今月1日からスマホを使いながらの運転など自転車の交通違反に反則金納付を求める「青切符」制度が始まったのだが、テレビやネットではもっぱら「自転車が車道を走らねばならず危険」、あるいは「車が追い抜けず渋滞ができて邪魔」という話題で盛り上がっている。

私は電動アシスト自転車ユーザー

私は永田町、霞が関などの取材にはこの10年くらい電動アシスト自転車を使っている。

電車やタクシーより「安く早く健康的」で、駐輪場も充実し歩道も広いので大変重宝している。

だが法改正で、「歩道を通ると罰金か」と思って車道を通ってみたのだがこれが怖い。

車はすごいスピードで走ってくるし、大型車も多い。何より困るのは道路の端に駐車していることだ。

これらを避けて右側に膨らむと直進してくる車と接触しそうで本当に怖い。自転車専用レーンでも平気で停めている車がいるし、そもそもパーキングのスペースになっているところもある。こんなところをどうやって自転車で通れというのだ。

今日見つけたのは片側1車線の道路で、両側に歩道がついているところにあった「自転車は歩道でなく車道の左側を走りましょう」という看板だ。

この警察の「言いつけ」を守って自転車が車道を走ると車は永遠に追い越せず渋滞になる。

通常の速度なら1メートル程度を目安に間隔を空けて追い越さねばいけないのだが、まちがいなくセンターラインを超えて交通違反になるからだ。

「自転車は車道を走らねばならなくなった」は「誤り」

などとイライラしていたら、6日の夜に「No Border NEWS」というYouTube番組でこの問題を取り上げるというので勇んで出演した。

番組では自転車評論家の疋田智さんと一緒になった。この人はTBS社員なのだが、自転車通勤のプロで、専門のラジオ番組を持っており、著作も多数だ。

疋田氏によるとまず「自転車は車道を走らねばならなくなった」というのは「誤り」で、警察庁が出している「自転車ルールブック」には、「単に(自転車が)歩道を通行しているといった違反については、基本的に取り締まりの対象となることはありません」と書いてあるという。

ただ自転車に乗る時は、「スマホのながら運転」と「酒酔い運転」だけはやめた方がいいという。なーんだ、心配して損した。

自転車が歩道を通行するのは「違反」なのに「基本的に取り締まり対象にならない」というわかりにくさと、一部メディアが間違った報道をしたために誤解が広がっているのだろう。

車道の自転車走行は本当に危険なので、そこの「広報」はきちんとしてほしいと思う。

自転車はちょっとかわいそう

それでは世の自転車運転者はルールを守っているかというと、必ずしもそうとは言えない。歩行者の中でも高齢者、障害者、子どもたちからすると自転車の歩道通行は「怖い」と感じるだろう。

だが自転車側から言わせれば「車道と歩道はあるのに自転車専用レーンが少ないから」ということになる。確かに欧州ではデンマークなど自転車道が整備された自転車大国で自転車の権利が守られている。

それに対し日本では自転車は車からも歩行者からも嫌われている。ちょっとかわいそうな気もする。

「電ジャラス」

それと最近見ていて危ないなと思うのは自転車かバイクかわからない乗り物だ。規制緩和で色々なタイプの乗り物に乗れるようになったのだが、一見自転車なのにペダルをこがずに歩道をすごいスピードで走っている人を時々見かける。

疋田氏によるとこれらは「電ジャラス」と呼ばれている。

AIによると「主にペダル付き電動バイク(モペット)が、日本の公道で保安基準を満たさず、ナンバー無し、ヘルメット無しで危険(デンジャラス)に爆走する違法、脱法状態」だそうだ。

こういう人は大体怖そうなあんちゃんなので注意したら殴られそうだから、小心者の私は黙って見ているだけなのだが、警察はもっとこういう輩を検挙してほしい。

イギリスではひったくりなどの犯罪にモペットやEバイクが悪用され問題に
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というより欧州では一度流行したが、一部の都市では、危険性を理由に利用が制限されている。それを日本で解禁したのはなぜなのか。これは政治家と官僚の責任だと思う。

規制緩和はやってもいいが「やりっぱなし」というのが一番困る。

日本国民の特に生活弱者を不安にさせるような政治をしてはいけない。

「技術者には自転車マニアが多い」

番組の中で、日本は最近歩道が充実してきたとはいえやはり車道が中心で(立体歩道橋などはその最たるもの)、それは日本経済に大きく貢献している自動車産業に政治家や官僚が忖度しているからではないか、という「暴論」を振ってみた。

それに対する疋田氏の答えは「実はトヨタもホンダも技術者には自転車マニアが多い。自動車産業は車が嫌われるのは困るから、将来的には欧州型のエコ交通社会を目指す」で、スッと腹に落ちた。

欧州では街の中心部に車が入れないというところも多い。

道路は一体誰のものなのか

我が家の近所の商店街には「歩道は自転車を押して通行しましょう」という看板が警察と商店街の連名で出ている。自家用車やハイヤーを停めて飲食や買い物をしている人が多いので自転車の車道通行が難しく、一方で歩道は人で混んでいるのでこういうルールを作ったのだろう。

でもこれって「無策」のツケを自転車に押し付けているだけではないか。宅配便のトラックや高齢者、住民の車が入ることは必要だが、自家用車やハイヤーで外から来る人は商店街の入り口で車を降りるべきだ。

道路は一体誰のものなのか、安全を確保するには何が最適解なのかを政治家や官僚そして企業はもう少し考えてほしい。

【執筆:フジテレビ客員解説委員 平井文夫】

平井文夫
平井文夫

言わねばならぬことを言う。神は細部に宿る。
フジテレビ客員解説委員。1959年長崎市生まれ。82年フジテレビ入社。ワシントン特派員、編集長、政治部長、専任局長、「新報道2001」キャスター等を経て報道局上席解説委員に。2024年8月に退社。