全国の銭湯は10年で半減しています。
そんな中、2025年に閉業してしまった銭湯を復活させた、27歳の男性の挑戦を取材しました。

取材班が訪れたのは、東京・調布市にある「鶴の湯」。
75年の歴史を誇ります。

浴場にはレトロ感のある風呂釜やタイルなど昭和の風情を感じることができるこちらの銭湯、実は…。

鶴の湯・相良政之店主:
ボイラーの釜という、銭湯の心臓部が釜なんですけど、それが故障してしまって。それと前の方(経営者)の体調不良もあって、続けていけないという判断をした。

2025年7月、設備の老朽化や当時の経営者の体調不良などを理由に廃業。
その歴史に幕を下ろしたのです。

ところが、「元々8年くらい前から銭湯を将来自分で経営したいと思っていて、いろんな物件を探す中で、今回『鶴の湯』とご縁があって継業ができた」と話すのは、店主の相良政之さん(27)。

「鶴の湯」の経営を引き継ぎ、4月4日に営業を再開させたのです。

客は「(店主の)相良さんがあとを継いで復活して、すごくうれしい気分。昭和のレトロの感じと今の感じが融合しているので、すごく居心地がいいですね」「なくなる銭湯ばかり多くて、再開したというのが本当にうれしくて、ありがとうございますしかないです」と話しました。

鶴の湯・相良政之店主:
元々の常連さんがそのまま来てくれているので、ここが一番うれしくて。

オープンの日には長蛇の列ができ、約700人もの人が訪れ大盛況。
幸先いいスタートと思いきや、相良さんが直面したのは銭湯経営の厳しい現実でした。

鶴の湯・相良政之店主:
本当に一番はエネルギーコストがあまりにも大きすぎて。

これまで世界13カ国、国内外の約1000箇所もの温浴施設を巡ってきたという相良さん。
20歳のころに銭湯経営に興味を持つと、IT企業に勤める傍ら銭湯の魅力をブログで発信するなどの活動を行ってきました。

その後は、温泉や銭湯の再生事業に携わる会社に転職し経験を積むと、2025年に独立。
「鶴の湯」の再建に取りかかりますが…。

鶴の湯・相良政之店主:
400万~500万円で改装して終わる予定だったのに、トータル2000万円くらい(費用が)かかっているので。

のしかかったのは、想定をはるかに上回る改修費用です。

鶴の湯・相良政之店主:
ここがバックヤードになりまして、機械室と事務所とかがあるエリアになります。

案内してもらったのは「機械室」と呼ばれる部屋。
お湯を温める機械や、ろ過装置などが設置されています。

鶴の湯・相良政之店主:
この床下に設備の配管がたくさんあって。ポンプを直す時は配管を5本くらい切って、ポンプを入れ替えて、また配管をつないで。

配管の傷みは想像以上に深刻で、まともにお湯が張れる状態ではありませんでした。

鶴の湯・相良政之店主:
会社の中でやるのと個人でやるのは全く違って、予想外でした。

修繕だけでなく、床やロッカーなども新調したため、かかった費用は想定の4倍に膨れ上がったといいます。

さらに頭を悩ませるのが入浴料の壁です。

鶴の湯・相良政之店主:
物価統制令というのがあって、銭湯は絶対値上げができないんです。

実は銭湯料金は法令で決められています。
都道府県ごとに異なり、東京都の大人1人分の料金は上限550円と定められているのです。

鶴の湯・相良政之店主:
550円の銭湯料金は変えられないので、スーパー銭湯では値上げして対処しているんですけど、それができないというのも、なかなか難しいですよね。

全国公衆浴場業生活衛生同業組合連合会によりますと、加盟する銭湯の数は10年前に比べると約半数に。

こうした状況から、東京都は2026年度から、改築や改修にかかる費用を最大3分の2まで補助するなど、経営の後押しをする支援事業を行っています。

相良さんも都からの支援を受けているといいますが、営業時間の拡大や人件費や光熱費の高騰もあり、再開前と比べ、かかる費用は3倍になったといいます。

鶴の湯・相良政之店主:
朝6時~25時まで営業してるので、一番はエネルギーコストがあまりにも大きすぎる。

そこで、問題を解決するため、相良さんが打った手はクラウドファンディングです。

鶴の湯・相良政之店主:
想像以上に老朽化が進んでいて、店をよくするために使うお金が修繕に全部いってしまったので、このままだと、ただただ店を直してオープンになってしまう。それだと、もって1年が限界。クラウドファンディングで地域の方に応援いただきながら、攻めのバレルサウナの費用を捻出しようと始めた。

さらにサウナを導入することで付加価値を生み出し、入浴料と別料金にすることで銭湯経営に充てたいといいます。

20代:
(サウナ)すごく気持ちよかったです。熱すぎるのが苦手な私でも長時間ゆっくりできる感じ。

他にもTシャツやタオルなどオリジナルグッズも販売。

それだけではなく、入浴以外のサービスを充実させることにより収益を生み、「鶴の湯」を盛り上げる相良さん。

鶴の湯・相良政之店主:
クラフトビール、ハーブティーを売ったり、その他の売り上げを大きくしていくしかない。

地元のお客さんは「コミュニケーションの場にもなるし、憩いの場にもなるし、もっと銭湯が盛り上がってくれたらうれしい」「やっぱり若い方がつないでくれるのは、すごくいいなと思う。うちみたいにお風呂壊れちゃって来るという方も絶対いると思うので、続けていってほしい」「気持ちよかった。(Q.どんなお風呂が気持ちよかった?)アヒルいるところ」と話しました。

多くの人から愛される「鶴の湯」。
相良さんが目指す姿は…。

鶴の湯・相良政之店主:
3世代、孫・息子・おばあちゃんで来られるような銭湯を目指したいなというのは僕の理想の銭湯なので、やりたいと思います。