牛肉の種類や産地を偽って販売していた問題で、鹿児島県指宿市の畜産加工会社・水迫畜産が問題発覚後初めて記者会見を開き、社長の交代や再発防止策を公表した。注目されたのは、「意図して行ったものではない」という主張だ。現場の担当者が誰にも報告しないまま事態を放置していたという構図が、会見の場でようやく明かされた。

裏口から入った県庁訪問

4月10日午後、水迫畜産の関係者が鹿児島県庁を訪れた。報道陣を避けるように裏口から入る姿が目撃されている。

この日、水迫畜産は問題の原因と再発防止策をまとめた報告書を国に提出し、県の担当課にも報告した。県のかごしまの食輸出・ブランド戦略室の宮田幸男室長は、「報告書の内容を精査しながら、原因や再発防止に向けた取り組みなどについて事業者の方に直接説明を求めていきたい」と述べ、今後は国と合同で調査を行う方針を明らかにした。

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問題の概要 「黒毛和牛」「鹿児島県産」と虚偽表示

今回の問題は、2023年から翌年にかけて起きたものだ。水迫畜産が販売した牛肉商品において、交雑種などを使用したものを「黒毛和牛」と表示したり、県外産の牛肉を「鹿児島県産」と表示するなど、不正な表示が行われていた。

「黒毛和牛」や「鹿児島県産」といった表示は、消費者が商品を選ぶ際の重要な判断基準となるものだ。こうしたブランドへの信頼を損なう行為は、地域の畜産業界全体にも打撃を与えかねない。

問題発覚から1カ月、ようやく公の場へ

問題が発覚してから約1カ月が経過した10日、水迫畜産はようやく記者会見を開いた。新社長に就任した水迫栄治氏は冒頭、「畜産業界の皆様、ならびに取引先の皆様に多大なご迷惑とご心配をおかけしている。心から深くお詫び申し上げます。誠に申し訳ございません」と頭を下げた。

この日付をもって、前社長の水迫政治氏が辞任し、息子の水迫栄治氏が新社長に就任したことも正式に発表された。

4月10日付で社長に就任した水迫栄治氏
4月10日付で社長に就任した水迫栄治氏

「単純なミス」「故意ではない」と主張

不正表示の原因について、水迫畜産は「現場担当者の思い込みや、データ入力の打ち間違いといった単純なミス」と説明し、チェック体制が機能していなかったことも認めた。その上で、意図的な偽装ではなかったと強調した。

水迫政輝事業部長は、「九州農政局の調査において『意図して行ったものではない』という文言をいただいている」と述べ、記者から「偽装ではない?」と問われると「はい」と明言した。

報告しなかった事業部長、対応遅延の真相

会見では、対応が遅れた理由についても言及があった。問題の現場となった工場のトップである水迫政輝事業部長が、2023年の農水省による立ち入り検査の時点で問題を把握していたにもかかわらず、社長を含む誰にも報告していなかったことが明かされた。

水迫事業部長は「私が全責任を持って対応していたので、本来は社長にしっかり報告すべき事案だった。そのことに関しては社長および今回、新しくなった新社長にも報告していない」と述べ、情報が組織内で共有されなかった実態を認めた。

ふるさと納税の返礼品にも影響、補償は協議中

不正表示があった商品の大半は、ふるさと納税の返礼品にも採用されていた。全国の寄付者にも影響が及んでいることになるが、補償については「方法や時期などを含め自治体と協議中」として、詳細は明かされなかった。早急に進めていくとしている。

再発防止へ 品質管理部門を新設

水迫畜産は再発防止策として、品質管理部門の新設、チェック体制の強化、研修など社員教育の充実を挙げた。また、国や県の調査に全面的に協力する考えを示した。

「鹿児島県産」「黒毛和牛」というブランドは、指宿をはじめとする鹿児島の畜産農家が長年培ってきた信頼の証だ。水迫畜産がその信頼をどのように回復していくか、地域の目は厳しく向けられている。

(動画で見る▶「不正表示」問題で社長辞任 水迫畜産が初の記者会見、原因は“入力ミスと確認不足”)

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