「同じもので200円だったのが700円になるわけで、消費者に対してすごく大きなインパクトを与えていく」

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富山県高岡市の専門商社・ホクセイ金属の冨田昇太郎社長は、こう語る。アルミ地金の価格が4月8日についに1キログラムあたり700円台に突入し、過去20年平均(270円)の2.5倍以上という過去最高値を更新した。遠い中東での紛争が、富山の製造業の現場に波紋を広げている。

価格高騰の引き金——UAE精錬所へのイラン軍事攻撃

アルミ原料価格の急騰には、明確な引き金がある。先月28日、アラブ首長国連邦(UAE)最大のアルミ精錬所がイランの軍事攻撃を受けたのだ。

攻撃を受けた精錬所を持つ企業の生産量は年間280万トン。一方、日本のアルミ原料の年間需要はおよそ360万トンに上る。直接的な輸入依存度だけでなく、世界市場全体の供給量に影響が及ぶことが問題の本質だ。

冨田社長は、「長期間、アルミ精錬設備が停止してしまうと、アルミの世界的な供給量に大きな影響を与える。国際相場も大きく上昇する危険性が予測される」と警戒感をあらわにする。

アルミ地金の価格は2020年ごろまで1キログラムあたり200〜300円で推移していたが、その後は急激な上昇曲線を描き、今回の攻撃が価格高騰にさらなる拍車をかけた。

「対策本部を立ち上げた」——高岡・三協立山の緊急対応

富山を代表するアルミ建材大手、高岡市の三協立山も対応に追われている。同社は中東からアルミ原料を調達しているが、その割合は全体の1割に留まる。しかし、世界市場と連動する価格の動向と調達ルートの両面で、影響がどこまで広がるか予断を許さない状況だ。

「急きょ、対策本部を立ち上げた。代替ルートも調べながら何とか供給を続けていけるよう対策を取っている」と、黒畑靖之常務は打ち明ける。

ただ問題は原料だけではない。重油など製造に関わるコスト全般が上昇しており、「製造原価が非常に上がる。どうしても客に価格転嫁をお願いせざるを得ないレベル」(黒畑常務)だという。

影響は日用品にまで——構造的弱点が露わに

アルミは建材にとどまらず、自動車部品、缶飲料、調理器具など幅広い製品に使われる素材だ。今後も需要の拡大が見込まれる一方、日本はアルミ原料の地金を100%、海外からの輸入に頼っている。この構造的な弱点が、今回の中東情勢によって改めて浮き彫りになった。

冨田社長も「戦争が終了したら元に戻るという話ではない。これがきっかけとなって、アルミはこんなに高いという認識が広まっていく」と、一時的な混乱では済まない可能性を示唆する。

価格上昇の影響は、最終的には一般消費者の負担として跳ね返ってくる。建材から日用品まで、幅広いアルミ製品の価格が跳ね上がる懸念は、富山県内にとどまらず日本全体が向き合わなければならない問題でもある。

富山の「強み」を生かす——リサイクルへの産業転換

この危機に対し、富山の産業界が注目するのが「再生地金」の活用だ。国内で発生した金属スクラップを溶解・再生し、それを原料にしたアルミ製品を製造するリサイクルの仕組みである。

現在、リサイクル原料で作られた国内アルミ製品の割合は48%。この比率を高めることができれば、海外からの輸入地金への依存を抑えることができる。

冨田社長は「国内で発生したスクラップを有効活用した『再生』地金を原料にしたアルミ製品への転換がすごく大事。自分たちの身を守る意味でも地元でリサイクルすることが重要だ」と力を込める。さらに、「幸いなことに富山県にはアルミを溶解して再生できるところが結構ある。これが一つの富山県におけるチャンスではないかとも考えている」と、地域の可能性を前向きに語る。

三協立山の黒畑常務も同じ方向を見据える。「新しいアルミの地金だけに頼らず、スクラップ・リサイクルも進めている。リサイクル比率を上げていく努力で、できるだけ影響を抑えようとしている」と述べ、すでに取り組みが進んでいることを明かした。

富山大学でも研究加速——「資源小国」の次の一手

こうした現場の動きと連動するように、富山大学でも金属廃棄物から地金を効率的に再生する研究が、産学官民の連携によって進められている。国の拠点として位置づけられたこの取り組みは、資源小国・日本の弱点を補う技術開発として注目される。

中東情勢という外部要因に翻弄されながらも、富山のアルミ産業は今、自らの産業構造を根本から見直す契機を迎えている。危機であると同時に、アルミ産業の集積地としての強みを世界に示す好機でもある。1キログラム700円という衝撃的な数字が、富山発のイノベーションを後押しするきっかけになるかもしれない。

(富山テレビ放送)

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