健康食品販売会社の代表らが逮捕された事件で、高齢者を狙った悪質な「催眠商法」の実態が明らかになった。
被害者の多くは50万円もの座椅子や、「がんに効く」とされるサプリメントを購入していた。
取材班が潜入した販売会場では、巧妙な手口で高齢者の心理に付け込む様子が浮き彫りになった。
■座椅子に「50万円も出して、なんにもない」
兵庫県に住む80代の夫婦が、数年前に購入した座椅子について語ってくれた。
「上がらなくなった肩があがる」「病気にならない」などと勧められて購入したものの、実際に使ってみると期待とは程遠い状況だった。
高額商品を購入した利用者(80代):使ってない。冷たいし半時間も座られへん。お尻痛いし。
電気が来るのかと尋ねると、「何もない。何も感じない」と答えた。効果を全く感じていないにも関わらず、その座椅子の価格は、「45万円から50万円ぐらいした」ということだ。
この座椅子を販売していたのが、健康食品販売会社。
代表の男(76)と、取締役の男(53)ら3人が逮捕された。
3人は去年、大阪府堺市の店舗で70代の女性3人に対し、サプリメントを「病気に効く」などと宣伝し、購入するよう持ちかけた疑いなどが持たれている。

■「食べる抗がん剤」が売り文句 来店のきっかけは駅前で配られたチラシ
なぜ客はだまされてしまったのだろうか。代表の男らが行っていたとされるのが、「催眠商法」だ。
「催眠商法」とは高齢者などを店舗に集めてセミナーなどを開催し、判断力を鈍らせた状態で高額な商品を売りつける悪質な商法のこと。
国民生活センターによると、催眠商法に関する相談は全国で毎年1000件以上寄せられている。
頻繁に健康食品販売会社の販売会場に訪れていた女性に話を聞くことができた。
健康食品販売会社の販売会場を訪れていた女性:チラシを配っていた。駅とかこの辺とか。
警察が押収したチラシには、食パンとコーンポタージュがセットで100円、味噌100円などと、書いてある。
会場ではどのような話がされていたのか聞くと…
健康食品販売会社の販売会場を訪れていた女性:健康の話ばっかりや。細胞の飲み薬売っていた。がん(に効くと)『がん』ばかり言っていた。
そしてサプリメントの購入を勧める時には、「これ飲めば必ず細胞増えるんです」「食べる抗がん剤です」といった売り文句が使われていた。
この女性は不審に感じてサプリメントを買うことはなかったが、友人は購入してしまったということだ。
健康食品販売会社の販売会場を訪れていた女性:うちの友達、買った、年金で。『買わなければ良かった、ひとつも効かない』と怒ってた。6万円くらい(で買った)。

■約2カ月ごとに移転繰り返し営業 チラシには“サプリメント”の記載なし
警察によると、店はおよそ2カ月ごとに移転を繰り返しながら営業し、大阪を中心とする近畿や九州など広い範囲に出店していた。
堺市東区にあったという店の周りは住宅街で、現在は営業していなかった。
そして取材班は、営業中の健康食品販売会社の販売会の情報を手に入れた。
販売会のお知らせには、押収されたチラシと同じように“サプリメント”の記載はなく、お土産に“味噌汁”がもらえるなどと書いてあった。
会場に向かうと、次々と建物に入っていく高齢者たちの姿があった。狭い会場は30人ほどの客が埋め尽くしていた。

■巧みなセールストーク「6万円切って、拍手お願いします、税込み価格2万9800円」
従業員と見られる男性が、ホワイトボードを使って話し始める。
従業員とみられる男性:東京なんかでは、バリバリやっています。例えば、A社が世のため人のために解禁して使われていたのは、世界で一番流通しているB社。これが1カ月分1万8500円。
海外の企業の名前を挙げて健康食品と見られる商品の説明をしている。
従業員とみられる男性:ほんの10年前までは、アブラで悩んだら、取らない、取らない。臓器の周りにこびりつくアブラ、異所性脂肪は猛毒と言われています。先進国の中で唯一がんの増えている国は、日本だけです。
不安をあおりながら「いま健康になることが大切だ」と訴え、徐々に客を引き込んでいく。
「病気や怪我をしたときに、治せる体を今の間に勝ち取ることが大事」と続け、目玉商品というサプリを紹介する。
従業員とみられる男性:新しい方を紹介します。できてそんなに時間たっていないので、触ってみたら、熱い。
従業員とみられる男性:キャンペーンなので、すごく力入れているので、お買い漏れのないように。税込み価格のお値段、なんと、6万円切って…拍手お願いします。税込み価格2万9800円。
巧みなセールストークで安いと思わせ、その場で注文用紙を配って購入を促す。この日は3組ほどが購入する様子が見られた。

■「詐欺商法的な匂いがする」と消費者の被害に詳しい弁護士
消費者の被害に詳しい北摂中央法律事務所の井上伸弁護士は、今回の販売会の実態について「拍手が起こったり、あおる感じが、『詐欺商法』的なにおいがする」と指摘する。
北摂中央法律事務所 井上伸弁護士:基本的に『特定商取引法』で禁止されている、問題になっているひとつが『訪問販売』。皆さん知らないと思うが、店舗以外で売っているのが全部『訪問販売』にあたる。
こうした手口は高齢者ほど“わな”にはまりやすいと井上弁護士は指摘する。
北摂中央法律事務所 井上伸弁護士:独居老人などが多く、孤独になって寂しさを埋める。健康に対する不安が常につきまとっていて、健康のこと言われるとだまされやすくなる傾向にある。

■「通うことはやめない」、「生活にメリハリがつく」複雑な被害者心理
健康食品販売会社で高額な商品を購入してしまった80代の夫婦は、取材班に「通うことはやめない」と話す。
高額な商品を購入した利用者(80代):年寄りになったら『きょう行くところがある』と喜んで行くわけや。『今日は10時までに片付けて、会場行こう』と思ったら、生活にメリハリがつくやん。ダラダラしているよりも。
あとを絶たない、高齢者を狙う“催眠商法”。被害に遭わないために、冷静な判断が必要だ。
(関西テレビ「newsランナー」2026年2月11日放送)

