スーパーの野菜コーナーで見かけたことはないだろうか。「すごい野菜」と名付けられたレタス類が、鹿児島市の工場で静かに育てられている。農薬不使用、洗わずそのまま食べられるという手軽さで、幅広い世代に支持されているこの野菜。そして2025年3月、約7年の研究期間を経て生まれた新商品「桜島大根スプラウト」が仲間入りした。鹿児島の伝統野菜を現代の食卓へ届けようとする、地道な努力の物語だ。

畑ではなく「工場」で育つ野菜

鹿児島市内にある日本ガスの植物工場。ここでは2017年からレタスの水耕栽培が行われている。工場内に足を踏み入れると、白・青・赤の3色のLEDライトが並び、整然とレタスが育つ様子が広がる。

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生産管理・広報担当の寒水正和さんは「レタスの生育段階に合わせて最適な光を当てるようにしている」と説明する。光の波長だけでなく、温度や養分も細かく調整。徹底した衛生管理のもと農薬は一切使用しないため、サラダはもちろん、しゃぶしゃぶの具材としても洗わずそのまま使えるという。

コープ田上店で農産リーダーを務める二ノ方徹朗さんも、その安定した品質を高く評価する。「1年を通して品質がすごく安定している。洗わなくて済むということで、若い奥様たちや幅広く利用している」。フリルレタスやグリーンリーフ、バジルなど複数の種類があり、種を蒔いてから出荷まで約35日、毎日約2300袋が出荷されている。

鹿児島ならではの強み、「灰が降っても」関係ない

工場生産の最大の利点は、天候や環境に左右されないことだ。寒水さんはこう語る。「特に鹿児島では暑い寒いだけでなく、灰が降ったりもするが、この中では1年中、灰が降ろうが雨が降ろうが台風が来ようが美味しいレタスを育てられる」。

桜島の恵みとも言える火山灰は、農業にとっては悩ましい存在だ。しかし工場という閉鎖空間は、そのデメリットを完全に遮断する。鹿児島特有の気候風土と正面から向き合った末に生まれた、この地域ならではの生産スタイルと言える。

7年の試行錯誤が生んだ「桜島大根スプラウト」

2025年3月30日から試験販売が始まった「桜島大根スプラウト」。スプラウトとは発芽直後の新芽のことで、工場に隣接するコンテナ内で水耕栽培されている。種を蒔いてからわずか3〜4日で出荷されるが、その商品化への道のりは長く険しいものだった。

「誰もが知っている桜島大根を手軽に食べてもらうために、幼葉野菜化、つまり小さな葉っぱにして食べようと取り組んできたが、とてもとても食べられない。生臭いし、美味しくない葉っぱが当初できて、どうしようかというところから始まった」と寒水さんは振り返る。

ベビーリーフにするか、スプラウトにするか。「紆余曲折の末、食べられるスプラウトができた」というその言葉には、約7年間の研究の重みが滲む。収穫前にはロボットが自動搬送を行うなど、生産効率にも工夫が凝らされている。

機能性表示食品にも認定、GABAを多く含む

完成した桜島大根スプラウトの成分を分析したところ、「血圧を下げる作用」や「精神的ストレスを緩和」するとされるGABAが多く含まれていることが判明。機能性表示食品としても認定された。

見た目の珍しさや食べやすさだけでなく、健康面での訴求力も備えた商品となった。鹿児島の伝統野菜が、現代人の健康ニーズとも結びついた形だ。

鹿児島から、いつか海外へ

寒水さんは将来への展望をこう語る。「鹿児島発の新しい名物として、桜島大根は鹿児島のものだから、それから生まれたスプラウトということで、鹿児島から県外に、県外から欲張れば海外まで売っていければいい」。

現在は試験販売の段階にあり、日本ガスアグリでは市場のニーズを検証しながら、今後の本格展開を検討していくという。故郷の野菜を次の世代へ、そして世界へ。「桜島大根スプラウト」は、地域への愛着と長年の研究が結実した一粒の新芽だ。

【動画で見る▶桜島大根スプラウト 植物工場で誕生「洗わず食べられるGABA豊富な新名物」】

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