2026年3月、福島県双葉町にオープンした「居酒屋こんどこそ双葉店」。店長の大清水タミ子さん(72)が、原発事故による避難を経てたどり着いた新店舗だ。約40年前に何気なく付けた店名は、いま特別な意味を持って町の夜を照らしている。

72歳でたどり着いた新天地

2026年3月、JR双葉駅の東側に商業施設「MEMEGURU FUTABA」がオープンした。その一角に「居酒屋こんどこそ双葉店」は開店した。

“こんどこそ”の人気メニューは刺身定食
“こんどこそ”の人気メニューは刺身定食
この記事の画像(7枚)

店長は、72歳の大清水タミ子さん。人気メニューは“常磐もの”にこだわった刺身定食だ。訪れた客は「双葉町に住んでいた人はもちろんですけど、それ以外の人たちにも足を運んでもらって、町の生活感とかにぎわいみたいなのが増えてくるといいなと思ってます」と期待を寄せる。

避難を支えた“集まる場所”

大清水さんは福島県浪江町の出身。東京電力・福島第一原子力発電所の事故で全町避難を余儀なくされた。
原発事故から約8カ月後、大清水さんは役場機能が一時移転していた二本松市で居酒屋を再スタートさせた。大清水さんは「浪江の人たちが、多く二本松に避難していた。みんなが集まる所が欲しいって、慰め合ったり、安否確認したりする場所が」とその理由を話す。

避難先の二本松市で
避難先の二本松市で

店は地元の人からも愛された。週に1回ほど通っていたという二本松駅前の商店会の会長・安達秀司さんは「いつ行っても穏やかな感じ。遅くまで居ても機嫌よく、お付き合いいただいた思い出がある。やはり駅前としても、なくてはならない存在だった」と当時を振り返る。
大清水さんは「このまま二本松市で」と考えていたが、2025年3月に店を閉じることになった。

“恩返し”のため故郷の近くへ

閉店の1カ月前、大清水さんは双葉町で行われた意見交換会に参加していた。そこで「震災前、双葉町民の皆様方には大変お世話になりました。恩返しができる機会をいただき本当にありがとうございます」と語った。

双葉町の新店舗
双葉町の新店舗

“恩返し”の場所として双葉駅近くの商業施設のテナント募集を見つけた息子から「ふるさとに戻ってきて欲しい」と伝えられたことも、決断を後押しした。大清水さんは、自身の出身地である浪江町から通える双葉町に新たな店舗を出すことを決めた。

まちに灯ったにぎわいの明かり

双葉町は、避難指示の解除が最も遅く、町内で暮らす人は約200人あまりで震災前の3%ほどにとどまる。町内の飲食店もまだ10店舗だ。
「MEMEGURU FUTABA」には3店舗の飲食店が入居し、連日午後8時30分まで営業している。この場所には、震災前のようなにぎわいが生まれている。

子供を連れて家族で利用する人も
子供を連れて家族で利用する人も

訪れた客は「1年前と今を比べると町の明るさが違う。お店があると、やっぱり明るい。それってホッとする」「人が集まるというだけで、その町が活性化されるというか、賑わいがつくられると思う」と話す。
その光景に、大清水さんは「やっぱり、ここで開いて良かった」と笑顔を見せた。

店名に込めた特別な思い

約40年前に浪江町で開店した時、何気なく付けた『こんどこそ』という店名。それはいつしか“特別な言葉”になっていた。
大清水さんは、その名前に込められた思いをこう語る。

浪江町にあった“こんどこそ”
浪江町にあった“こんどこそ”

「ものすごく重みがあって、今までの『こんどこそ、こんどこそ』は流れで来たけど、やっぱここで復興のためにもう一歩踏み止まって、よしって踏ん張りました『こんどこそ』と思って。みんなのお役に立てれば良いと思う。子どもの声がする町にしたい。最後はふるさとに『恩返し』したいです」

居酒屋こんどこそ 店主・大清水タミ子さん
居酒屋こんどこそ 店主・大清水タミ子さん

こんどこそ…その思いが“あの日”から15年目を迎えた双葉町の夜を明るく照らしている。

(福島テレビ)

福島テレビ
福島テレビ

福島の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。