2025年は、昭和100年にあたり、日本とアメリカが激しい戦争を繰り広げた第二次世界大戦の終結から80年の節目の年でもある。日米関係はトランプ大統領の誕生により、今後に懸念の声も広がってはいるが、新型コロナウイルスのまん延によって、一時期は激減していた両国の留学生の交流も復活しつつある。

在米日本大使館と大学による首都ワシントンでの初の成人式が開催
在米日本大使館と大学による首都ワシントンでの初の成人式が開催
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こうした中で、首都ワシントンで日本大使館と大学が企画する、アメリカの大学生らを対象にした、初めての成人式が開催された。新成人の若者達は、口々に日米関係の架け橋になりたいと将来の夢を語った。

在米大使館が「成人式」を初開催

1月18日、首都ワシントンの旧日本大使公邸に集まったのは、着物やスーツ、ドレスなどで着飾った約80人の大学生だ。ワシントンにある4校の大学に在学する日本人や、日本語を学ぶアメリカ人を在米日本大使館が招待しての初めての成人式が開催された。

約80人の大学生が着物やドレスに着飾り出席した
約80人の大学生が着物やドレスに着飾り出席した

「みなさん、ご成人、おめでとうございます!」

大使館の代表として出席した広報・文化班の三宅公使は和装姿で登場し、新成人に日本語と英語でお祝いの言葉を贈った。国内外の情勢が大きな変革の時を迎えている点を指摘し、「未来は皆さんの肩にかかっています」と強調。「皆さんには日米関係の強化に重要な役割を果たしていただきたい」として、日米の架け橋となる人材を目指して欲しいと呼びかけた。

和装で出席した三宅史人公使
和装で出席した三宅史人公使

また、招待された4つの大学で日本語を教える教授陣もそれぞれ挨拶し、「時間の大切さ」や「責任を持つこと」の重要性などを語って、この日を迎えた新成人に祝意を示していた。

新成人の訴え 「日米の架け橋になりたい」

一方、答辞を述べた、アメリカン大学のジョシュア・タタールさんは、家族や教師、友人に感謝の気持ちを示した上で、日米のつながりをさらに強めていきたいと話した。

「日本と米国の繋がりをさらに深めたい」とジョシュア・タタールさんは語った
「日本と米国の繋がりをさらに深めたい」とジョシュア・タタールさんは語った

「私が初めて日本に興味を持ったのは12歳の時でした。ニューヨークで育った私は、日本語を学ぶ機会があり、それがきっかけで日本の文化や歴史に魅了されるようになりました。将来は、国際関係法やグローバルコミュニケーションの分野で働き、文化の壁を取り払い、日本とアメリカのつながりをさらに深めることに貢献したいと考えています」

日本語を教える教員や関係者も大勢駆けつけた
日本語を教える教員や関係者も大勢駆けつけた

また、ジョージ・タウン大学のアミナ・マリクさんは、流ちょうな日本語で挨拶した。日本語に興味を持ったきっかけは、高校時代に芥川賞作家の小川洋子さんの『密やかな結晶』を英文で読み、その文章の美しさに感動し、「日本語の原作はもっと綺麗ではないか」と思ったことからだと話す。

アミナ・マリクさんは「将来は日米の経済に関する仕事をしたい」と話した
アミナ・マリクさんは「将来は日米の経済に関する仕事をしたい」と話した

大学で国際政治経済を学ぶ彼女は「日米の経済に関する仕事をしたいと思う。日米間の協力を維持するだけでなく、強化する仕事をしたい。仕事以外でも、日本の社会と日本語を勉強したい」と将来の夢を語っていた。

企画した大学教授「日本の伝統的な成人式を経験して欲しかった」

今回の成人式の開催は、アメリカン大学で日本語を教えるケン・ナイト教授が山田駐米大使に提案し、日本語教育への熱意に押されて開催を決めたという。ナイト氏にその思いを聞いた。

成人式を企画したアメリカン大学のケン・ナイト教授
成人式を企画したアメリカン大学のケン・ナイト教授

――ワシントンで初の成人式を開催されましたが、発案者として今の思いを教えてください。
「アメリカではなかなか成人になることを祝うイベントがなく、出来れば学生に日本の伝統的な成人式という行事を経験して欲しいと思いました。開催できて本当に嬉しいです」

――いつから構想を練っていた?
「実は、2020年にアメリカン大学で一度成人式を行っているのですが、新型コロナウイルスで中止となっていました。その後、ずっと再開したいと思っていましたが、なかなか出来なかったので、山田駐米大使に提案させて頂いて、それがきっかけとなりました」

――学生の反応は?
「凄くみんな嬉しそうです。学生の嬉しそうな顔を見て、教員として幸せです」

学生には桜のピンバッジもプレゼントされた
学生には桜のピンバッジもプレゼントされた

ナイト教授は2026年以降も成人式の開催を続けて行きたい考えを示し、さらに近郊の地域の学生も巻き込めればと意欲を示していた。

会場では大使館員と学生が交流する姿も
会場では大使館員と学生が交流する姿も

会場には、日本への留学や、日本政府のJET(外国青年招致事業)プログラムの資料も置かれ、大使館関係者は日本を直接訪れて、さらなる人材交流や勉強の機会にもなればと話していた。

会場には日本留学やJETプログラムの資料も置かれた
会場には日本留学やJETプログラムの資料も置かれた

トランプ大統領が掲げる「アメリカ第一主義」によって、政治的にはアメリカ国内で内向きの志向が強まっている。そうした中で、日本の「和の心」などが成人式を通じて日米双方の若者に浸透し、文化交流や、日米の絆が深まっていくことに今後も期待していきたい。
(FNNワシントン支局 中西孝介)

中西孝介
中西孝介

FNNワシントン特派員
1984年静岡県生まれ。2010年から政治部で首相官邸、自民党、公明党などを担当。
清和政策研究会(安倍派)の担当を長く務め、FNN選挙本部事務局も担当。2016年~19年に与党担当キャップ。
政治取材は10年以上。東日本大震災の現地取材も行う。
2019年から「Live News days」「イット!」プログラムディレクター。「Live選挙サンデー2022」のプログラムディレクター。
2021年から現職。2024年米国大統領選挙、日米外交、米中対立、移民・治安問題を取材。安全保障問題として未確認飛行物体(UFO)に関連した取材も行っている。