙配備型レーザー計画にも携わってきた。
さらに、1947年に“墜落したUFOが米軍によって回収された”として有名になった「ロズウェル事件」で、その残骸を分析・保管したと噂されるライト・パターソン空軍基地で研究所責任者も務めていた。このため連邦議会議員などからは「UFO将軍」と呼ばれてきた。こうした機密情報に極めて近い人物の失踪が「UFO」などのキーワードと結びつき、さまざまな臆測が広がっている。
トランプ政権の機密情報公開との関係
2つ目の理由は、マッカスランド氏の失踪のタイミングだ。
彼が消えたのは、トランプ大統領がヘグセス国防長官に対し「UFOや宇宙人に関連する政府文書の公開」を指示したと発表した、その週だったのだ。
マッカスランド氏については、「頭がぼんやりする」と直前に漏らしていたとの情報もあるが、知人は「健康であった」と証言していて、当局や妻も認知機能に問題はなかったとしている。そのため、彼の失踪は、外国勢力の関与があったのではないかといった声や、政府が未公開の情報を公開する前に「口封じ」をしたのではないかといった見方も出ている。さらにSNS上では、マッカスランド氏本人のものとされる「同僚の将軍が核物質の取引に関与したことを理由に殺害された」といった投稿が拡散され、臆測が臆測を呼び続けている。
UFO研究者らの失踪・不審死が相次ぐ?
この流れをさらに加速させたのは「米国の核・宇宙研究プログラムに関与していた科学者や専門家が少なくとも11人死亡または行方不明となった」という匿名アカウントなどにより拡散されたネット上の未確認情報だった。その対象にはマッカスランド氏を含む米空軍、NASA(航空宇宙局)、核兵器開発にも関わるロスアラモス国立研究所の職員も含まれているとされている。
この事態に、共和党の元下院議員、マージョリー・テイラー・グリーン氏はSNSで「FBIはつい先ほど『調査』を開始したばかりだ」と対応の遅さに不満を示したほか、連邦議会の下院監視委員会も本格的な調査を開始することを決めた。
コマー委員長はアメリカメディアなどの取材に、当初は「荒唐無稽な陰謀論と思っていた」としながらも「現在は国家安全保障上の懸念事項である可能性がある」と方針を転換。中国、北朝鮮、イランやロシアなどの敵対国が核開発計画に関心を寄せているとして、「(この事案に)関与している可能性がある」と指摘し、FBI、エネルギー省、NASA、国防総省に対し説明を求める書簡を送った。
また、バーリソン委員も、マッカスランド氏の失踪について「携帯電話も、財布も、鍵も、何も持たずに家の玄関を出ていく人が、一体どれほどいるだろうか?」と述べ「不審な点はある」と強調した。
こうした動きを受けて、FBIやNASAも、相次ぐ失踪・死亡に関する情報収集を行なっていることを認めた。
トランプ大統領「かなり深刻な事態」
ホワイトハウスの会見でも、この拡大した“大量失踪・不審死疑惑”が取り上げられ始め、トランプ大統領も記者団に対し「かなり深刻な事態だ」と述べ、調査を行う考えを示した。
一方で、広がる臆測に対するファクトチェックも進んでいて、SNS上で広がった情報を否定する動きも出ている。
例えば、失踪・不審死とされる11人については、「彼らのほぼ全員が一緒に働いていた」という情報については、実際は彗星や小惑星の専門家もいれば、電気技師、事務アシスタント、建設現場監督だった人など多岐に渡っているため、同僚だったという説は否定される形となってきている。また、死因についても、不審死とされた人物もあれば、自殺と断定されたケースもあり、真実と誤解が入り交じった形で情報が広がっていることがわかった。
失踪したマッカスランド氏の妻、スーザン・マッカスランド・ウィルカーソン氏はSNSで声明を発表し「誤った情報の一部を正したい」とした。その中で彼女は、夫について「空軍に在籍していた際、極秘のプログラムや情報にアクセスできたことは事実」としつつも、「彼は約13年前に空軍を退役しており、彼から、かなり古い機密情報を引き出すために誘拐されたというのは、極めてあり得ない話」と指摘。「ライト・パターソン基地に保管されているロズウェル墜落事故のETの遺体や残骸について、特別な知識など持っていない」と巷の憶測を否定した。
しかし一方で、声明の締めくくりでは「現時点では彼の行方は全く不明だが、おそらく最も妥当な仮説は、宇宙人が彼を母船へテレポートさせたというものだろう。しかし、サンディア山脈上空に(UFOの)母船が浮遊しているという目撃情報は報告されていない」として、ユーモアを交えながら、全米からのお見舞いなどに感謝を綴っている。
(フジテレビ報道局 中西孝介)
