父から娘へ、別府の恵みを未来へつなぐ
別府市明礬(みょうばん)地区。「湯の花」を製造する「湯の花小屋」が立ち並ぶ。
温泉の噴気と青粘土を利用した世界でも珍しいものだ。
この明礬で、創業者である父の急逝を受け、大学生の時に事業を引き継ぐ決意をした女性がいる。別府の恵みを活かした化粧品づくりに挑む脇屋ひいろさん(27)を取材した。
別府の恵みをかたちに、フロムアース
湯けむりが立ち上る別府市明礬(みょうばん)。この地に拠点を置くのが、化粧品の製造・販売を手がける「フロムアース」だ。
1995年に脇屋貴夫さんが創業。現在は娘のひいろさんが別府ならではの素材を活かしたプロダクトを展開している。
温泉水と自社製造の「湯の花」が主役
中でも一番の人気を誇るのが保湿クリームである。
原料の1つは「温泉水」。テナントを構える「かまど地獄」の温泉水をたっぷりと含んでいる。さらに、もう一つの重要な原料が「湯の花」だ。
この湯の花は、地下から噴出するガスと青粘土を反応させることで作られる、まさに大地の結晶。
フロムアースでは、この貴重な原料を自社で製造している。
想定外だった事業承継
ひいろさんが父の跡を継ぎ、2代目となったのは2022年のこと。しかし、それは彼女の人生にとって想定外の出来事だった。
――脇屋ひいろさん「私が大学4年生の頃に父が亡くなって、で、そこから引き継ぐことを決めました。」
突然の別れが、彼女のキャリアを大きく変える転機となった。
就職が決まっていた矢先の訃報
幼い頃の夢はバレリーナ。10代をフランスで過ごし、バレエに打ち込んだ。
帰国後はAPU(立命館アジア太平洋大学)に入学。卒業後は国際的な仕事をしたいと考え、東京での就職が決まっていた矢先の訃報だった。戸惑いもあったという。
――脇屋ひいろさん「継ぐか、継がないかっていう選択肢をもらわれて。で、結局、すごくやっぱり湯の花とか温泉とか、そういった父のやってきた仕事にすごく魅力を感じていたので、継ぐことを決断したっていう感じです。」
父が情熱を注いだ仕事の魅力が、彼女の背中を押した。
父の背中を知る「かまど地獄」代表の宇都宮さん
フロムアースのテナントがある「かまど地獄」の代表、宇都宮さんは、父・貴夫さんをよく知る人物の一人だ。
――宇都宮さん「気さくな明るい男前の社長でした。あの、毎月飲み会してて、ある意味もう飲み友達に近い感じです。」
そんな宇都宮さんは、2代目となったひいろさんの姿に期待を寄せる。
――宇都宮さん「仕事がすごく楽しいと。人とつながって、いろんなことをこれからもやってみたいというふうに言ってました。やはりお若いので年齢も楽しみな経営者の一人だと思ってます。」
守りながら、進化させる。未来への挑戦
戸惑いから始まった仕事も、今では誇れるものになった。父から受け継いだ商品を大切にしながら、新商品の開発にも力を入れている。
――脇屋ひいろさん「今ある商品に加えて使えるものがないかなっていうふうに言っていただけることが多いので、石鹸だとか洗顔のフォームとかですね、この土地だからこそできるもの。やっぱりその思い出とともに、お家に持ち帰っていただけるような商品を、作りたいなっていうふうに思っています。」
父への思いと、地元別府への愛。
「伝統を守りながら進化させていく」
27歳の若き後継者の覚悟が、地域の育んできたかけがえのない資産を未来へとつないでいく。